2020年1月26日(日)「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」

LES TRADUCTEURS・2019・仏/ベルギー・1時間45分

日本語字幕:丸ゴシック体下、原田りえ/シネスコ・サイズ(表記無し、IMDbでは2.39、デジタル)/表記無し

監督:レジス・ロワンサル
脚本:レジス・ロワンサル、
   ダニエル・プレスリー、
   ロマン・コンパン
音楽:三宅 純
撮影:ギヨーム・シフマン
出演:ランベール・ウィルソン、
   オルガ・キュリレンコ、
   リッカルド・スカマルチョ、
   シセ・バベット・クヌッセン、
   エドゥアルド・ノリエガ、ほか

公式サイト
https://gaga.ne.jp/9honyakuka/
(全国の劇場リストもあり)

ドイツのブック・フェアで、フランス・アングストローム出版社の社長、エリック・アングストローム(ランベール・ウィルソン)が、世界的ベストセラー『デダリュス』三部作の完結編となる『死にたくなかった男』の出版権を獲得したと発表。そして販売部数の多い国順に9人の翻訳者を雇い、世界同時発売するため、フランスの豪邸の地下に2ヶ月間缶詰にして翻訳作業を進めさせる。ところが、エリックの携帯に「冒頭10ページの原稿を流出させた。500万ユーロ払わないと次の100ページを流出させる」というメールが届く。それにはその日話した内容まで含まれていて、9人の翻訳者の中に犯人がいるとしか思えない。


72点

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 うーむ……。気を失いそうになるほど退屈な前半と、ようやく動き出す後半、そして感動的なラスト。前半は付いていけず寝そうになってしまったものの、後半は意外な展開から正邪、攻守入れ替わる驚き物語で、ちゃんと納得がいった。プラ・マイ・ゼロみたいな映画だが、まあ見て良かったかなと。

 前半は退屈。出版社の社長がいけ好かないヤツというのは、パターンながら設定として大いにあり。嫌われ役。一方、世界各国から集められた翻訳家9人はいただけない。それぞれ個性的というのは映画として必要だろうが、1人としてまともなヤツがいないというのはどうなんだろう。どうにも感情移入しにくい。イヤな感じのヤツばっかり。犯人をわかりにくくするための設定のようなキャラクターたち。知性をひけらかすような、お高くとまった感じの会話もイラつかせる。その辺を茶化そうというヤツもいない。こんなヤツら、どうなってもいいさと観客が思ってしまったら、映画が成立しないのでは。

 そのうえ、メインの事件である原稿の流出が起きても、直接に困るのは社長だけで、翻訳で雇われた9人には、犯人でなければ、どうでもいい話のはず。たとえこの中に犯人がいるということになっても、翻訳者たちで犯人捜しなんてする必要ないだろう。社長にしても、犯人がこの中にいるとわかっているなら、とりあえず身代金を払って、本を出版してから犯人捜しをしても良いわけだ。どうせ逃げられない。それをあえて、翻訳作業中にやる。社長だけでなく、翻訳者同士でまで。どうでも、いいだろ。必要ないと思ってしまう。まるで、ミステリーにするためのわざとらしい設定にしか思えない。こんなことがたくさん。だから退屈になり、眠くなる。いろいろつじつまが合わないというか、なんでそうなるのかわからないところが出てきて、付いていけなくなる。実は、その辺が真実とのギャップで生まれたことだったと、後でわかることになるのだが……。

 銃は、セキュリティ・ガードがグロックを使用。翻訳者たちに用意されていたパソコンはMacノート。それにしても、翻訳者に日本人がいないとは。ベスト9にも入らないかあ……。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、2日前にネットで確保。当日は20分前くらいに開場。観客層は若い人から中高年まで割と幅広く、男女比は4.5対5.5くらいでやや女性が多め。そして女性の方が若い人が多かった。着いた時点で残席わずかの黄色表示だったが、最終的には157席に7.5割くらいの入り。予約して来られなかった人が多かったのかもしれない。電車が止まったとか……。

 スクリーンはシネスコで開いており、CM・予告の途中でほぼ暗くなり、映画泥棒、ドルビー・シネマをはさんで再び予告からマナーがあって、映写機のマスクが左右に広がって暗くなり、フル・サイズで本編へ。


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