2018年8月25日(土)「検察側の罪人」

KILLING FOR THE PROSECUTION・2018・東宝/ジェイ・スーム・1時間58分

シネスコ・サイズ(デジタル?)/音声表記なし(ドルビー・デジタル?)

(『UDCast』方式に対応した視覚障害者用音声ガイド、日本語字幕対応)(一部日本語字幕付き上映もあり)

監督・脚本:原田眞人
原作:雫井脩介『検察側の罪人』(文春文庫刊)
撮影:柴主高秀
出演:木村拓哉、二宮和也、
   吉高由里子、松重豊、
   酒向 芳、谷田歩、ほか

公式サイト
http://kensatsugawa-movie.jp
(全国の劇場リストもあり)

東京地検刑事部のエリート検事、最上 毅(もがみたけし、木村拓哉)の元に、4年前、教え子だった新人検事、沖野啓一郎(おきのけいいちろう、二宮和也)が配属されてくる。担当事務官はこれも新人の女性、橘沙穂(たちばなさほ、吉高由里子)。そんな時、蒲田で殺人事件が発生、老夫婦が刺殺される。最上は沖野を担当にするが、やがて作られた容疑者リストを見て愕然とする。その中の1人、松倉重生(まつくらしげお、酒向 芳)は、未解決のまま時効となった23年前の女子中学生殺人事件の有力容疑者だった男で、証拠不十分のため釈放されていたのだった。実は、殺された少女は、最上が大学時代に暮らしていた寮の管理人夫婦の一人娘で、妹のようにかわいがっていた子だった。最上は松倉を罰するべく、今回の事件では何としても有罪にするよう沖野にプレッシャーを掛ける。


76点

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 うむむ、久しぶりに落ち込んだ。なんとも救いのない物語。人を殺すこともなんとも思わない根っからの悪人、その悪人を罰するために自ら悪に手を染める善人。感情のままに関係者が罪人を罰してしまうのは、映画を見ていると理解できないわけではないが、これでは法の意味がない。犯罪者だ。つまり悪の悪に、善の悪。ほかにもヤクザ、ネオナチなどさまざまな悪が描かれ、とにかく嫌な気分になる。潜入取材も本作では悪だ。善のために人をダマし利用する。それは自分のためなのではないか。たとえ正義のためだとしても、それで許されるのか。さすがに愛人までは出てこないものの、どの家庭内も冷え切っていて、うんざりな感じ。悪は無くならず、ずっと存続する。何も出来ない。絶望に近い感情が残される。

 これが、優れた演出と素晴らしい演技によって、そして力強い映像と催眠術を掛けるような音楽によって、心に深く突き刺さる。だから落ち込む。ファミレスから対象を追って検察官と女性事務官がラブホテルへ行こうと話すと、勘違いしたウエイトレスが「そんなにやりたいか」とつぶやくのには笑ったが、基本、ちっとも楽しくないし、もう一度見たいとも思わなかった。しかし、負の感情にしろ、強く伝わってくるのだから、よく出来た映画だと思う。事件の展開自体はおもしろいというか興味深い。ただ、それが楽しいか、良かったかは別。

 多数の登場人物がいるので、誰が誰か、顔と名前を覚えるのが大変。特に平 岳大演じる最上検事の親友が何者なのか、最初わからなかった。後半になって衆議院議員だとわかるが、最初は最上と同性愛関係にあるのかと思ってしまった。

 主要キャストはすべてうまいが、特に印象に残ったのは、異常者にしか見えない重要容疑者、松倉重生役、酒向 芳、まるでリアルヤクザの千鳥役、音尾琢真、とんでもない粗暴者の弓岡嗣郎役、大倉孝二が素晴らしかった。そして、大きな役ではないが、役回りが良くて印象に残るのは、闇のブローカー諏訪部利成役の松重 豊と、その部下らしい謎の女役の芦名 星。マイクを喉に当ててしゃべるのも謎っぽくて良かった。そして超クールだし。

 銃は残念だった。銃そのものではなくて、設定が。手を見せろ言って銃を選ぶのは、どうなんだろう。手のサイズからマカロフかベレッタだなと。おいおい、大きさが全く違うではないか。マカロフは中型拳銃。ベレッタはM84なら同等サイズだが、出てくるのはM92だから大型。うむむ。銃が出てきた時セイフティの話をするので、てっきりフリかと思ったら、違った。ガン・エフェクトはビッグショット。撃たれた顔面の特殊メイクがなかなか怖い。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、2日前にムビチケカードで確保。当日は20分前くらいに開場。観客層は中高年がメイン。ただ女性は若めの人が多かった。男女比はダークな作品ゆえか、キムタクとニノが出ていても6対4で男性の方が多かった。時間帯もあるのかもしれないが。最終的には287席に6.5割くらいの入り。まあこんなものか。

 スクリーンはシネスコで開いており、映写機のマスクが左右に広がって、マナーのあと本編へ。映画泥棒はCMのあと予告編に入る最初に上映。

 松竹の劇場で、映画が東宝のロゴから始まるというのは不思議な感じだった。


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