2018年4月7日(土)「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」

DARKEST HOUR・2017・米/英・2時間05分

日本語字幕:手描き風書体下、牧野琴子/ビスタ・サイズ(1.85、デジタル、Arri ALEXA、ドルビー・ビジョン)/ドルビーATMOS

(米PG-13指定、英PG指定)

監督:ジョー・ライト
脚本:アンソニー・マクカーテン
撮影:ブリュノ・デルボネル
出演:ゲイリー・オールドマン、
   クリスティン・スコット・トーマス、
   リリー・ジェームズ、ほか

公式サイト
http://www.churchill-movie.jp
(全国の劇場リストもあり)

1940年5月9日、ナチス・ドイツ軍がベルギーに侵攻、イギリスの国会ではチェンバレン首相(ロナルド・ピックアップ)が無策だったとして退陣要求が提出される。与党の保守党は後任として外務大臣のハリファックス(スティーヴン・ディレイン)に打診するも断られ、国民の人気は高いが政党内では嫌われ者のウィンストン・チャーチル(ゲイリー・オールドマン)が候補に上がる。そして国王ジョージ6世(ベン・メンデルスソーン)の任命を経て首相に就任すると、挙国一致内閣を立ち上げる。チャーチルは最初の演説で「ドイツとの徹底抗戦」を宣言し、イタリアを介した和平交渉は拒否するが……。


76点

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 感動的な映画。ジーンと来た。イギリスを守ったとか、ドイツの猛攻に負けなかったとか、和平交渉に応じなかったとか、そういうことではなくて、こういう危機の時に現れて、実力を発揮する人がいる。強いリーダーシップを発揮して、バラバラになった人々の心をひとつにまとめ、奮い立たせ、あるべき方向に導いて行く人。そういう人が実際にいたんだという感動。イギリスはそれによって今があると。

 イギリスに限らず、国という大きなスケールでなくても、そういう人はいると思う。会社が困難な時に現れて会社を救ってくれる人、友だちを救ってくれる人、などなど。他の時は目立たないが、そういう時に光り輝く人。思わず小さな女の子までが「ネバー・サレンダー!」と叫んでしまうほどの人。

 そして嫌われ者の夫、チャーチルを陰で支える妻の素晴らしさ。内助の功というやつ。これも感動的。時に叱咤し、時に甘え、時におだてて、夫を送り出す。素敵でチャーミングな人。そして国民もチャーチルを尊敬し、少女でも膝を曲げて挨拶したり、地下鉄では皆が席を立ち、座ってと言われても近くに来れば席を立つという、礼を尽くす感じがまた感動的。

 映画は1940年5月のわずか1カ月ほどのことしか描いていない。ラストにその後のことが字幕で出て、戦争が終わった1945年には総選挙で敗戦していると。実際には成功ばかりでなく、失策もあったらしい。それらは描かれていない。本作はイギリスが最も困難で暗かった時、侵略の瀬戸際にあった時を描いたものなのだ。伝記映画は別にあった気がする。このあとはまさに映画「ダンケルク」(Dunkirk・2017・蘭/英/仏/米)に続く。そして「空軍大戦略」(Battle of Britain・1969・英)へも。

 そういう映画なので、セリフに感動的なものが多い。チャーチルは演説上手で知られたらしい。パッと例が思い付かないが、「誰にも死は必ず訪れる。ならば最強の敵と戦って死ぬのが最高ではないか」というような内容のものとか……。

 特殊メイクはものすごく素晴らしい! とてもメイクとは思えない。自然。あんなにやせ形のゲイリー・オールドマンを、本物のチャーチルのような雰囲気のぽっちゃり顔にしてしまうとは。まったく違和感がなかった。さすがアカデミー賞主演男優賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞、受賞作品。

 チャーチルは、咳をしつつもトレードマークの葉巻きをふかし、多くの人もシガレットを吸っている。そして驚いたことに、地下鉄内も喫煙OKだったとは! 時代だなあ。

 神の視点とされる俯瞰のカットが多く用いられている。

 銃は、ウォー・キャビネットの警備兵が腰にウェブリー・リボルバーを挿している。

 公開9日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、2日前にムビチケカードで確保。当日は20分前くらいに開場。観客層は中高年がメインで、若い人が少し。男女比は4.5対5.5くらいでわずかに女性の方が多い感じ。劇場に着いた時点で残席わずかの黄色表示。2週目だというのにこの人気。さすがのアカデミー賞効果か。最終的には200席ほぼすべて埋まった。8席あったプレミアム席も7席が埋まった。すごいなあ。


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