2019年10月26日(土)「ジェミニマン」

GEMINI MAN・2019・米/中・1時間57分

日本語字幕:手描き風書体下、戸田奈津子/ビスタ・サイズ(1.85、デジタル、ARRI、ドルビーVISION)/ドルビーATMOS(IMDbではドルビー・サラウンド7.1も)

(米PG-13指定)(日本語吹替版、IMAX版、3D+、4D上映もあり)

監督:アン・リー
脚本:デヴィッド・ベニオフ、
   ビリー・レイ、
   ダーレン・レムケ
撮影:ディオン・ビーブ
出演:ウィル・スミス、
   メアリー・エリザベス・ウィンステッド、
   クライヴ・オーウェン、
   ベネディクト・ウォン、ほか

公式サイト
http://geminiman.jp
(全国の劇場リストもあり)

アメリカ、DIA(国防情報局)の超腕利きスナイパー、ヘンリー・ローガン(ウィル・スミス)は、自分の能力の衰えを感じ、引退を決意する。しかし、彼が最後に行った狙撃で殺された人物がテロリストではなく分子物理学者だったことをかつての戦友から知らされ、事情を知る人物から直接話を聞くため、ハンガーリーのブダペストへ行くことにする。しかし、ヘンリーを監視していたDIAの幹部クレイ・ヴェリス(クライヴ・オーウェン)は、それが知られることを防ぐため、自分が設立した特殊部隊ジェミニの暗殺部隊を、関係した者たちのところに一斉に送り込む。


74点

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 ちょっとマーク・ウォールバーグの「ザ・シューター/極大射程」(Shooter・2007・米)のようなアクション。ただ、銃へこだわりはあれほどではないので、いまひとつマニアックさはないが、銃声が破裂音的で大きく迫力があって、サラウンド効果も相まって、とてもリアル。緊張感があって、怖かった。IMDbでは5.7点の低評価。ちょっとウィル・スミスが演じた主人公の設定が凄すぎて、それが鼻につくというか、気になると評価が低くなるのかも。

 リアルな舞台背景と、リアルなアクション。そこにちょっと超人的な主人公と入れてやり、トンデモな設定を混ぜると、映画らしいお話ができ上がると、そんなハリウッド的作品でもある。そしてとにかくアクションが素晴らしい。かなり3D-CGも使われているようだが、肉体的にもかなり大変な撮影だったのではないだろうか。ウィル・スミスとメアリー・エリザベス・ウィンステッドの2人で撃ちながらの前進は、タクティカルの作法に則っていたようで、なかなか見事だった。マズルが相棒の方に向かないようにしていたし、撃たれた相棒を引きずっていくところや、引きずられながらも撃っているところなんか、実戦ぽかった。トレーニングを受けたんだろうなあ。

 「ザ・シューター……」と似ているのは、凄腕の主人公が罠にはめられて追われる立場になり、美人を巻き込むことになって助けてもらい、助っ人には追う側の人間もいるという展開。ラストはもちろん仕組んだヤツとの対決。ほぼ同じ骨組みだ。ちょっとひねられているだけ。そこにジェミニ・マン、クローン人間というトンデモな設定を放り込んだら本作だ。

 ただ、最初の「狙撃」(1968・日)を彷彿とさせるライフルによる狙撃シーンは、レンジ・ファインダーで距離を測って、ケストレルの風速計で風速を量って、列車の速度を聞いて計算するあたりは良いのだが、そのあとのスコープの上下左右の調整ノブの回し方があまりにもざっくりで……。しかも.308口径らしいのに、射程距離が2,000m超えって。1,200mでもギリギリという感じなのに。

 ジェミニは双子座のことで、英語ではジェミナイと発音していた。たしか古くにそんな映画とかあったような気がして調べてみると、「ジェミニマン」(Gemini Man・米・1976)というTVドラマがあった。「西部二人組」(Alias Smith and Jones・1971-1973・米)のベン・マーフィーが15分だけ透明になれるジェミニマンを演じたと。日本ではフジテレビ系で1978年から放送されたらしい。たぶん本作とは何の関係もなし。

 20代のウィル・スミスは自然で違和感がなかった。顔だけ作ったものを本人にデジタルで貼り付けているのだろうか。バイク・チェイスのシーンなんか危険なシーンも本人が演じているように見えるが、ここも同じようにスタントマンに顔を貼り付けているか、ひょっとしたら全部デジタルかも。

 ヒロインのメアリー・エリザベス・ウィンステッドは、「ダイ・ハード4.0」(Live Free or Die Hard・2007・米/英)でマクレーン刑事の娘を演じていた人。「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」(Scott Pilgrim vs. the World・2010・米/英/加/日)では主人公が憧れる女子高生だった。大人になったなあと。しかもガン・アクションが出来るとは。もちろんトレーニングしたんだろうけど。

 監督はアン・リー。傑作西部劇「楽園をください」(Ride with the Devil・1999・米)を監督した人。その後、チョウ・ユンファの「グリーン・デスティニー」(Wo hu cang long・2000・台/香/米/中)を手掛け、同性愛を描いた「ブロークバック・マウンテン」(Brokeback Mountain・2005・米/加)ではアカデミー賞監督賞を受賞し、さらに「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」(Life of Pi・2012・米/台/英/加)でも監督賞を得ている。

 銃は、最初の列車狙撃シーンではレミントンM700。ヘンリーの自宅ではスプリングフィールド・アーモリーかキンバーあたりの1911カスタム。刺客はP226のサウンド・サプレッサー付き。コロンビアでヘンリーは金色バレルの付いたグロック・カスタム。若いヘンリーはコーナー・ショットを使用。ヴェリスのオフィスにはM1903ライフルのスコープ付きスナイパー、フリントロック・ピストルのペアが飾られていた。ほかにヘンリーはM4系のカスタムを、若いヘンリーはAK系のカスタムを使う。ウィンステッド演じるDIAの女性エージェント、ダニーはグロックと、M4系カスタム。襲ってくる部隊はミニガンも使用。ダブル・バレルのポンプ・アクション・ショットガンは、たぶんDP-12あたり。

 キー・アーマラーは、IMDbによればデイヴィッド・フェンクル。デンゼル・ワシントンの「イコライザー」(The Equalizer・2014・米)やマット・デイモンの「ジェイソン・ボーン」(Jason Bourne・2016・米/加)を手掛けた人。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、2日前にネットで確保。当日は15分前くらいに開場。観客層は中高年が中心で、最初18人くらいいて、女性は4〜5人。朝早めだったので、580席に50人くらいいたろうか。

 スクリーンはシネスコのフルで開いており、CM・予告の途中で半暗になり、映画泥棒からドルビー・シネマのCMを挟んで予告が続き、暗くなってマナー、映写機の左右マスクで本編へ。ただこのマスク、1.66と1.85の二つが重なったような二重になっていて、なんなんだろうと。スクリーン側のマスクでないと締まりがないなあ。


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