2018年4月28日(土)「いぬやしき」

2017・フジテレビジョン/東宝/講談社・2時間07分

シネスコ・サイズ(デジタル?)/音響表記無し(ドルビー・デジタル?)

(一部日本語字幕付き上映もあり、『UDCast』方式に対応した視覚障害者用音声ガイド付き)

監督:佐藤信介
原作:奥 浩哉
   「いぬやしき」(講談社『イブニング』所載)
脚本:橋本裕志
撮影:河津太郎
出演:木梨憲武、佐藤 健、
   本郷奏多、二階堂ふみ、
   三吉彩花、濱田マリ、
   斉藤由貴、ほか

公式サイト
http://inuyashiki-movie.com
(全国の劇場リストもあり)

うだつが上がらないさえないサラリーマンの犬屋敷壱郎(いぬやしきいちろう、木梨憲武)は、健康診断で末期ガンが発見され、余命3カ月と知る。家族にも伝えられないまま、夜の公園でたたずんでいると、そこへ光る物体が現れ墜落、近くのベンチにいた高校生の獅子神皓(ししがみひろ、佐藤 健)とともに爆発に巻き込まれる。気がつくと朝で、犬屋敷は1人で公園に倒れている。家に帰り、家族の叱責を受け、味噌汁を飲むと体調が優れなくなり、部屋へとこもる。そして自分の体がサイボーグ化されたことを知る。


73点

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 すごい派手で超自然的なのに、とてもリアルでナチュラルな合成のCG はたぶん世界トップレベルだろう。そこに有名俳優たちがずらり。話も感動的で心揺さぶられる。アンドロイドのメカ・デザインも秀逸。

 ただ、どうにもバランスが悪い気がした。

 この社会の嫌な部分を凝縮してリアルに見せられ、身につまされる。自身がその災難にやられている感じ。いじめ、カツアゲ、全社員の前での大声での罵倒、娘の叱責と嫌悪に、妻からの叱責、無責任な書き込み、家庭崩壊にクラス崩壊、社会崩壊、日本も崩壊……不幸の集大成。すべてが観客自身に向けられているような錯覚を得て、落ち込む。シチュエーションがリアルで、演出がうまく、演技も適切だから、グサグサ心に突き刺さり良く伝わってくる。しかもそれらのエピソードが多く、長い。どれもがとても深刻。だから悪となる獅子神皓の気持ちは理解しやすいのだが……。

 それに対して解消するパートは短く、わずか。得られるカタルシスが少ないので、帳尻が合わない。プラス・マイナスで言うと、マイナス部分がとてつもなく大きい。なので落ち込む。解決されないままの問題がたくさん残る。いわば消化不良状態。だからラストで娘と父の心がつながるとは思えない。ちっとも納得できない。

 残念だったのは、いつも曇天のような感じだったこと。空が白い。青空にしても良かったのでは。だからかコントラストも低めの邦画的画質。力強さが足りないような。

 銃は刑事たちがチーフらしき2インチ・リボルバーを、特殊部隊(SAT?)はMP5を使う。でもギャングじゃあるまいし、集団待ち伏せでいきなり乱射って! この辺の演出はヘンというか古いというか、お芝居的というか。ガン・エフェクトはビッグショット。

 公開9日目の初回、新宿の劇場はどこも上映回数が減っていて、よほど入りが悪かったのかと心配になったほど。たいていは午後から上映。そこで日比谷の新しい劇場にしたかったのだが、ここもスタートが遅いと言うことで日本橋へ。もちろん全席指定で、2日前にムビチケカードで確保。当日、その日本橋の初回、30分前に劇場全体が開いて、13〜14分くらい前に開場。予想どおり入りは悪く、最終的に143席に20人くらい。ほぼ中高年で、若い人は2〜3人。女性も少なく4〜5人というところ。

 CM前のシネマ・チャンネルは新バージョンに。そしてCM・予告の後、映写機のマスクが左右に広がって、シネスコになって場内が暗くなり、本編へ。


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