2019年3月2日(土)「グリーンブック」

GREEN BOOK・2018・米・2時間10分

日本語字幕:丸ゴシック体下、戸田奈津子/ビスタ?サイズ(2.00、デジタル、Arri)/ドルビー・サラウンド7.1(IMDbではドルビー・デジタル(5.1)も)

(米PG-13指定)

監督:ピーター・ファレリー
脚本:ニック・ヴァレロンガ、
   ブライアン・カリー、
   ピーター・ファレリー
撮影:ショーン・ポーター
出演:ヴィゴ・モーテンセン、
   マハーシャラ・アリ、
   リンダ・カーデリーニ、ほか

公式サイト
https://gaga.ne.jp/greenbook/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

1962年、ニューヨーク。ナイト・クラブ“コパカバーナ”の用心棒トニー・バレロンガ(ヴィゴ・モーテンセン)は、改装で2カ月間店が休みになるため、あるドクターが運転手を募集しているというので、面接を受ける。実は依頼主は、カーネギー・ホールの上に暮らすドクターの称号を持つリッチな黒人の天才ピアニスト、ドクター・ドナルド・シャーリー(マハーシャラ・アリ)だった。トニーは腕っ節の強さとハッタリによるトラブル解決能力を買われて採用されると、特に人種差別の強いディープ・サウスへ演奏旅行に行く告げられる。


84点

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 感動した。あやうく涙が流れそうになった。冬に向かう10月に始まり、クリスマスで終わるという定番パターンのハッピー・エンド・ストーリー。気持ちが優しくなれる。これをクリスマス・シーズンに見られたらどんなに良かっただろう。

 特に良かったのは、悲惨な話で人種差別の話なのに、悲劇として作らず、コミカルに語っていること。決して笑いのネタに使っているわけではない。しっかりした芯を明るくユーモアで包んでいる。日本で作ったら、悲しい曲に載せて、眉間にしわを寄せ、登場人物皆が泣き叫ぶ映画になっていたのではないだろうか。エンターテインメントの国アメリカは違う。だから余計に心に刺さってくる。ラスト、涙が出そうになる。

 そして、見て感じたのは、人種差別はもちろんだが、それより2人の男の友情のウェイトの方が大きいということ。たまたま人種が違っただけ。むしろ上流階級と、底辺付近の階級との身分差の方が際立つ。2人は次第に絆を深めて行き、やがて親友になると。上流階級は礼儀を教え、汚い言葉使いを止めさせ、盗みをやめさせ、ゴミの投げ捨てを止めさせ、ラブ・レターの書き方を教える。強く生きる雑草はケンタッキー・フライド・チキンを手で食べることや家族のありがたみや、合奏の楽しさを教えたりする。一方通行の関係ではない。素晴らしいロード・ムービー。

 これは「ドライビングMissデイジー」(Driving Miss Daisy・1989・米)とか、「最強のふたり」(Intouchables・2011・仏)とかと似ている気がする。ただ、本作は実話がベースになっていて、ラストに、実際の人物の写真が出て、その後が文字で語られる。本作の奥さん役の女優さんもきれいだが、実際の奥さんも美人だったとは!

 銃は、バーテンダーが西部劇のように水平二連ショットガンをカウンターの下に隠しており、警察はミリタリー&ポリスのような4インチ・リボバーを持っている。またチーフのような2インチ・リボルバーも登場する。しかし銃より気になったのは、タバコ。時代を反映して、女性もスパスパ吸っている。食事をしながら吸っているシーンまである。これは驚き。

 ピアニストのドクター・ドナルド・シャーリーを演じたのは、つい最近「アリータ:バトル・エンジェル」(Alita: Battle Angel・2018・米)で悪役を演じていたマハーシャラ・アリ。用心棒のトニー・バレロンガを演じたのは、「イースタン・プロミス」(Eastern Promises・2007・英/加/米)などのデンマーク系強面ヴィゴ・モーテンセン。その奥さんドロレスを演じたのは、近日公開の「シンプル・フェイバー」(A Simple Favor・2018・加/米)にも出ている、祖父がイタリア系だったらしいリンダ・カーデリーニ。

 監督は「メリーの首ったけ」(There's Something About Mary・1998・米)のピーター・ファレリー。なるほど、だからコメディ系だったんだ。ほとんど弟と共同監督してきたが、本作が単独監督デビューになるらしい。脚本は主人公トニー・バレロンガの息子、ニック・ヴァレロンガが書いて、製作も務めている。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、2日前にネットで確保。当日はちょっと早めの22〜23分前に開場。アカデミー賞受賞の影響による混雑を予想したのだろう。ただ、1番大きなスクリーンでの上映だったが、到着した時点で満席の赤色表示になっていたのは「シティハンター」だけ。本作は残席わずかの黄色表示。観客層は中高年がメインで、しかも高寄り。派手さはないからなあ。若い人は数人。男女比は半々くらいだった。最終的には499席の9.5割くらいが埋まった。ほぼ満席。後ろのボックス席はわからなかったが、真ん中の9席×2列のプレミアム席もすべて埋まった。

 CM・予告の後、マナーがあって、暗くなり、TCXのデモ、そして映写機の左右マスクに、ちょっと上下もマスクで、映画泥棒から本編へ。

 それにしても、4Dシアターの振動が伝わって来て、気持ち悪かった。どうにかならないのだろうか。


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