2018年5月6日(日)「ホース・ソルジャー」

12 STRONG・2017・米・2時間10分

日本語字幕:丸ゴシック体下、風間綾平/シネスコ・サイズ(デジタル、2.39、Arri ALEXA)/ドルビー・サラウンド7.1

(米R指定、日PG12指定)

監督:ニコライ・フルシー
原作:ダグ・スタントン
   「ホース・ソルジャー 米特殊騎馬隊、
   アフガンの死闘」(早川書房刊)
脚本:テッド・タリー、
   ピーター・クレイグ
撮影:ラスムス・ヴィデベック
出演:クリス・ヘムズワース、
   マイケル・シャノン、
   マイケル・ペーニャ、ほか

公式サイト
http://gaga.ne.jp/horsesoldiers/
(全国の劇場リストもあり)

2001年9月11日、アメリカ同時多発テロを知ったアメリカ陸軍特殊部隊グリーン・ベレーのミッチ・ネルソン大尉(クリス・ヘムズワース)は、自ら志願し、かつて自身がトレーニングしたチームと共にアフガニスタンでの特殊作戦を担当することになる。その任務とは、CIAのガイドを受けて反タリバンである北部同盟のドスタム将軍(ナヴィド・ネガーバン)と合流し、これ以上のテロを阻止するため、アメリカ軍のB-52戦略爆撃機へ地上からタリバンの拠点であるマザーリシャリーフの詳細な位置情報を送って爆撃・制圧すること。しかし、マザーリシャリーフに至るには、いくつものタリバン勢力が支配する町を通らなければならず、しかも移動手段は馬しかなかった。


76点

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 何だか印象としては、久々の成功したアメリカの軍事行動の話という感じ。「ブラックホーク・ダウン」(Black Hawk Down・2001・米/英)を初め、失敗した話が多かったような。本作は実話に基づいており、全員が任務を完了し、帰国したと。

 まさしく戦争映画で、ものすごい迫力と臨場感。もちろん爆発音などは比べるべくもないが、デジタル化のおかげもあって、実際に地響きのような振動が伝わってくる重低音がリアルで怖いほど。銃の音も発射音だけでなく、弾着効果とともに弾着の音もハッキリと付けられていて、素晴らしい。RPG-7の発射音にしても「シュキン」みたいな、いかにも金属の筒から発射しているようなリアルな音が付けられているし。自爆テロでバラバラになった体も表現されている。ぞっとする恐ろしさ。一番怖かったのは、吹き飛ばされた少年兵が埋まって、靴だけが出ていたシーン。ニコライ・フルシー監督は、コソボ戦争を取材したフォト・ジャーナリストだったそうで、それが本作に生かされているのだろう。

 気になったのは、映画のキャッチで「米軍騎馬隊」と書いて、グリーンベレーというルビが付けられていること。なんでそうなるのか全く理解できない。グリーンベレーは陸軍の特殊部隊で騎馬隊じゃないし、そもそも騎馬隊は本作と何の関係もない。たまたま他の移動手段がなく馬を使ったというのに過ぎない。あくまでも彼らはグリーンベレーだ。現在、騎馬警官は存在するが、軍の騎馬隊は存在しないのでは? 騎兵隊ならキャバルリーで、現在では機甲部隊のことを指すし……。

 だから原作本の日本語タイトルがヘン。現代のホース・ソルジャーは騎馬隊ではなく、馬に乗った兵士くらいの意味では。映画のタイトルは12ストロングだ。ストロングが単数なのは「ボストン・ストロング」(ボストンよ、強くあれ)のスローガンと一緒だろうか。よくわからない。

 アメリカの軍はすぐに行動を起こす。そして軍人たちは自ら望んで危険な地へ赴き国のために自分の命をかけて戦う。政治が間違った判断を下さないことが重要だ。それがこの映画からもわかる。

 そして、本作は特殊部隊の話であり、アメリカのTVのドキュメンタリーなどで特集されていたが、特殊部隊は2〜3カ月掛けて行われる入隊のための資格審査の段階から、絶対に仲間を見捨てない、戦友のために命を投げ出すといったことを叩き込む。だから命に関わるような危険なトレーニングを一緒に受けた者たちは、家族以上の強い絆で結ばれている。それもこの映画からわかる。上官の実戦経験が無いミッチ大尉がトレーニングした部隊を一緒に行くチームに指定するのも頷けるなあと。

 たぶん、特殊部隊なので、戦地では部隊章などを付けていない。アメリカ兵とわかるものさえ付けていない感じ。そして、映画の中でスペンサー准尉に「敬礼をするな」(スナイパーに狙われる)と怒らせているように、階級章さえも付けていない。この辺もまたリアル。

 銃は、グリーン・ベレーがM4カービンで、兵によってはサイトがエイムポイント、ACOGだったりし、たぶんAN/PEQ-2とフラッシュライト、バーチカル・グリップを付けていた。中にはM203グレネード・ランチャーを付けている兵士も。セカンダリーはM9で、スナイパーは陸軍なのでM24ライフル。アフガニスタンの兵士は敵も味方も基本AKMで、折りたたみストックのAKMS、ショーティのAKMSUが混じっていた。マシンガンはPKかPKM、重機関銃はデグチャレフ(DShk、デシーカ)。ドスタム将軍はマカロフで、敵のラザンはハイパワーを使っている。少年兵ナジーブはアメリカ兵のベン・マイロから骨董品と呼ばれるリー・エンフィールド・ライフル。

 ほかに定番のRPG-7も使われていて、戦車はT-72らしく、確かそう呼んでいた。問題になってくるトラック型の自走多連装ロケット砲は映画の中でBM-21と呼んでいた。輸送ヘリは双発のCH-47チヌーク。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、2日前にムビチケカードで確保。当日は、やはり着いた時点で黄色の残席わずか表示。15分前くらいに開場。ほぼ中高年のそれも高寄り。しかもほぼ男性。最終的には117席ほぼすべて埋まった。女性は2〜3人で、若い人も2〜3人。戦争映画だとこうなるのか。

マナーのあと暗くなって、映写機のマスクが左右に広がってフル・サイズになり、映画泥棒から本編へ。


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