2019年7月20日(土)「マーウェン」

WELCOME TO MARWEN・2018・日/米・1時間56分

日本語字幕:手描き風書体下、風間綾平/シネスコ・サイズ(2.39、デジタル、Arri)/ドルビー・デジタル(IMDbではdts:Xも)

(米PG-13指定)


監督:ロバート・ゼメキス
脚本:ロバート・ゼメキス、
   キャロライン・トンプソン
撮影:C・キム・マイルズ
出演:スティーヴ・カレル、
   レスリー・マン、
   ダイアン・クルーガー、
   レスリー・ゼメキス、ほか

公式サイト
http://marwen-movie.jp
(全国の劇場リストもあり)

ヘイト・クライムにより5人の男たちに暴行され、瀕死の重傷を負ったマーク・ホーガンキャンプ(スティーヴ・カレル)は脳に障害を負ったものの、どうにか回復し、リハビリを経て社会復帰するが、フラッシュバックなどの後遺症の苦しめられていた。そこで、治療の一環として、人形を使って物語を作り、その写真を撮ることを始めたところ、その写真が話題となり、個展が開催されることになる。そんな時、マークの家の向かいにニコル(レスリー・マン)という美女が引っ越してくる。さらに、暴行を加えた男たちの量刑を決める裁判に出廷しなければならなくなる。


74点

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 ヘイトクライムによる犠牲者の悲惨な実話を、ファンタジックに、ちょっとコミカルに描いた作品。実話なのですべてハッピーエンドとは行かないが、現実はそう甘くないと。心の傷も残ったまま、淡い恋心も成就せず。ただ、悲しみだけではなく望みも描いてはいるが、その結末が映画としてはどうか。評価が分かれそう。ファンタジーな雰囲気を持つのに、ファンタジーな終わりではない。

 かつて「もう実写は撮らない」というようなことを宣言したことがあるロバート・ゼメキス監督だけに、CGは使いまくり。1/6のG.I.ジョーの世界と、現実とのつながりがわからないほどで、冒頭はあえてリアルと思わせ、どこかに違和感を感じさせて人形にして行くという演出がうまい。後半では、主人公の現実と空想の世界を混同してくると、観客も混乱するほど。一体、どうやって撮ったのだろう。人間の皮膚からディテールを消してプラスックっぽくしたのか、最初から完全に実写ソックリの3D-CGで作っているのか。これはぜひともメイキングを見てみたいし、舞台裏の本が出たら読みたい。

 やはりスティーヴ・カレルがいい。個人的には、この人はコメディより普通のドラマの方が良いように思える。そしてロバート・ゼメキスもフル3D-CGより、実写の方が良いように思えるが、ここまで技術が発達すると、もはや手法より内容という気もする。

 ファンタジーな部分は、ちょっと「トイ・ストーリー」的な感じ。バービー風の人形達がどれも実に魅力的。悪役はやられても何回でも生き返る。持ち主が「R.I.P.(永眠)」と書かれた箱に人形を入れてしまわない限りは。そして、生きている設定の時は滑らかに動くのに、撃たれると、とたんに人形のように硬くなるのも、人形ゴッコしていた子どもが投げ出したようで良い。特に面白かったのは、タイムマシンを作って、それがデロリアンそっくりだったこと。作動させると青い炎のわだちを残して飛び去るところは大受けだった。

 一方で、戦闘シーンは逆にリアル。服の破片が飛んだり、血糊が飛んだり、胴体が串刺しになったり、ちぎれたり…… でも直後に体は硬くなり、人形に戻ってパーツが転がっているだけ。あるいはパシャリとシャッター音がすると動かなくって、空想の世界から現実の世界へもどる。興味深い演出。やるなあ。ただ、実話とは違うかもしれないが、映画的には、空想世界の物語はもう少しリアルな話でも良かったのでは。

 元になったのはジェフ・マルムバーグ監督のドキュメンタリー「マーウェンコル(未)」(Marwencol・2010・米)だそうで、IMDbでは7.6点の高評価。本作もラストに街の名前が「マーウェンコル」になる。これは気になるなあ。

 主人公が使っているカメラは、ペンタックス。実際の話は2000年のようだが、フィルム・カメラ。現像に出して、プリントをチェックするところがノスタルジーを感じさせる。BGMはカセット・テープ。タバコも吸ってるし。

 銃は、マークが作った『マーウェン』の世界観に合わせ、第二次世界大戦のもの。ホーギー大佐はパットン将軍のように普段、腰のガンベルトにSAAを入れている。ほかにP38、P08、M1911オートも登場。女たちはステン、PPSh-41、トンプソン、BAR、M1919など。ジープにはM2。ドイツ軍はKar98k、MP40、MG34など。マズル・フラッシュは凄いし、ちゃんと空薬莢も飛んでいるし、トレーサー(曳光弾)も混じっていて弾道がわかるなど実銃っぽくリアル。

 公開2日目の初回、といっても昼近く、銀座の劇場は全席指定で、2日前にネットで確保。当日は15分くらい前に着いたらすでに開場済み。やはりメインは中高年で、若い人は少し。女性は最終的に3割ほど。そして224席の4割ほどが埋まった。まあ、こんなものか。

 スクリーンはビスタで開いており、古い反射率の低いスクリーンのせいか、照明が明るすぎるのか、よく見えないCM・予告から、マナーの後、暗くなって、足元注意、映画泥棒ときて、本編へ。足元を照らすランプが点いたままで、ちょうど目に入る位置。昔からずっとだが、気になる。


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