2019年7月6日(土)「コールデン・リバー」

THE SISTERS BROTHERS・2018・仏/西/ルーマニア/ベルギー/米・2時間02分

日本語字幕:丸ゴシック体下、風間綾平/シネスコ・サイズ(2.35、デジタル、IMDbではAlexa)/音響表記なし

(仏Tous publics(全年齢)、日PG12指定)

監督:ジャック・オーディアール
原作:「シスターズ・ブラザーズ」パトリック・デヴィット/茂木健・訳/創元推理文庫
脚本:ジャック・オーディアール、
   トマ・ビデガン
撮影:ブノワ・デビエ
出演:ジョン・C・ライリー、
   ホアキン・フェニックス、
   ジェイク・ギレンホール、
   リズ・アーメッド、
   ルトガー・ハウアー、ほか

公式サイト
http://gaga.ne.jp/goldenriver/
(全国の劇場リストもあり)

1851年、アメリカ、オレゴン準州。地域一帯を牛耳る提督(ルトガー・ハウアー)に殺し屋として雇われているイーライ(ジョン・C・ライリー)とチャーリー(ホアキン・フェニックス)のシスターズ兄弟。新たな仕事として、提督の部下のモリス(ジェイク・ギレンホール)が追っている山師のウォリス(リズ・アーメッド)を始末することになる。


74点

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 いやあ、圧倒される西部開拓時代の過酷さ。大きな町以外は法の力が及ばず、無法地帯に近いような状態。町には創設者や実力者の名前が付けられ、町を牛耳っている。力のあるものが正義という時代。平気で人から者を盗むヤツがいるし、町や個人が法に訴えず自警団のようなものを作って犯人を捕らえるか殺してしまう。そういう役目の殺し屋が暗黙的に存在したと。有名なのはピンカートン探偵社。ジェシー・ジェイムズを追い詰め、映画では「明日に向かって撃て!」(Butch Cassidy and the Sundance Kid・1969・米)で主人公の2人を追い詰めた。そんな殺し屋の兄弟を、ドラマチックに、そしてリアルに描く。

 過酷な時代。しかも普通とは違う過酷な環境。そこで生き残るのは並大抵ではないと。たぶんボクのようなヤワな人間では生き残れない。こんな時代のアメリカに生まれなくて良かった。ただ、大自然は雄大で、美しい。朝焼け、夕焼け、山、海……美しい。とはいえ、アメリカ映画ではなく、フランス人監督で、フランス人撮影監督によって、スペインやルーマニアで撮影されているのだが。しかも、プロダクション・ノートでは35mmフィルムを使ったようなことを匂わせているが、IMDbによると使われたのはデジタル・カメラ。俯瞰撮影もあるし。

 実力派のハリウッド・スターが出ていて、西部劇の雰囲気はしっかり再現され、しかも演技がうまい。特にホアキン・フェニックスのダメな弟は素晴らしい。そして華はないが、つい最近「僕たちのラストステージ」(Stan & Ollie・2019・英/加/米)でコメディアンを演じていたジョン・C・ライリーと同一人物とは思えない。また「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」(Spider-Man: Far from Home・2019・米)のミステリオを演じていたジェイク・ギレンホールがねえ。というか、スパイダーマンの方が意外だったわけだが。まあ生活のためには、か。

 それにしても、クモのエピソードは必要だったんだろうか。あんまり関係なかったような。

 銃は、ブラック・パウダーのバーカッションなので、撃つと花火のように火花が飛び散る。そして、銃音がズドーンと太くて重く(口径も大きいが)、撃った後に煙が残って漂っているなどリアル。ちゃんとシリンダーを差し替えるリロード・シーンも用意されている。

 使われている銃はたぶん.36口径のコルト・ネービーM1851。ただ銃口が大きく見えたのと、一部フレームまで金色のものがあり、さらにシリンダーに段が付いていたので、現代レプリカが使われていたのだろう。当然、本物は貴重な骨董品なので使えないだろう。調べてみると、F.LLI PIETTAというイタリアの会社があり、そこが44口径版のピエッタ(Pietta)M1851というレプリカ・ガンを作っていて、映画で使われていた銃の特徴ともマッチする。ヨーロッパ製作でヨーロッパ・ロケだし、たぶんこれだろう。

 ほかに、兄弟の母親が有鶏頭の水平二連ショットガンを使う。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は全席指定で、2日前にネットで確保。当日は20分前くらいに開場。古い劇場で、それほど大きくないのにエレベーターが小さく2台しかないので、いつも1Fはチケットを買う人と、劇場へ向かう人とで大混乱。

 観客層は、フランス映画だしアート系と言うことなのか、西部劇らしくなく男女比は半々くらい。中高年がメインというのはいつもどおり。若い人は少なく、最終的には224席の98%くらいが埋まった。これは意外。西部劇なのに。

 スクリーンはビスタで開いており、CM・予告の後、マナーがあってから暗くなり、スクリーン側の幕が左右に広がってシネスコになって、非常灯が消えて、いよいよというところで映画泥棒があって、本編へ。やれやれ。

 古い劇場なので背もたれが低く、首が疲れた。そして前の席に座高の高いやつが座ると、下に出る字幕が見えなくなる。うむむ。ストレスがたまるなあ。スクリーンも暗い感じがして、予告前のシネマチャンネルなんか場内の明るさでよく見えなかった。さらに、気になったのは、全体に黄色みを帯びた感じだったこと。これは本編の時代感を感じさせるためなのかもしれないが、予告からであり、なんだか映写機が古くて明るさがたりず、白の温度も低いのではないかと邪推までしたくなる始末。昭和の劇場だから? ただスクリーンはスクリーン側の黒幕で囲われているので絵に締まりが出る。この点は良いなあ。


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