2020年2月22日(土)「スキャンダル」

BOMBSHELL・2019・米/加・1時間49分

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/カメラ表記無し(IMDbではデジタル、2.39、Arri ALEXA)/音響表記無し(IMDbではドルビー・デジタル)
(米R指定)

監督・製作:ジェイ・ローチ
脚本:チャールズ・ランドルフ
撮影:バリー・アクロイド
出演:シャーリーズ・セロン(製作)、
   ニコール・キッドマン、
   マーゴット・ロビー、
   ジョン・リスゴー、ほか

公式サイト
https://gaga.ne.jp/scandal/
(全国の劇場リストもあり)

2016年、全米No.1の視聴率を誇るニュース放送局「FOXニュース」の人気女性キャスター、メーガン・ケリー(シャーリーズ・セロン)は、大統領候補のトランプに批判的な報道をしたことから、様々な面で嫌がらせを受けることになる。そこでFOXニュース会長兼最高責任者のロジャー・エイルズ(ジョン・リスゴー)に相談し、守ってもらうことに。そのころ、新人の女性キャスター、ケイラ・ポスピシル(マーゴット・ロビー)はどうにか芽を出そうと、ロジャーに直訴できる方法を考えていた。そんな時、ベテラン女性キャスターのグレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)が、ロジャーの一存でクビに。それを予期していたグレッチェンは、周到な準備を積み重ねており、タイミングを見計らってロジャーをセクハラで告発する。


74点

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 実話に基づくではなく、実話に着想を得たと出る作品。とはいえ、ほぼ実名で、当時の実際のニュース映像も使われており、実話の映画化と言っても過言ではない。ただつい最近の出来事であり、言い切れない部分もあるのだろう。なにより、訴えた当事者は和解により事件について話すことができないことになっているらしい。だから完全に事実とは言い切れないと。

 それにしても、つい最近のことでありながら、まだこんな絵に描いたような小悪党(大物だがやってることはせこい)がいるなんて。というか、訴訟社会のアメリカでさえこれなんだから、日本あたりはもっとあるのかなとも思う。大きな権力の座に付くと、やはり人間が変わってしまうのだろう。スターになった人が皇帝のようになってしまうのとも似ているというか、同じだと。それで本当のクビになる人間が出てくるのだから怖い。とはいえ、この訴訟で女性たちは20億円からの和解金を手にしているわけで……。ちょっと複雑。でも、とにかく怖い映画。

 権力を笠に着た者との戦いは、セクハラだけでなく、トランプとの戦いも描かれていて、これがまた怖い。それなりの権力があるものに守ってもらわないと、防ぎきれない。ありそうな恐怖。そしてそういう人物が大統領になっているとは。この辺も狙いの1つか。

 とは言え、ボクのようなボンクラ頭には、そもそもアメリカの共和党と民主党がわからない。わからないとFOXニュースとの関係もよくわからない。そしてFOXニュースは知っていても位置づけとかわからないから(全米一のニュース局?)事件の大きさもよくわからない。そこで、主人公であるメーガン・ケリーのナレーションとか、カメラ目線での局内案内とかあるんだろうけど、やっぱりアメリカ人じゃないとピンとこないかなと。セクハラ等はわかっても、たぶん理解の深さが違う。

 監督はジェイ・ローチ。製作も多いが、監督としてはおバカ・スパイ・コメディ「オースティン・パワーズ」(Austin Powers: International Man of Mystery・1997・米)シリーズや、ラブ・コメディ「ミート・ザ・ペアレンツ」(Meet the Parents・2000・米)などを手がけた人。どちらかと言えばコメディの人かと思っていたら、監督最近作は見ていないが「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」(Trumbo・2015・米)というシリアスな実録モノも撮っている。それでも、シャーリーズ・セロンはよく任せたなと。

 銃はTV局の警備担当なのか、ちょっと偉そうな男性が、局内でヒップ・ホルスター(ベルト・ホルスター)らオートマチックを入れていた。抜かないので銃種まではわからなかったが。

 まあアカデミー賞を受賞しただけあって、特殊メイクは実に見事。特にシャーリーズ・セロンのメーガン・ケリーとジョン・リスゴーのロジャー・エイルズがすごい。実に自然で、言われなければ特殊メイクだとはわからないレベル。むしろ元がシャーリーズ・セロンやジョン・リスゴーだと気づけない。別人。デジタルで修正したみたい。

 公開2日目の初回、日比谷の劇場は全席指定で、2日前にネットで確保。当日は16〜17分前に開場。高寄りのほぼ中高年で、男女比は半々くらい。最終的には257席に8.5割くらいが埋まった。地味な作品ながら、さすがアカデミー賞受賞の話題作。

 シネマ・チャンネルのあと半暗になって予告が続き、マナーのあと映写機のマスクが左右に広がってシネスコ・サイズになり、暗くなってまぶしい足元注意から映画泥棒で本編へ。

 ちなみに原題のBOMBSHELLというのは、人を驚かせるようなモノ、爆弾のことだそう。


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