監督:三木孝浩 原作:ロバート・A・ハインライン(著) 『夏への扉』福島正実(訳)(ハヤカワ文庫刊) 脚本:菅野友恵 撮影:小宮山 充 出演:山阜ォ人、清原果耶、 夏菜、眞島秀和、 田口トモロヲ、原田泰造、 藤木直人、ほか |
1995年、若き科学者の高倉宗一郎(たかくらそういちろう、山阜ォ人)は、相棒の猫ピートと暮らしながら、亡き養父、松下の娘、璃子(リコ、清原果耶)に時々食事を作ってもらったりしながら、人に寄り添う家庭用ロボットの開発を進めていた。しかし信じていた人たちにだまされ、全てを奪われた上、冷凍睡眠させられてしまう。
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面白かった。トンデモな話ではあるが、SFならではの意外な展開とどんでん返し。うまくできた話。なかなか充実した118分。低予算ではあるようで、あまりSF的なガジェットとか、装置、家とか車とかロボットとか景色なんてものは出てこない。アンドロイドはほぼ人間だし、せいぜい時間転移装置とかコールドスリープのポッドが出てくるくらい。ようはロボットだとかSF的なものは舞台装置で、描かれているのは家族愛からの男女間の「愛」だと。そこがまっすぐで、ピュアで、イイ。横やりは歪んでいるが。 展開はよくあるタイムトラベルものとちょっと違う。結果的には同じなのだが、順番が違う。たいていは先にいろんな伏線をちりばめておいて、後半でそれを回収してカタルシスのようなものを感じさせてくれるわけだが、本作はそれを逆手にとるように展開する。うまいなあ。 絵は、ちょっと全体に色が浅い感じもあったが、そういうシーンでも出るべき色はしっかり出ていて、かなり高画質。ちゃんとていねいに撮られている。ただ、タイム・リープ的な部分は、装置は昔のハリウッド的な感じもあり、トラベル自体はほとんど「ターミネーター」(The Terminator・1984・英/米)的なのは、オマージュだろうか。裸じゃないけど。博士は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(Back to the Future・1985・米)のドク的か。 残念なのは、予算のせいかSF感があまりないのと、ギャグがたくさんある割に仕掛けがよくないのか、あまり笑えないこと。とてももったいない感じ。ちょっとした工夫ではないかと思うが。 もちろん山阜ォ人と清原果耶はいい感じだが、夏菜がやっはり凄い。きれいに撮れているし、美人はこういう役がハマる。しかも特殊メイクによる本人の演技だと思うが、未来の姿がまた凄い。ボクは最初、渡辺直美が演じているのかと思った。特殊メイクで顔を似せているのかなと。でも、違うよね……? そして出演シーンは短いが、在日ファンクの浜野謙太が良い。ピッタリはまっている。 脚本は菅野友恵。「時をかける少女」(2010・日)や「陽だまりの彼女」(2013・日)、最近だと「浅田家!」(2019日・)などの脚本を手掛けている。たぶんピッタリの人選。 監督は三木孝浩。ミュージック・ビデオの監督から「ソラニン」(2010・日)で長編監督デビュー。ボクが見た作品だと「フォルトゥナの瞳」(2018・日)などを手掛けている。次回作も期待かも。ミステリーとかSFなんかだと良いが、日本はSF少ないからなあ。 公開3日目の初回、少しでも大きいスクリーンを求めて日比谷の劇場をチョイス。2日前にネットで確保し、当日は17〜18分前に開場。ただこの日はどのスクリーンも混んでおらず、黄色表示もほぼなし。最終的には151席に25人くらいで、女性は6人ほど。若い人から中高年まで、年齢層は幅広かった。もっと入っていい映画だし、SFでももっと女性が入っていい映画だと思う。見ないなんてもったいない。 10分前くらいからシネマ・チャンネルがあり、マスク注意のあと半暗になって、CM・予告、暗くなって、映写機の左右マスクのまま、まぶしい足元注意、枠付きの映画泥棒、映倫と続いて、本編へ。 |