2019年8月18日(日)「KESARI/ケサリ21人の勇者たち」

KESARI・2019・印・2時間34分(IMDbでは150分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、藤井美佳/ビスタ・サイズ(2.35、デジタル、IMDbではArri ALEXA、1.66ビスタに映写機の上下マスクで上映)/ドルビーATMOS

(印UA指定、英15指定、日R15+指定)

監督:アヌラーグ・シン
脚本:ギリシュ・コーリー、
   アヌラーグ・シン
撮影:アンシャル・チョービー
出演:アクシャイ・クマール、
   パリニーティ・チョープラー、
   ケシュ・チャトゥルヴェディ・オーム、
   ミル・サルワール、ほか

公式サイト
http://kesari-movie.com
(全国の劇場リストもあり)

1897年、イギリス領インド北部。アフガニスタンと国境を接する一帯は、イギリス軍将校と地元のシク教徒兵士からなる第31シク連隊に守られていた。その1人、イシャル・シン軍曹(アクシャイ・クマール)は、イギリス人将校が関わるなという命令に背き、処刑されようとしていたマブガニスタンのパシュトゥーン族の女を助けたことで、左遷されてしまう。新しい任地は、辺境にある砦、ロークハート砦、グリスタン砦の中間にあり、2つの砦の通信(鏡を使った光通信)を中継するだけの重要度の低いサラガリ砦だった。そこは戦闘経験も少なく、士気も著しく低いシク教徒20人と、1人の料理人がいるだけだった。イシャル軍曹は分隊長として彼らを鍛え直すことにするが、そのころ、国境付近にパシュトゥーン族の各部族1万名が集合し、3つの砦を襲う計画を立てていた。最初に狙うのが守備の薄いサラガリ砦だった。


74点

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 うむむ、これは……。最初に、これは史実に基づいたフィクションで、他者を中傷したりする意図はないとか、動物はCGを使い傷つけられていない、と字幕が出る。そしてナレーションで、時代背景と現在の状況が語られる。史劇のようで、エンターテインメントでもあると。ちょっと「パドマーワト女神の誕生」(Padmaavat・2018・印)に雰囲気が似ている。

 だから、歌とダンスのインド映画の定番ではないインド映画ということで、予告でかなり興味深いと思ったのだが、やはり歌とダンスはあり、インドらしい大げさな表現や、歌舞伎のような見得を切るような舞台のような演技というか演出がちょっと鼻についた。そのため、実話に基づいた大いなる歴史エンターテインメントだ、涙が出そうになるほど感動的なのだが、戦争映画で、ヴァイオレンス満載で、剣が体に突き刺さり、貫き、血糊が飛んで、血煙が舞う強烈さ。しかも150分以上もあって、戦闘シーンも長いので、自分が舞台となる砦にいて、一緒に戦闘を体験しているような感覚になる。つまり、悪夢を見ているような感覚。これがどうか。評価が分かれるかも。そういう感覚にさせるということは、演出がうまく、この映画は成功したということなんだろうけれど……。

 デジタルもたくさん使われているが、そのレベルがちょっと…… ハリウッドほどではないなと。ちょっと作った感がある。血糊や血煙、大群衆などはリアルだと思ったが、体を貫いた剣だったり、ちょっとした部分が作り物っぽかった。

 画質は素晴らしい。色も良くのり、力強い。高画質。そして音もクリアでよく回る。ハリウッド的な画調だろうか。

 銃は、似せて作られてはいるが、どうもプロップのようで、リアルさに欠ける。色もペンキ塗りのようで、しかもハゲバゲ、ストックも気ではなくプラチスックのように見えた。ペンキのせいかもしれない。トリガーが異様に大きく、サイドプレートのねじが多くてやたらに目立つ。渡す弾薬は撃ち空というか、空砲というか、そんな方のもので、もうちょっと細かいところまで気を遣って撮って欲しかったなあ。そして、せめて主人公クラスくらい実銃なり、もっとレベルの高いプロップを使って欲しかったなあと。敵に至っては、前装銃、火縄的なスナイパー、そしてイギリス側より進んだリー・エンフィールドらしいショート・マガジン・ライフルを使っているが、みなそれらしく作ったプロップ。火縄的なスナイパーは火縄を使っていないし、違う発火方式だったのか。インドでは日本のように実銃を使えないのだろうか。将校のリボルバーは本物ぽかったけど。マシンガンも薬莢は多すぎるくらい飛んでいたけれど、これも形が微妙で……。

 英国軍は、ほぼ単発レバー・アクションのマルティーニ・ヘンリー・ライフル。おそらく劇用プロップ。将校がだぶんウェブリーMk Iリボルバーの短バレル。これは実銃プロップだったかも。敵は前装銃(マズル・ローダー)、マルティーニ・ヘンリー・ライフルやそれより進んだ連発マガジン式のリー・エンフィールドなどやや雑多な感じ。化粧をした感じのスナイパーは火縄の設定っぽい前装銃を使用。どれも劇用プロップという感じだった。もちろん時代的にはどれも合っているようだ。

 主演のアクシャイ・クマールという人はヒゲで良くわからなかったが、「チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ」(Chandni Chowk to China・2009・印)の主演の人で、本作とはまったくイメージが違うが、実際に空手やテコンドーの黒帯なんだそう。最近では、見ていないが「パッドマン 5億人の女性を救った男」(Padman・2018・印)の主人公を演じているのだとか。これから公開される大ヒット作の続編「ロボット2.0」にも出ているそうなので、期待したい。

 公開3日目の初回(といっても午後2時近く)、新宿の劇場は全席指定で、2日前にネットで確保。当日は16〜17分前に開場。観客層はほぼ中高年。戦争映画だし、歴史物だからなあ。男女比は意外と半々くらいからやや女性が増えたか。最終的には157席のほぼ全て、98%くらいが埋まった。これも意外……。楽しい映画ではないので、今後増えるかどうか。

スクリーンは1.66くらいのビスタで開いており、CM・予告の途中で映画泥棒があり、場内が暗くなってマナーがあり、映写機の上下マスクで本編へ。うーむ、レンズを使っていないのか……? まさかねえ。

 ラストに実際の遺跡の写真が出る。21人+1 vs 10,000人という戦いが実際にあったと。昔は話し合いなどということはなく、降参するか戦うかだけだったと。壮絶な全滅の物語。そういった過去の上に現在がある。人類の歴史って……。

 エンド・クレジットはなぜか英語。国際版なのか。そしてたくさんのデジタル・スタッフの名前。


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