2021年1月31日(日)「名も無き世界のエンドロール」

2020・エイベックス・ピクチャーズ、ハピネット、A-Sketch、集英社、メ〜テレ、ひかりTV、共同テレビジョン、ステータス、クオラス、RIKIプロジェクト・1時間41分

ビスタ・サイズ(映写機の左右マスクで上映、表記なし)/音響表記なし

監督:佐藤祐市
原作:行成 薫『名も無き世界のエンドロール』
(集英社文庫)
脚本:西条みつとし
撮影:近藤龍人
出演:岩田剛典、新田真剣佑、
   山田杏奈、中村アン、
   大友康平、柄本 明、ほか

公式サイト
https://www.namonaki.jp
(全国の劇場リストもあり)

小学校時代、親友のキダ(岩田剛典)とマコト(新田真剣佑)のクラスに、転校生の少女、ヨッチ(山田杏奈)がやってくる。似た家庭環境から3人は仲良くなり、中学、高校と、良くつるんでいた。そしてキダとマコトは地元の鈑金塗装会社に就職する。するとある日、政治家の娘でモデルの高慢ちきな女リサ(中村アン)が真っ赤なポルシェでやってきて、犬をひいてヘッドライトが壊れたから直してくれという。興味を持ったマコトはリサを食事に誘うが、住む世界が違うと相手にされなかったことにショックを受け、間もなくして会社を辞め姿を消してしまう。


76点

前へ一覧へ次へ
 楽しめた。そして感動した。せつなく、つらい物語。じわーっと心に響く。何より、嫌らしい人間が実に見事に描かれている。高飛車な小学校の女性教師、わがまま放題に育った代議士の娘、人生を棄ててしまったエリート男などが、特に素晴らしい。もう見ているだけで憎しみしか感じないほど。

 なにもこんなエンディングでなくてもと思うが、映画のエンドロールの後に半年後の映像というのがちょっと出て、パイソンの4インチに1発だけ.357マグナム弾を詰めるシーンがあり、なにやら続編がある雰囲気。おい、おい、と思っているとdTVで独占配信とか。オイ、オイ。ま、いろいろ想像はできる。

 予告では恋愛メインの、のし上がりドラマというような感じだったが、それがメインというより謎解き的な壮大なミステリーという感じがした。予告と違っていて、見て良かったなと。

 特に良い感じがしたのは子供時代。辛い状況にありながら、3人でつるんでいる感じが実に楽しそうで、それが「狼少女」(2005・日)や「白ゆき姫殺人事件」(2014・日)、「僕だけがいない街」(2016・日)とも似ているかなと。いじめとか、つらいなあと。

 嫌らしい役を演じた役者さんは皆うまいと思ったが、特にわがまま娘を演じた中村アンは良かった。本当にこういう人なのかと思ってしまうほど。TVのバラエティ番組で観る感じとはまったく違う。こんなに演技派だった?

 そしてヒロインを演じた山田杏奈がいい。「樹海村」(2021・日)では普通の印象だが、本作では光っている。役柄ということもあるだろうし、演出ということもあるだろう。良い作品に巡り合うと、役者は輝くと。

 逆に、作品にあまり関係なく、どの作品でも存在感を放っているのが柄本 明。最近、映画に出まくりという感じもするが、どの作品でも山椒的存在。TVの「半沢直樹」も良かったし。本作でも、ちょっとしか出ていないのにしっかり印象に残り、怪しい感じが実に良く出ていた。

 画質は良く、解像度も高く、色も濃くコントラストがはっきりしていて力強い絵。日本映画には珍しく良い感じ。お金が取れる絵とも言えそう。だから真っ赤なポルシェが映える。きれい。おそらくデジタルだとは思うが、クレジットに機材の表記はなし。撮影は近藤龍人。日本アカデミー賞の撮影賞も取っている人らしい。邦画はあまり見ないが見た作品でいうと「バンクーバーの朝日」(2014・日)とか、予告で見た「人間失格 大宰と3人の女たち」(2019・日)も色が濃くて映画らしい絵だった。感情が良く伝わってくる気がするし、絵が印象に残る。

 監督は佐藤祐市。もともとTVの人で、「世にも奇妙な物語」とか「ウォーターボーイズ」とかを手掛けていて、なるほどなあと。ボクが見た劇場作品だと「累-かさね−」(2018・日)がある。それよりは本作のような作品で手腕を発揮する人なのかも。この後の作品も期待したい。

 制作はRIKIプロジェクトで、プロデューサーの1人が俳優の竹内 力。ヤクザ役などが多いイメージとは違って、新人の発掘や育成に熱心な人というような話を聞いたことがある。

 銃は、川畑洋行のボディガード(?)がチーフらしいリボルバー。キダが1911オートを脅しに使うが、発砲して薬莢を回収しないと、あとで動かぬ証拠になる場合があるから、プロとしてはいかんなあ。そしてラストのパイソン4インチ。銃器特殊効果はビッグショットの納富貴久男。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は通常どおり(ただし終了が20時)の全席指定で、2日前にネットで確保。当日は、20分前くらいに着いてトイレに行ってきたら開場済み。観客層はやはり若い人が多かったものの、女性は思ったより少なかった。また前日の舞台挨拶とそのライブ・ビューイングがあった反動からだろう、最初の日曜日でも最終的には184席に20人ほどの入り。いくら朝一でもコレは少ない。もっと入っていい映画なのに。女性は6人くらい。下は中学生くらいの女の子3人グループ。

 シネマ・チャンネルの後半暗になり、非常口のランプが消え、CM・予告からマナーがあって暗くなり、映写機のマスクが左右に広がり、まぶしい足元注意の、フル・サイズの映画泥棒からエリンがあって、映写機の左右マスクのビスタで本編へ。おいおい、映画泥棒が一番迫力あるって……!

 それにしても、隣の4Dスクリーンの振動が伝わって来て不快だった。初めてらしい女子たちは「地震?」とか騒いでいた。安普請なのか、どうにかして欲しいなあ。


前へ一覧へ次へ