2021年3月6日(土)「ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実」

THE LAST FULL MEASURE・2019・米・1時間56分

日本語字幕:丸ゴシック体下、岡田壮平/シネスコ・サイズ(表記無し、IMDbでは2.39、Arri、Red)/音響表記なし(公式サイトでは5.1ch)
(米R指定)

監督・脚本:トッド・ロビンソン
撮影:バイロン・ワーナー
出演:セバスチャン・スタン、
   ウィリアム・ハート、
   クリストファー・プラマー、
   エド・ハリス、ピーター・フォンダ、
   サミュエル・L・ジャクソン、ほか

公式サイト
https://thelastfullmeasure.ayapro.ne.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

1999年、アメリカ、国防総省空軍省の官僚、スコット・ハフマン(セバスチャン・スタン)は、空軍省長官ピーターズ(ライナス・ローチ)が家族との時間を取りたいと辞任するとことを知る。そんな時、ベトナム戦争の英雄、パラメディック(落下傘救助部隊)のウィリアム・ピッツェンバーグ(ジェレミー・アーヴァイン)に最高章である名誉勲章を授与する案件を調査することになる。ハフマンは通常、この手の調査が数年かかることを知っていて、長官の辞任によって数ヶ月で自分も任を解かれることから、途中で次の担当者に引き継ぐことになるため気が進まなかった。しかし陳情に来たタリー曹長(ウィリアム・ハート)がトイレで直接長官に話したことから、関係者の証言を集めることになる。

77点

前へ一覧へ次へ
 感動した。あやうく涙が出そうに。IMDbでは6.8点と言う評価。アメリカはとてつもなくヘンなヤツもいれば、とてつもなく凄い高潔な人もいる。振り幅が大きい。自らの命を投げ出して、たくさんの命を救った戦争の英雄。そして、戦争なんてしなければ、こんな悲劇も生まれなかったのにとも思わされる。日本人的には分かりにくいが、特にベトナム戦争は、帰還兵が「ベイビー・キラー」などと呼ばれて侮蔑されたこともあったそうで(映画の中でも言っている)、英雄的な行為が埋もれやすかったらしい。

 誰もがベトナムで麻薬をやっておかしくなって、虐殺をしたわけじゃない。そんなことは当たり前だが、あらためてそのことに気付かせてくれる。特に日本ではベトナム戦争のことはわかりにくい。しかしアメリカでも、多くの人がベトナム戦争後の生まれで、ベトナム戦争のことを知らないと。それで最近ベトナム戦争を描いた映画が多くなってきたのか。

 過去の映画では、ジョン・ウェインの「グリーン・ベレー」(The Green Berets・1968・米)や、「プラトーン」(Platoon・1986・米/英)、「ハンバーガー・ヒル」(Hamburger Hill・1987・米)、「ディア・ハンター」(The Deer Hunter・1978・米)、「地獄の黙示録」(Apocalypse Now・1979・米)などがすぐ思い付くあたり。「ランボー」(First Blood・1982・米)も帰還兵を描いたベトナム映画か。その後に「グッドモーニング、ベトナム」(Good Morning, Vietnam・1987・米)や「フルメタル・ジャケット」(Full Metal Jacket・1987・英/米)、「カジュアリティーズ」(Casualties of War・1989・米)、「7月4日に生まれて」(Born on the Fourth of July・1989・米)などがあり、最近だとオーストラリアの「デンジャー・クロース 極限着弾」(Danger Close: The Battle of Long Tan・2019・豪)あたりか。韓国映画でも「ホワイト・バッジ」(Hayan chonjaeng・1992・韓)があったなあ。

 うまいのは、調査に当たることになる主人公のスコット・ハフマンとともに観客も徐々に英雄の真実を知ることになるという構成。主人公と同じ驚き、感動などを、同時に感じて行くことになる。そして勲章をあげたいと思うようになる。

 ベテランの名優たちが結集していることも見逃せない。クリストファー・プラマーは父親役だが、ほかは皆帰還兵を演じている。すごい顔ぶれ。しかも皆さんかなりお歳を召されている。それまたショッキング。特にピーター・フォンダは2019年に亡くなっていて、本作が遺作となっている。エンド・ロールの直前にピーター・フォンダに捧ぐと出る。

 監督・脚本はトッド・ロビンソン。TVの脚本家からキャリアをスタートさせたようで、リドリー・スコット監督の海難事故映画「白い嵐」(White Squall・1996・米/英)の脚本を書いているらしい。その後、監督も手掛けるようになったようだが、残念ながらどれも見ていない。公式サイトによれば、別プロジェクトのリサーチ中に本作の英雄ウィリアム・ピッツェンバーグのことを知り、映画化したという。

 戦闘シーンは恐ろしい。サラウンドで弾丸が頭上を飛び交う感じや、回りで着弾する感じを再現している。発射音だけじゃない。しかもその銃声は大きく、砲弾の爆発も体に響く感じ。恐い。撃たれれば血しぶきが飛ぶし、腸がはみ出たりしてかなり残酷でグロテスク。これで日本ではG指定?

 銃は、M16、M16A1(20連マガジン)、M60マシンガン、AK47、M870らしいポンプ・ショットガン、1911オートなど。

 タイトルの「The Last Full Measure」とは、公式サイトによるとリンカーン大統領のゲティスバーグでの演説の一節で、名誉ある戦死者たちが「最後の全力を尽くして」身命を捧げたと言っているのだそう。そういう意味だったのか。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、2日前にネットで確保。当日は30分前くらいに劇場が開くということで、20分前くらいについてセルフで券を発行し、トイレに行ってから場内へ。ポストカードをもらったが、昔からこれはありがたいという人がいるのだろうかと。最初17〜18人いて、観客層はわりと若い人から中高年まで幅広かった。女性は7〜8人。最終的には指定席なしの333席に50人くらいの入り。男女比は6対4くらいで意外と女性も多かった。

 スクリーンはビスタで開いており、予告無しの本編からスタートとの案内。公式サイトにもそう書いてあったが、実際には4本ほどの予告があり、マスクのマナーからスクリーンが左右に広がってかなり横長な印象のシネスコになって暗くなり、足元注意、フルサイズの映画泥棒、映倫から本編へ。

 それにしても昭和な劇場で、スクリーンも暗いし、客席はフラットで前の席に人が座ったらスクリーンが見えにくくなるのは確実、トイレも暗くてじめじめした感じで入りたくもない。結局、終わった後、別のビルで用を足した。まだこんな劇場が残っているなんて。てっきり改装したと思っていた。デジタルには対応しているのだろうか。いや、していないと今どき上映できないかも。音は割と良かったし、ちゃんと回っていたし。でも同じ料金でこの居心地の悪さ。スクリーンの1つは大きいんだけどなあ……。


前へ一覧へ次へ