監督・製作:クリント・イーストウッド 原作:マリー・ブレナー(雑誌記事) 脚本:ビリー・レイ 撮影:イヴ・ベランジェ 出演:ポール・ウォルター・ハウザー、 サム・ロックウェル、 キャシー・ベイツ、 ジョン・ハム、 オリヴィア・ワイルド、ほか |
1996年、アメリカ、ジョージア州アトランタ。アトランタ・オリンピックが開催される中、警備員のリチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)はセンテニアル公園のコンサート会場で爆弾を発見し、多くの人々を避難させ、一躍ヒーローとなる。ところが、FBIがリチャード・ジュエルも捜査対象としていることを捜査官のトム・ショー(ジョン・ハム)が、新聞記者のキャシー(オリヴィア・ワイルド)に漏らしたことから、新聞でスクープとして実名報道され、マスコミが押しかけることになる。 |
感動的な話。そして、権力というか、力を持つもの(ここではFBIとマスコミ)の暴走の恐ろしさ。罠にはめてでも犯人を挙げようとする法執行機関と、予告でも言っていたメディア・リンチをリアルに知ることができる。よく調べないで、状況証拠と思い込みだけで、突っ走る。その怖さ。映画では触れていないが、SNSと通じる部分もあると、公式サイトで解説されている。 刑事も記者も一緒。基本的なところから、ちゃんと調べればわかるはずのことをやらず、間違った道へ進んでしまう。他紙を出し抜こうとか、特ダネをものにしたいとか、そういうものが優先し、ダブル・チェック、トリプル・チェックを忘れしまう。「スポットライト 世紀のスクープ」(Spotlight・2015・米)などとは対極に位置する話。「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」(The Post・2017・英/米)というスピルバーグ作品もあった。ウォーター・ゲート事件を描いたダスティン・ホフマンとロバート・レッドフォードの「大統領の陰謀」(All the President's Men・1976・米)とか。日本だと「クライマーズ・ハイ」(2008・日)も報道の話だった。ちゃんとやる記者もいるし、やらない記者もいると。他社がやって自分のところが遅れるとヤバイから、みんな追随してしまう。怖い。 御年90歳のイーストウッド監督が撮ったパワフルな映画。銃も出てくるし、レンジで射撃するシーンもある。爆発シーンはなかなかの迫力で、まったく歳を感じさせない。ただ、ラストがバーンとか、ドカーンとか、大逆転の大騒ぎでないだけ。 本作でもサム・ロックウェルが良い味を出している。外見や身分、収入などで人を判断しない人。清貧に甘んじている人。ラストには愛をつかむ。お相手のインド系の美女ナディア・ライトもいいキャラクター。演じたニナ・アリアンダは、ローレル&ハーディを描いた「僕たちのラストステージ」(Stan & Ollie・2018・英/加/米)に、ローレルのロシア系妻役を演じていた人。あちらもうまかったが、本作でもうまい。そして、自然で、どこにもいそうなアメリカ人の母という感じのママ、キャシー・ベイツも素晴らしかった。 銃は、レンジでレミントンM700系らしいライフルが見られ、リチャード・ジュエルはM16ライフルを撃つ。また趣味でたくさんの銃を持っている。FBIはP226。imfdbによると警官はグロックだったらしい。リチャード・ジュエルの部屋から押収された銃の中に、「ダーティハリー」の44マグナムM29があったように見えた。もしそうなら、イーストウッドらしいちょっとしたシャレというか、ジョークなのかなと。 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、2日前にネットで確保。当日は12〜13分前に開場。若い人から中高年まで、わりと幅広い感じ。中学生くらいの娘を連れたファミリーも。男女比は7対3くらいで男の方が多かった。最終的には287席の5.5割くらいが埋まった。まあ、作品としてはちょっと地味かもしれない。 スクリーンはシネスコで開いており、CM・予告の途中で半暗になって、映画泥棒、音の大きなドルビー・シネマのデモ、本予告と続いて、映写機のマスクが左右に広がって暗くなり、マナーから本編へ。 床がベトベトしていて、ちょっと不快だった。誰かドリンクをこぼしたのだろう。 |