2020年10月31日(土)「罪の声」

2020・TBS/講談社/フィルムフェイス/WOWOW・2時間22分

日本語字幕:丸ゴシック体下、牧野琴子/ビスタ・サイズ(映写機の左右マスクで上映、表記なし)/音響表記なし(公式サイトでは5.1ch)

(『HELLO! MOVIE』方式に対応した視覚障害者用音声ガイド、聴覚障害者用日本語字幕付き)
(一部日本語字幕付き上映もあり)

監督:土井裕泰
原作:『罪の声』塩田武士(講談社文庫)
脚本:野木亜紀子
撮影:山本英夫
出演:小栗旬、星野源、
   古舘寛治、市川実日子、ほか

公式サイト
https://tsuminokoe.jp
(全国の劇場リストもあり)

2018年、京都。テーラーを営む曽根俊也(そねとしや、星野源)は、クリスマスが近づくある日「1984年」と書かれたカセット・テープと英語でメモが書かれた手帳を見つける。テープを再生してみると、自分の声で、すでに時効となっている35年前の未解決の企業脅迫事件で使われた身代金受け渡しの指示だった。衝撃を受けた俊也は、当時のことを調べ始める。同じ頃、大日新聞社の記者、阿久津英士(あくつえいし、小栗旬)は、英検準一級の英語力を買われ、特集記事の企業脅迫事件の手掛かりを追ってイギリス出張を命じられる。


73点

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 実際に起きた『グリコ・森永事件』(警察庁広域重要指定114号事件)を元にしたフィクションながら、非常に頷ける内容で、実際にこうだったのではないかと思わせる説得力が見事。そして強烈なドラマ。あまりに悲しすぎる。なんという悲劇。しかし過去の事件をもろもろ白日の下にさらし、被害者たち、新聞記者それぞれの成長というか前進も描きつつ、一歩踏み出せるような映画に仕上がっている。ネガティヴではないところがいい。

 映画としてお金が掛かっていて、セリフで説明するだけではなく、ちゃんと映像で見せていく手法で、特に当事者にされてしまった仕立て屋と、新聞記者の2人が、関係者の話を聞きながら次々と手がかりを得て過去のことを明らかにして行く過程が素晴らしい。うまいなあ。ただ、観客は自分が話を聞きに行っているような気で見ているので、2人の聞き込みがごっちゃになって混乱するところはあるのかなと。

 佐藤蛾次郎とか浅茅陽子とか、懐かしい印象のキャストが多く出ているが、特に印象的だったのは、彼らより、ずっと日陰で生きてきた脅迫テープの声の1人、生島聡一郎の現在の姿を演じた宇野祥平。額に浮いた血管、牛乳瓶の底のような分厚い度の強い眼鏡などとも相まって、鬼気迫る雰囲気が素晴らしかった。見ているだけで怖い感じ。すぐに気が触れてしまうか、自殺しかねない雰囲気がにじみ出ていた。三池崇史監督作品や北野武監督作品など、同じ監督の作品によく出ている印象。古くは「殺し屋1」(2000・日)や「座頭市」(2003・日)に出ていて、最近だと「事故物件怖い間取り」(2020・日)や「嘘八百 京町ロワイヤル」(2020・日)に出ているらしい。

 よく練り込まれた脚本は野木亜紀子。「図書館戦争」(2013・日)シリーズや「アイアムアヒーロー」(2016・日)、TVの「逃げるは恥だが役に立つ」(2016・日)などを手がけている。女性ながらアクションもうまく、星野源の活かし方もよくわかっていたと言うことか。

 監督は土井裕泰。元はTVの人で、TVの「S -最後の警官-」(2014・日)や「逃げるは恥だが役に立つ」などを手がけている。映画では「映画ビリギャル」(2015・日)や「麒麟の翼 -劇場版・新参者」(2011・日)などを監督。なるほど、なんとなく本作とつながるものを感じる。
 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、2日前にネットで確保。当日は17〜18分前に開場。観客層は中高年、特に中年層が多かった印象。若い人も少しいたが、意外と当時を良く知っているはずの高齢者が少なかったかも。男女比は、最初、男11人で女6人。やはりいつものように女性のほうが若い感じ。最終的に下は母に連れられた中学生くらいの女の子から、というところ。

 200席のフル座席で、3.5割くらいの入り。8席あるプレミアム席には1人の若い女性が座った。すごいなあ。CM・予告から、途中半暗になり、マナーのあと暗くなって、足元注意の映画泥棒、映倫と続いて、映写機の左右マスクで本編へ。


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