2018年5月27日(日)「ゲティ家の身代金」

ALL THE MONEY IN THE WORLD・2017・米/伊・2時間13分(IMDbでは132分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、松崎広幸/シネスコ・サイズ(デジタル、2.39、Arri ALEXA)/ドルビー・デジタル

(米R指定、伊T指定、日R15+指定)

監督:リドリー・スコット
原作:ジョン・ピアソン「ゲティ家の身代金」
   (鈴木美朋・訳、ハーパーコリンズ・ジャパン)
脚本:デヴィッド・スカルパ
撮影:ダリウス・ウォルスキー
出演:ミシェル・ウィリアムズ、
   クリストファー・プラマー、
   マーク・ウォールバーグ、
   ティモシー・ハットン、ほか

公式サイト
http://getty-ransom.jp
(全国の劇場リストもあり)

1973年、イタリア。当時世界一の大富豪といわれたアメリカの石油王ジャン・ポール・ゲティ(クリスチァー・プラマー)の孫ジョン(チャーリー・プラマー)が誘拐される。母親のアビゲイル(ミシェル・ウィリアムズ)に身代金の要求があるが、すでにゲティ家の夫と離婚しており、家賃も滞納しているような状態。そこで大富豪のジャンに助けを求めるが、一銭も払わないとマスコミに向かって宣言し、問題解決のために元CIAの人質交渉人フレッチャー・チェイス(マーク・ウォールバーグ)を送り込んでくる。


76点

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 怖い映画。イタリアにおける1970年代の人質誘拐ビジネスを、実話に基づき、リアルに描いた物語。誘拐して人質とすることはもちろん、本人確認と脅しのため人のパーツを切って送り付けたり、はては人質を売り払うという酷い仕打ち。女も加わっており、警察は男女の区別なく、容赦なく射殺して行く。それもまたショッキング。

 たしかに物語としては、息子(義理の父からすれば孫)を救出しようと犯人グループと戦い、世界一の大富豪でありながら、孫の身の代金はびた一文払わないという守銭奴のような義理の父とも戦う母の姿がメインなのだろう。しかし強く印象に残るのは、誘拐犯の側。そして甘いものに群がるようなたくさんのパパラッチ。事件に乗っかって甘い汁を吸おうとする偽物たち……。

 犯罪が日常化している人達がいるという恐怖。男も女もかわらない。たぶんすべての原因は貧困ということなのだろうけれど、犯罪以外の手を考えないのか。犯人達にはそこまで追い詰められた感じがせず、簡単だったから人をさらったというような感覚の恐ろしさ。アフリカの海賊ビジネスはもっと追い詰められた感じがあるものの、通じるものがあるような。場所は変わっても、1970年代と現在とあまりかわらない状況があると。

 母を演じるミシェル・ウィリアムズは素晴らしいし、孫のチャーリー・プラマーも、犯人グループのチンクアンタを演じたロマン・デュリスもいい。氷のように冷たい秘書を演じたティモシー・ハットンもいい味を出しているが、中でも良かったのは石油王ジャン・ポール・ゲティを演じたクリストファー・プラマーだろう。老獪な感じ、頑固な感じが素晴らしかった。実はケヴィン・スペイシーが演じ、撮影が完了していたのだそうだが、あの事件が持ち上がって急きょ抜擢され、再撮影されたのだとか。しかしそうとは思えないはまり具合。ただ、元CIAというマーク・ウォールバーグ演じる人質交渉人がほとんど活躍しなかったのは残念。必要なかったくらい。

 時代を反映し、男も女も良くタバコを吸っている。

 銃は、大富豪らしく庭でクレー射撃していたりして、水平二連と上下二連のショットガンが登場。犯人達はSIG P210、ベレッタM70など。警察(憲兵隊)はFAL、ベレッタM12など。マフィアはステンSMGなどを持っていた。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で2日前にムビチケカードで確保。当日は14〜15分前に開場。観客層はほぼ中高年。事件を知っている人たちだろうか。男女比は最初男性が多かったが、最終的に半々くらいに。そして200席は8.5〜9割くらいが埋まった。8席あったプレミアム席も7席が埋まった。すごいなあ。

 マナーのあと暗くなって、映画泥棒があってフル・サイズで本編へ。


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