2021年4月17日(土)「砕け散るところを見せてあげる」

2020・LDH JAPAN、イオンエンターテイメント、ローソン・2時間07分

シネスコ・サイズ(表記なし)/音響表記なし(ドルビー・デジタル?)
(日PG12指定)

監督・脚本・編集:SUBU
原作:竹宮ゆゆこ『砕け散るところを見せてあげる』
   (新潮文庫nex)
撮影:江崎朋生
出演:中川大志、石井杏奈、
   北村匠海、原田知世、
   矢田亜希子、堤 真一、ほか

公式サイト
https://kudakechiru.jp
(全国の劇場リストもあり)

高校3年生の濱田清澄(はまだきよすみ、中川大志)は、ある日、遅刻したことで1年生の女子、蔵本玻璃(くらもとはり、石井杏奈)が学年全体から激しいイジメを受けていることを知る。人一倍正義感の強い清澄は、放っておけず救いの手を差し伸べると、コミュニケーションの取り方が下手だが普通の女子高生であることがわかり、徐々に心引かれて行く。ところが、彼女は家庭に問題があった。

84点

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 とにかくタイトルのインパクトが凄い。これだけでドキドキしてしまう。本当にヤバイ感じ。悲惨とかせつない感じしかしない。だから、最初はタイトルから、女子高生の青春もやもやストーリーかと思い、見ない気でいた。ところが予告編を見て、ちょっと違うぞと。ひょっとしたらミステリーなのかもと。それで見ることにしたら、面白かった。楽しい映画ではないが感情を揺さぶられ、感動した。見て良かった。

 強烈な物語。リアルに描かれた陰湿なイジメと家庭内暴力と、青春さわやかストーリーと、「ゼブラーマン」(2003・日)的なコミカル・ヒーローものをミックスというか、融合させた。主人公は高校生なのに、血まみれ。

 たぶんエンディングは観客の判断に任せるということなのだろう。悲しいもの、割とハッピー・エンド寄り、その中間…… たぶん多くの人はヒロインの玻璃に幸せになって欲しいと思うだろう。でも結末をどう判断するか。たぶん安直な結末にはしたくなかったのだろう。でも全体にリアルで悲惨な話なので、ラストはファンタジーでも良いのではないのかなあ。

 長いカットでじっくり描かれた高校生活におけるイジメ・シーンは本当にリアルで、観客がイジメを受けているような気分になる。どうしてこんなことが行われるのか。許されてしまうのか。冗談だよ、ギャグだよという言い訳が出てくるが、やはりお下劣なお笑い番組の影響は大きいと思う。ドッキリものとかの影響もあるんじゃないかなあ。あれを良しとし、笑い飛ばしてしまう。

 とにかく脚本が見事で、作り物ではない生きたリアルなセリフはグサグサ刺さってくる。しかも悲惨な話に笑えるギャグを巧妙に組み込み、さわやかさも、ノスタルジーも、ヒーローものの面白さも感じさせると言う素晴らしさ。原作が読みたくなる。そこに見事な配役と、見事な演技、そして見事な演出と、楽しい映画ではないが映画としてのレベル、完成度が高い。画にも力がある。タイトル文字もすばらしいし、特撮的パートのSFXもかなり本気。

 素晴らしいのが中川大志と石井杏奈の2人。中川大志というとボク的にはauのCMの細かすぎだよ細杉クン。神木隆之介と松本穂香の3人によるコミカルなCMでとても印象が良かったが、本作でもとぼけたさわやかな感じと、正義感の強い感じが良い。これを嫌らしくなく自然に演じられるところが、主人公の資質を持っているということか。石井杏奈は「ホムンクルス」(2021・日)にも女子高生で出ていたが、ボク的にはJTのCMの女の子のイメージが強い。そういえば「ソロモンの偽証」(2015・日)でもいじめられる女子高生を演じていたなあ。そして堤 真一はめちゃくちゃ、恐い。

 監督は、俳優でもあるSABU。話題となった「弾丸ランナー」(1996・日)から監督・脚本業に進出。ボクはそれを見逃したが、どうにか傑作「MONDY マンデー」(1999・日)から見ることが出来た。素晴らしい才能。堤 真一は初監督作品から出ているが、特に「MONDY マンデー」は良かった。ボクが堤 真一がいいなあと思ったのは「MONDY マンデー」から。そして本作の前に見たのが、残念だった「天の茶助」(2015・日)。共通しているのはユニークということだろうか。たぶん、この人はハマるとスゴイ。だから大きな予算で撮って欲しい。

 公開9日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、2日前にネットで確保。当日は15分くらい前に開場。しかし上の階なので、エスカレーターで移動すると5分くらいは掛かるので、だいたいCM・予告が始まっている。観客層はなぜかほぼ高齢者。SUBU監督の古くからのファンだろうか。最終的には127席に30人くらいの入り。女性はオバさんという感じの人が7〜8人、若い女性が1人か2人。もっと広い世代がもっといっぱい入ってもいい映画なのに。特に若い人には見て欲しい感じも。高寄りの人はノスタルジーを感じられる作品かも。見るべし!

 スクリーンはシネスコで開いており、CM・予告の途中で半暗になり、映画泥棒、映倫、ドルビー・シネマがあって再び予告が続き、映写機のマスクが左右に広がって暗くなり、マナーから本編へ。


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