2018年4月15日(日)「ワンダーストラック」

WONDERSTRUCK・2017・米・1時間57分(IMDbでは116分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(デジタル/フィルム、2.35、Arri ALEXA)/音響表記無し(IMDbではトルビー・デジタル)

(米PG指定)(バリアフリー字幕つき上映もあり)

監督:トッド・ヘインズ
原作:ブライアン・セルズニック「Wonderstruck」
脚本:ブライアン・セルズニック
撮影:エド・ラックマン
出演:オークス・フェグリー、
   ミリセント・シモンズ、
   ジュリアン・ムーア、
   ミシェル・ウィリアムズ、ほか

公式サイト
http://wonderstruck-movie.jp
(全国の劇場リストもあり)

1977年、アメリカ、ミネソタ州ガンフリント。母子家庭で育った12歳の少年ベン(オークス・フェグリー)は交通事故で母エイレン(ミシェル・ウィリアムズ)を失い伯母の家に引き取られたが、どうしても父親のことが知りたくなり、「ワンダーストラック」という本に挟まれた、母に送られたらしいしおりのメモ「愛を込めて、ダニー」と言う言葉と書店名をたよりに、ニューヨークへ向かう。
1927年、ニュージャージー州ボーケン。裕福な父子家庭の一人娘ローズ(ミリセント・シモンズ)は、女優のリリアン・メイヒュー(ジュリアン・ムーア)に憧れていたが、やがて自分の母ではないかと思うようになり、ニューヨークの舞台に出演することを知り、厳格な父の元から家出してニューヨークにいる兄の元へと向かう。


73点

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 なかなか楽しめた。ラストは感動的。過去のことは取り消せないけれど、これから勇気を持って生きて行ける、そんな映画。

 ただ、1977年の現在の話をトーキーのカラー映画らしく音を先行させたりして作り上げ、1927年の過去を無声/白黒映画的に字幕(カード)を使いながら作り上げ(シネスコ・サイズだったが)、同時進行させるというのは見事でユニークだが、ちょっと技巧に走りすぎた感もある。また、前半は何がどうなるのかわからず、ヒントもなしなので観客はややおいてきぼり。ちょっと飽きる。これを乗り越えると、ようやくアメリカ自然史博物館(映画「ナイトミュージアム」の!)のあたりから物語が動き始め面白くなってくる。実際に起こりえる、しかし超稀なファンタジーだったのかと。

 カンヌ作品だし、冒頭は暗い話で、また観客を落ち込ませる映画かと思ったが、後半になって意外な展開で見せる。ちゃんと解決というか落とし所を見せてくれるのは、良かった。正直、安心したという感じ。主人公の少年がかわいらしく、あまりひねくれていないのもよかった。応援できる。

 気になったのは、なぜ1927年と1977年だったのか。2011年に出版された原作の設定がそうだったらしいが、50年の開きが重要だとしても、発端の時代が1927年ではなく1967年とかにして、現代を2017年にしても成立したはず。映画の場合はモノクロ、無声映画の時代が描けるが、小説は関係ないはず。

 ワンダーストラックとは、映画では博物館のカタログ的なもののタイトルになっているが、突然の喜びや驚きのようすを表す言葉らしい。原作初版の表紙は稲妻だ。映画でも、それで主人公が聴力を失い、ニューヨークが停電する。そうか、1977年はニューヨーク大停電が起こった年。ただ本作ではそれほど重要な出来事として描かれていない。たまたま停電した程度。やっぱり原作を読まないとわからないか。
 サウンドトラックでデヴィッド・ボウイの「Space Oddity」が使われている。あれ、つい最近も他の映画で聞いたなあと思って調べると、「ヴァレリアン 千の惑星の救世主」(Valerian and the City of a Thousand Planets・2017・仏/中ほか)だった。

 最初の製作会社のロゴで、アマゾン・スタジオの名が出たが、ついに映画界へも進出?

 公開10日目の初回、新宿の劇場はスタート時間が遅く、上映回数も少ない。2日前にたまったポイントで確保し、当日は15分前くらいに開場。観客層はさすがにカンヌ作品ということでか、ほとんど中高年。最初8人ほどいて、女性は3人。最終的には115席に2割ほどの入り。若い人も数人来た。男女比は4.5対5.5でやや女性が多い結果に。これもカンヌ的なことか。

 スクリーンはシネスコ・サイズで開いており、CM予告の後、映写機のマスクが左右に広がって、暗くなって本編へ。


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