2019年3月16日(土)「翔んで埼玉」

2018・フジテレビジョン/東映/テレビ埼玉・1時間57分

シネスコ・サイズ(表記なし、デジタル?)/音響表記なし(ドルビー・デジタル?)

(一部期間限定日本語字幕付き上映もあり)
(『UDCast』方式に対応した視覚障害者用音声ガイド、聴覚障害者用日本語字幕付)

監督:武内英樹
原作:魔夜峰央
   『このマンガがすごい!comics翔んで埼玉』
   (宝島社)
脚本:徳永友一
撮影:谷川創平
出演:GACKT、二階堂ふみ、
   伊勢谷友介、中尾彬、ほか

公式サイト
http://www.tondesaitama.com
(全国の劇場リストもあり)

娘(島崎遥香)の結納のため、パパ(ブラザートム)は車にママ(麻生久美子)と娘を乗せ、埼玉から東京へ向かっていた。すると、ラジオから都市伝説とされる『埼玉革命の物語』が流れてくる。それによると、19XX年、東京都に入るのに通行手形が必要だった時代、東京都に通行手形制度を撤廃させた救世主が現れたという。その物語は、埼玉出身ながらアメリカ帰りで都会指数が高い麻実麗(あさみれい、GACKT)が、東京の超名門・白鵬堂学院(はくほうどうがくいん)に転校してくるところから始まる。生徒会長で東京都知事の息子、壇ノ浦百美(だんのうらももみ、二階堂ふみ)は麻実と都会指数で戦い、破れるが、そこから麻実に恋心をいだいてしまう。


74点

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 原作漫画の少女漫画のような雰囲気を反映した、宝塚歌劇団的な雰囲気が素晴らしい。原作は話題になった時に、ちょっとかじっただけで、ちゃんとは読んでいないのだが、車の中で聞くラジオ・ドラマ(都市伝説)という構成がうまい。そして、埼玉をディスっているようでいて、実は千葉や群馬、栃木や茨木、神奈川も、そして結局は東京もディスっている映画。まとめとしては、埼玉愛を語っているような形になっているが、映画としてはこうしないと感動を生みだせないだろう。そう、これは感動的な話に仕上げられている。感動した。埼玉ポーズをしたくなる。

 終わって出て行く時、ほとんどの人が「おもしろかったね」と言っていた。志は決して高くはないかもしれないし、受け狙いのトンでも映画、突っ込みどころ満載のユルい映画のようではあるが、満足度は高い。ちゃんと笑える。おもしろい。しかも埼玉の人がより笑っているというウワサ。本当なら大成功の映画ということになるだろう。

 ギャグ映画にありがちな、あり得ない設定、セリフ、展開なのに、誰もが真剣に演じていて、また硬すぎもせず、自然体という感じ。やらされてる感や、いやいや感もない。力みなくちょうど良い。特に良かったのが、東京都知事役の中尾彬。大ベテランでこんな役やって、しかもうまい。自然。ひとつだけ気になったのは、男子という設定の壇ノ浦百美を、女優さんがやっていたこと。二階堂ふみなら美人で演技もうまく、役者的にまったく問題ないのだけれど、ボーイズ・ラブでこれもギャグにするなら、やっぱり本物の男子に演じてもらわないと。二階堂ふみではどうやったって女性にしか見えない。

 映画として気になったのは、やはり画調。どうしても屋外のシーンになると、ライトを当てていないのか、コントラストが低い色の浅い絵になる。日本映画的。昼間は白い空。本当にそうだとしても、特にコメディなのだから、ここは明るい色調で、青空でしょう。ハリウッドなどは作ってもいるらしい。


 同じ武内英樹監督の「テロマエ・マロエ」(2012・日)より笑えた。武内監督はもともとはTVの人のようで、「のだめカンタービレ」(2006・日)とかを手掛けていて、そこから劇場版へ発展して、本作へつながるらしい。本作の前には、「カイロの紫のバラ」(The Purple Rose of Cairo・1985・米)のような「今夜、ロマンス劇場で」(2018・日)を監督している。

 エンド・ロールで、主要スタッフ、主要キャストの出身地を出して欲しかったなあ。公式サイトでは出てるけど。

 銃は、三八式歩兵銃の銃身先端部のようなものが3挺分ほど登場する。これで埼玉デュークを狙撃。東京都の他県取り締まり部隊のような隊員(ショッカー的な)は、ヘア・ドライヤーのようなテーザー(?)を使っている。機動隊は暴徒鎮圧なので、たぶん武装していない模様。

 公開3週目の初回、品川の劇場は全席指定で、2日前にネットで確保。当日は10分前くらいに会場。ここの劇場は待合スペースがあるところにしかトイレがなく、一旦、中に入ってしまうとトイレがない。これはちょっとやっかい。観客層は最初中高年がメインで、夫婦が多い印象。上映間近になってから若い女性が増えて、男女比は4.5対5.5くらいに。若い人は全体の3割ほどいただろうか。最終的には2089席に6.5割ほどの入り。3週間経ってからの初回でこれはなかなか凄いのでは。

 低音が良い感じで響く劇場で、CM・予告の後、マナーがあってから半暗になり、本式予告の後、映画泥棒で暗くなり、波が砕ける東映マークから本編へ。


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