2019年9月29日(日)「ホテル・ムンバイ」

HOTEL MUMBAI・2018・豪/米/英/印/シンガポール・2時間03分

日本語字幕:丸ゴシック体下、中沢志乃/シネスコ・サイズ(表記無し、2.35、デジタル、IMDbではArri)/音声表記無し(IMDbではドルビー・デジタル)

(米R指定、日R15+指定)

監督・脚本・編集:アンソニー・マラス
脚本:ジョン・コリー
撮影:ニック・マシューズ
出演:デヴ・パテル(製作総指揮)、
   アーミー・ハマー、
   ナザニン・ボニアディ、
   ジェイソン・アイザックス、ほか

公式サイト
https://gaga.ne.jp/hotelmumbai/
(全国の劇場リストもあり)

2008年、インド、ムンバイ。ゴム・ボートで上陸したテロリストたちは、タクシーに分乗して各自の襲撃地点へと向かう。まずCST駅で実行犯2人による乱射が始まり、続いて市内のカフェでも乱射が始まる。そしてカフェから逃げ出した人々が、ホテル・ムンバイに助けを求める。ホテルは人々を受け入れるも、その中にテロリストも紛れていた。


76点

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 怖くて、悲しい物語。しかも実話がベース。重い。スゴイ臨場感。まるでテロに巻き込まれ、人質になったような気分になる。もちろん、実際の何十分の一、何百分の一だろうが。だから見終わると放心状態のようになる。そして落ち込む。テロの恐ろしさを実感させられる。

 映画としては素晴らしいできだと思うが、ちっとも楽しい映画ではない。最初から最後まで悲しい曲が流れ、暴力的な硬い銃声で、どす黒い血が流れ、たくさんの人が死ぬ。どれもがリアル。見ていて、だんだん苦しくなってくる。

 テロとはこういうことなんだという感じがした。抜け出すことのできない貧しさから、訓練を受けて使い捨てにされるテロリストになり、自分の命と引き換えに家族にお金を残そうとする。標的は自分たちから富や土地を奪った奴らで、異教徒で、人間じゃないと教えられ、死ねば神の元に行けると信じている。テロ実行犯のパターンだ。他人のことは何も考えていないが、理解できないこともない。しかし、こんなふうに人を使い捨てにする首謀者というのが信じられない。自分は命令するだけ。しかも表に出ないから、捕まっていない。

 こういう状況になっても、命をはってほかの人の命を守ろうとする人もいる。この作品では他人を犠牲にしても自分だけ助かろうとする人は出てこないが、それでも本性があらわになって、同じ言葉を話すというだけで、同じ客なのに一緒にいたくないと言い出す人がいたりする。「お客様は神様です」は日本だけかと思ったら、英語でも「ゲスト・イズ・ゴッド」みたいな言い方があるらしい。

 やっぱり気になったのは、人質であってもアメリカのように一旦全員拘束して、ちゃんと調べてから解放しないと、テロリストが紛れ込んでいるかもしれないと言うことと、CNNなどの報道によってテロリストたちにもいろいろな情報が漏れてしまうこと。怖い。重要な問題だ。

 監督のアンソニー・マラスという人は、公式サイトによるとオーストラリア出身だそうで、本作が劇場長編映画デビュー作となるのだそう。これまでにもトルコのキプロス侵攻を描いた短編などで高く評価されていたという。今後の作品にも注目したい。

 銃はテロリストが折りたたみストックのAKSとベレッタ92。途中で突入する普通の警察は6インチのリボルバーとグロック、ラストに突入する特殊部隊はMP5と、TMP(MP9)もあったような。銃声は硬い感じで良かったが、もっと大きいほうがリアルで、暴力的なほうがより怖くて良かったかも。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、2日前にネットで確保。当日はビルが40分前くらいに開いて、会場は25分前くらい。最初17〜18人いて、若い人が1人、オバサンが4人、あとはオヤジ。最終的にはこんな比率で、112席に7.5割くらいの入り。朝一にしてはなかなか。

 マナーのあと暗くなって、映写機のマスクが左右に広がり、シネスコ・サイズになってからまぶしい白バックの足元注意が出て、映画泥棒から本編へ。本編が始まってもまだ入ってくるヤツがいて、それはいいんだけど、暗いものだからケータイを照明代わりにするなんて!迷惑だっつうの。


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