2019年2月9日(土)「ファースト・マン」

FIRST MAN・2018・米/日・2時間21分

日本語字幕:手描き風書体下、松浦美奈/字幕監修:毛利 衛/シネスコ・サイズ(2.39、フィルム、ドルビーVISION、IMAX)/ドルビーATMOS、dtsX、Auro11.1

(米PG指定)(IMAX版、4D上映もあり)

監督:デイミアン・チャゼル
原作:ジェイムズ・R・ハンセン「ファーストマン」
   (ソフトバンククリエイティブ)
脚本:ジョシュ・シンガー
撮影:リヌス・サンドグレン
出演:ライアン・ゴズリング、
   クレア・フォイ、
   ジェイソン・クラーク、
   カイル・チャンドラー、ほか

公式サイト
https://www.firstman.jp
(全国の劇場リストもあり)

1961年、空軍のテスト・パイロット、ニール・アームストロング(ライアン・ゴズリング)は幼い娘を癌で亡くし、悲しみから逃れるようにNASAのジェミニ計画の宇宙飛行士募集に応募する。見事、選ばれたニールだったが、NASAの責任者ディーク・スレイトン(カイル・チャンドラー)は、宇宙開発で先を行くソ連もまだ到達していない月を目指すと言う。そのとき必要となるドッキング技術を確立するのがジェミニ計画だというのだ。すぐに特訓が始まり、やがてニールはジェミニ8号のパイロットに選ばれる。


75点

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 ドキュメンタリーを見ているような、また、観客自身がテスト飛行や、宇宙飛行を体験しているかのような感覚になる映画。そして、ヒーローと言われる人たちにも苦難の歴史があり、悲しみのドラマがあり、それらを乗り越えてヒーローになったのだと知らされる。ある日突然ヒーローになった訳ではないのだ。わかっていても、こうして具体的に見せられないとなかなか思い至らない。死と隣り合わせの先駆者の苦悩。それは実に重い。それに加えて長女のエピソードも強く印象に残る。

 思った以上に安普請に見える宇宙船は、よくこれで命をかけられたなというレベル。なんだかまるでブリキみたいなもので手作りしたかのよう。リベット留めで、ゆがみがあったり…… そしてソ連との開発競争に、政治利用、多くの犠牲者、反対運動…… 人類史上、偉大な出来事だったが、アポロ計画はフェードアウトし、それ以降人類は、NASAは月へ行っていない。むしろ中国が宇宙の裏側を探査するなど、積極的だ。月まで領土にしようとしているのか。

 話としては、「ライトスタッフ」(The Right Stuff・1983・米)や「アポロ13」(Apollo 13・1995・米)などと共に見ると良いかもしれない。ついでに「宇宙からの脱出」(Marooned・1969・米)や「ゼロ・グラビティ」(Gravity・2013・英/米)、「遠い空の向こうに」(October Sky・1999・米)も見ると良いかも。人類は月に行っていないと「カプリコン・1」(Capricorn One・1977・米/英)(火星だが)のような陰謀説を唱える人は、本作を見ると恥ずかしくなるかもしれない。いや冒涜とさえ言えるかも。

 画質は時代感を出すためか、あまり良くない。しかしコントラスト強めの(というかつぶれ気味の)色の雰囲気やちょっとざらつく粒状感のようなものは当時のフィルムっぽい。IMDbで見ると、16mm、35mm、65mmの各フィルムで撮られているようだ。たぶんそれをデジタル処理して時代感を出しているのだろう。

 タバコも出て来て、みな良く吸っている。特に女性もスパスパ吸っているのが、今の目から見ると驚かされる。そういえば、そうだったなあと。お通じに良いとか、ダイエットになるとか……。

 ニールの妻を演じていたのはクレア・フォイ。ちょっと地味な感じだが、美人でうまいなあと思ったら、「蜘蛛の巣を払う女」(The Girl in the Spider's Web・2018・英/独ほか)で主人公のリスベットを演じていた人。

 エンド・クレジットには電通の名前も入っており、日本は製作国に名を連ねている。そのためか、世界中の報道の場面では日本も入っているし、NASAのスタッフ役で日本人っぽいキャストも出ていた。いや、中国人か韓国人かも。「遠い空の向こうに」の主人公ヒッカムと友人になった日本人宇宙飛行士の土井隆雄さんは宇宙へ行く時、ヒッカムのメダルなんかを持って行ったというから、あながち日本との関係がないわけでもないかなと。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、2日前にネットで確保。当日は10分前くらいに開場。観客層は中高年がメインで、しかも高寄り。当時、月着陸をTVで見た人たちだろうか。男女比は8対2くらいで圧倒的に男性が多かった。最終的には287席に3.5割くらいの入り。ちょっと朝早かったからなあ。しかし、まあ作品的に地味という印象は否めない。アメリカだと、日本で「はやぶさ」の映画を見るような感覚だろうか。ちょっと違うか。

 スクリーンはシネスコ・サイズで開いており、CM、映画泥棒、予告の後、映写機のマスクが左右に広がってフルになって、マナーから本編へ。


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