2019年4月16日(火)「マローボーン家の掟」

MARROWBONE・2017・西/米・1時間50分

日本語字幕:丸ゴシック体下、佐藤恵子/シネスコ・サイズ(2.39、デジタル、IMDbではArri ALEXA)/ドルビー・デジタル

(西16指定、米R指定)

監督・脚本:セルヒオ・G・サンチェス
撮影:シャビ・ヒメネス
出演:ジョージ・マッケイ、
   アニャ・テイラー=ジョイ、
   チャーリー・ヒートン、
   ミア・ゴス、ほか

公式サイト
http://okite-movie.jp
(全国の劇場リストもあり)

1960年代末。アメリカの片田舎にある廃屋同然の家に、マロボーン家の母ローズ(ニコラ・ハリソン)、長男のジャック(ジョージ・マッケイ)、次男のビリー(チャーリー・ヒートン)、長女のジェーン(ミア・ゴス)、末っ子のサム(マシュー・スタッグ)の4人が、新しい生活を始めようとイギリスから引っ越してくる。そこは母の実家だったのだ。そして近くのどくろの形をした岩のあるところで、兄弟は近所に住むアリー(アニャ・テイラー=ジョイ)と知り合い、親しくなる。ところが、間もなく母が病気で亡くなり、兄弟は団結して生きて行かなければなくなる。そんな時、事件が起こる。


76点

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 悲しい物語。未来もなく、救いようの無い悲しさではないが、実に切ない、胸が締めつけられるような悲しさ。悲しすぎる。そのせいか、できはとても良いのに、IMDbでは6.6点の評価。

 スペイン映画であり、得意分野のホラー系であり、実に良くできている。なかなか怖い。ハリウッド製ホラーと違い、音だけで脅すようなことはない。しかも、あやかしは姿を現さない。それでも怖い。そして何より、人間が一番怖いと。系で言うと「アザーズ」(The Others・2001・西/米/仏/伊)とか「シックス・センス」(The Sixth Sense・1999・米)。勘の良い人は想像が付くと思う。ボクもちょっとスレているので、何となく読めたが、この悲しさは想像できなかった。真相を知った後で、もう一度見直してみたい気にはなる。

 うまく行っているのは、たぶんキャストそれぞれがピッタリはまり、説得力があるらだろう。観客はこの兄弟達を応援したくなる。次男はちょっと斜に構えた感じだがそれがまた良く、長男の誠実で一生懸命な感じも良く伝わってくる。無邪気な末っ子のサムのかわいさ。そしてそのサムを守る長女の物悲しげな様子。長男の彼女となるアリーのピュアな感じと美しさ。見事なキャラクター造形。人形などの小道具の使い方もうまく、どくろ岩などの舞台設定も見事。ネットがまだない1960年代(壁のカレンダーは1969年7月)というのも絶妙。

 ランプを使ったモールス信号の光通信が出てくるが、あれは「白ゆき姫殺人事件」(2014・日)だよなあ。監督はたぶん「白ゆき姫殺人事件」を見て気に入り、採り入れたのではないだろうか。そっくりだった気がする。ともに悲しさがより強調され、そしてそこに救いもあった。


 アリーを演じた美女はアニャ・テイラー=ジョイ。M・ナイト・シャマランの変態監禁映画「スプリット」(Split・2016・米)で囚われた女子高生を演じていた人。

 それにしても、タイトルはどうなんだろう。「掟」はあったかなあ。こじつけな気がする。間違いなくあったのは「絆」や「約束」だと思うけど。

 銃は、謎の男が持っていたライフルが、モーゼルのスポーターっぽいボルト・アクション。

 エンド・ロールの曲は、最初ホラーっぽい恐ろしい曲で、後半それが優しい曲に変わる。

 公開5日目の初回、品川の劇場は全席指定で、2日前にネットで確保。当日は15分前くらいに開場。平日の朝一と言うことでか、観客は188席に5人ほど。女性は若めの中年くらいの人が1人。あとはオヤジ。品川は小さな子連れのファミリーが多いようなので、こういう作品には平日だとこんな感じになってしまうのだろう。ちょっと寂しい。

 CM・予告の途中でマナーがあって、チョコレートプラネットのTT兄弟から映画泥棒で暗くなり、フル・サイズのシネスコで本編へ。


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