2021年2月21日(日)「藁にもすがる獣たち」

BEASTS CLAWING AT STRAWS・2020・韓・1時間49分(IMDbでは108分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、福留友子/シネスコ・サイズ(表記なし、IMDbでは2.39)/音響表記なし
(韓18指定)

監督・脚本:キム・ヨンフン
原作:曽根圭介『藁にもすがる獣たち』
   (講談社文庫)
撮影:キム・テソン
出演:ペ・ソンウ、チョン・ウソン、
   チョン・ドヨン、シン・ヒョンビン、
   チョン・マンシク、ほか

公式サイト
http://klockworx-asia.com/warasuga/
(全国の劇場リストもあり)

事業に失敗し、家業をたたみホテルのフロントの夜間シフトのアルバイトをやっているジュンマン(ペ・ソンウ)。失踪した恋人の借金でヤクザから厳しい取り立てを受けている出入国審査官のテヨン(チョン・ウソン)。投資に失敗しホステスとして働くDVに苦しめられている主婦のミラン(シン・ヒョンビン)。それぞれが金を手に入れるためには、何でもやろうというところまで追い込まれ、ついに行動を起こすが……。


78点

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 恐ろしい映画。血まみれで、気持ち悪くなるくらいのリアルな暴力まみれ。ほぼ刃物で、血もどす黒い。その暴力が自分の身に降りかかってきそうで、恐くてたまらない感じ。始めから終わりまで、ドキドキが止まらない。ちょっと妻夫木聡の「スマグラー おまえの未来を運べ」(2011・日)にも似た雰囲気があるかも。これでG指定とは! 包丁が頭を貫通したりしてるのに。

 最後まで誰がメインなのかわからない群像劇的構成で、しかもほぼ全員が悪人。根っからの悪人ではないが、人を騙して、ズルをして得をしようとしている。だから誰に感情移入してみていいのかわからない。この人かなと思って見ていると、いきなり殺されたりする。これが不安にさせる要素ともなっているわけだ。

 全4章、冒頭のシーンのみ時間設定が違い、あとはそこへと至る時間軸に沿った展開かと思いきや、ほかも実は時間軸がバラバラで、それが巧妙につながっている。見事な構成。原作もこんな感じなのだろうか。読んでみたくなった。絵もコントラストがしっかりしていて色が濃く、力強く美しい。とても本作が初の劇場作品とは思えないレベル。凄い監督だなあと。こういう人がゴロゴロいるのが韓国映画界というイメージ。

 その新人監督はキム・ヨンフン。詳細は不明だが、公式サイトの写真を見る限りまだ若そう。短編やドキュメンタリーで経験を積んだんだとか。この先も楽しみ。期待したい。

 演出もさることながら、配役も見事。それぞれの役にピッタリはまっている感じ。特にヤクザのボスを演じたチョン・マンシクは恐かった。美人女優2人とも脱いでるし、本作が劇場長編デビュー作といういわば新人監督のために、ここまでやるんだなあ。良い作品になると確信していたんだろうか。そして大傑作「デイジー」(Deiji・2006・韓)やウェスタン調アクション「グッド・バッド・ウィアード」(Joheunnom nabbeunnom isanghannom・2008・韓)などの2枚目のチョン・ウソンが意外な役回り。この役に使うか。

 エンド・タイトルというか、エンド・ロールもなかなかしゃれたデザイン。ソウル・バス的な雰囲気。黒バックに白だがちのような滴りが落ちて、それが一筆書きのように人物の似顔を描いて行くというオシャレさ。カッコいい。監督の関わりもあるのだろうか。デザイナーはセンスのある人だと思う。

 基本、凶器は刃物だけで、それがまた恐ろしい。ただこの監督、銃が出てくる物語はどう描くのか、見てみたくなった。

 公開3日目の初回、品川の劇場は全席指定で、2日前にネットで確保。当日は10分前に開場。スクリーンはビスタ・フルで開いており、観客層はやはり中高年。ファミリー層が多い劇場なので、こういう作品は入りが少なめ。おかげでゆったり見ることができる。最初は6人いて中年くらいの女性が2人。その後若い人もきて、最終的にはゆったり122席に15人くらいの入り。女性は6〜7人。チョン・ウソンのファンか?

 明るくてよく見えないCM・予告の途中でマナーがあって、予告の続きから上下マスクの映画泥棒、暗くなって、映倫から本編へ。


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