2020年10月24日(土)「ストレイ・ドッグ」

DESTROYER・2020・米・2時間01分

日本語字幕:丸ゴシック体下、チオキ真理/シネスコ・サイズ(IMDbでは2.35、Panavision)/音響表記なし(ドルビー・デジタル?)

(米R指定、日PG12指定)

監督:カリン・クサマ
脚本:フィル・ヘイ、
   マット・マンフレディ
撮影:ジュリー・カークウッド
出演:ニコール・キッドマン、
   セバスチャン・スタン、
   トビー・ケベル、
   タチアナ・マズラニー、ほか

公式サイト
https://www.destroyer.jp
(全国の劇場リストもあり)

LAPDのエリン・ベル刑事(ニコール・キッドマン)は、ベテランだが酒に溺れ、誰からも疎まれる存在。そんな彼女の元に、心の傷の原因となった17年前の事件の首謀者から、追跡用染料が付いた100ドル紙幣が届く。するとエリンは相棒には内緒で独自に強引な捜査を始める。実は、17年前、FBIに協力し、地元のギャング組織にFBI捜査官のクリス(セバスチャン・スタン)と共に潜入を命じられ、失敗していたのだった。


76点

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 これまたダークな物語。ダメな女の後悔の日々を描く、ため息映画。ただ、それが暗いだけではなく、反省と贖罪があり、ダメなりに前向きに進んで行く姿は感動的で、応援したくなる。だから嫌になりかけるが、どうにか見捨てずに付いて行ける。この微妙な線がうまい。ただ嫌なだけではない。

 そして、もう1つ面白いのは、17年前の事件がベースで、現在と対比させ、登場人物の変化を描いていること。金髪が黒髪になり、余命いくばくかになっていたり、長髪が坊主頭になっていたり、スーツ姿になっていたり…… ほとんど変わらない人物もいるが、主人公はまるでエクソシストのリーガンみたい。その変化が非常に興味深く、まるで人気TVドラマの「コールドケース迷宮事件簿」(Cold Case・2003-2010・米)のよう。当時のヒット曲というのは使われていないようだったが。

 ここでも一番の悪党は徹底的に悪く、恐ろしい。仲間というか手下の命など何とも思っていない。平気でもてあそぶ。それがまた緊張感がある。これを女性監督がとっているというのが驚きだ。こんなに悪いヤツがいる。まっ、だから主人公を応援したくなるわけだが。

 その監督は日系アメリカ人のカリン・クサマ。脚本も務めた「ガールファイト」(Girlfight・2000・米)はとても良かった気がする。たぶんこれでミシェル・ロドリゲスが注目され、スターになっている。その後、「イーオン・フラックス」(Æon Flux・2005・米/独ほか)や「ジェニファーズ・ボディ」(Jennifer's Body・2009・米/加)は見たが、主人公が女性というだけで、特に女性を感じさせるような演出はしない人なのだろう。

 主演のニコール・キッドマンは最近自ら進んで汚れ役をやっているような感じ。美人女優ゆえか、シャーリーズ・セロンも似たような活動の仕方をしている。あえてブス・メイクをやるとか、特殊メイクで元の顔がわからないようにしてしまうとか。そういえばブラッド・ピットもそうだったか。見かけじゃなく、中身で勝負ということ? 美形あるあるか。ということは、スカーレット・ヨハンソンもいずれこのパターンになるか。往年の美男俳優アラン・ドロンはそんなことなかったような気がするけど。

 銃は、冒頭の殺人事件で使われたのが2インチのスナブ・ノーズで、プロップっぽい感じもあったが、コルトのディテクティブかコブラのようだった。ロシアン・ルーレットで使われたのもスナブ・ノーズで、こちらはたぶんS&Wのチーフス・スペシャル。警察はグロック。銀行強盗のギャングたちはポンプ・ショットガンにAK、M4、ウージーとKG9もあったような。ベル刑事は車のトランクからMP5A3を取り出して使う。マガジン・チェンジもやっていたのは立派。ギャングのボスは1911オートのリング・ハンマー。

 原題はデストロイヤーまり破壊者。この内容にピッタリあっている。邦題はわざわざ英語でストレイ・ドッグ=はぐれ犬、野良犬。うむむ。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は全席指定で、2日前にネットで確保。当日は20分前くらいに下の窓口がオープンと同時に開場。ただ3スクリーンなので窓口は混雑。ちょっと考えて欲しいなあ。観客層はほぼ中高年。もともとこの劇場は年齢層が高い。昭和な劇場だからなあ。若い人と女性はそれぞれ1割くらいいただろうか。最終的にはフル座席224席の7割くらいが埋まった。

 スクリーンはビスタで開いていて、明るくてよく見えないシネマ・チャンネルは新作。CM・予告の途中で半暗になり、ふたたびCM・予告。マナーがあってスクリーンのマスクが左右に広がってシネスコ・サイズになり、暗くなってから、まぶしい足元注意の、映画泥棒、映倫と続いてようやく本編へ。


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