2021年7月10日(土)「ブラック・ウィドウ」

BLACK WIDOW・2021・米・2時間13分

日本語字幕:丸ゴシック体下、林 完治/シネスコ・サイズ(Dolby Vision、IMAX、Panavision、IMDbでは2.39)/ドルビーATMOS(IMDbではドルビー・デジタル、IMAX 6-Track、dts:Xも)
(米PG-13指定)(IMAX版、4D上映もあり)

監督:ケイト・ショートランド
製作総指揮:スカーレット・ヨハンソン
脚本:エリック・ピアソン
撮影:ガブリエル・ベリスタイン
出演:スカーレット・ヨハンソン、
   フローレンス・ピュー、
   レイチェル・ワイズ、
   デヴィッド・ハーバー、ほか

公式サイト
https://marvel.disney.co.jp/movie/blackwidow.html
(全国の劇場リストもあり)

ブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフ(スカーレット・ヨハンソン)の妹エレーナ(フローレンス・ピュー)は、極秘スパイ養成機関レッドルームで特殊訓練を受けた優秀な暗殺者ウィドウだったが、脱走ウィドウを追跡中、謎の赤い粉末の薬品を浴びせられ、自分がマインド・コントロールされていたことを自覚、残りの薬瓶を持って姿を消す。その頃、ナターシャは、ロス長官(ウィリアム・ハート)の追跡の手を逃れ、ハンガリーのブダペストで身を潜めることにする。すると部屋の荷物の中に、赤い薬品の入った見慣れないケースがあることに気付く。そしてレッドルーム最強の暗殺者、相手の動きを完全にコピーできるタスク・マスター(オルガ・キュリレンコ)が現れ、薬品を奪おうとする。

76点

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 良かった。見ごたえある1本。クォリティが高い、そんな印象。待った甲斐があった。「アベンジャーズ」は「アベンジャーズ」で良いのだが、ボクなんかには「アベンジャーズ」シリーズより良かった気がする。例えるなら「スター・ウォーズ」シリーズの中の番外編「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」(Rogue One・2016・米)的な感じか。もちろん姉妹編というべきか「ブラックパンサー」(Black Panther・2016・米/南ア)的な感じもした。そしてお金も掛かっていて、実に贅沢な映画という気も。これこそ大きなスクリーンで見るべき作品。

 トンデモ話ではあるけれど、それをあまり感じさせず、家族愛をテーマに007バリのスパイ活劇を見事に構築して見せたという感じ。ほどよいギャグと、かなりエグいバイオレンス表現。子供向けとは言えない気もするが、バランスが取れていて多くの人が楽しめるのではないだろうか。

 しっかりとした作りのスパイ・アクションで、演出に男性っぽいものを感じさせるが、何と監督はケイト・ショートランドという53歳のオーストラリア生まれの女性というのだから驚かされる。もう性別なんて関係ない。センスの良さが光っている。そして感じたのは、007映画を参考に、映画を構築して行ったのではないか、ということ。まずアバンで1つのミッション「敵地からの脱出」を見せておき、ついで本筋のミッションへと入って行く。世界を股にかけて、徐々に謎を解き、敵のボスを追い詰めて行ったら、ラストには秘密基地へ乗り込んで、ボスをやっつけて、基地を木っ端みじんにして脱出する。007のパターン。それに、劇中のTV画面には「007/ムーンレイカー」(Moonraker・1979・英/仏)が映っていたりする!

 当然、主役のスカーレット・ヨハンソンはいい。これだけのアクションをこなすのはとても大変だと思う。アクションしながら演技もしているわけで、素晴らしい才能と努力のたまものか。感情が良く伝わってくる。片膝付く着地ポーズが自虐ギャグのネタになっていて、そこがまた面白い。スカーレット・ヨハンソンが自虐ネタなんて! 製作総指揮をやっているだけのことはある。そして、もう1人輝いていたのが、妹のエレーナを演じたフローレンス・ピュー。ロシア人っぽい感じだったが実際にはイギリス生まれ。話題になった「レディ・マクベス」(Lady Macbeth・2016・英)で劇場映画デビューしたそう。ボクが見たのは「トレイン・ミッション」(The Commuter・2018・米/英ほか)くらいか。最近「ミッドサマー」(Midsommar・2019・米/スウェーデン)に出ていたらしいが、A24だし、劇場が小さくて見に行かなかった。

  銃は、父アレクセイがミニ14、ロシアの兵士たちはAK47、マカロフを使用。モロッコの女スナイパーはサプレッサー付きL96A1らしいライフル。ナターシャが隠しているピストルはH&KのP30、襲ってくるバイクの女はシュタイアーTMP、現代のロシア兵はAK74、デュシーカ重機関銃、母メリーナが使うスナイパー・ライフルはブレイザーR93。レッドルームの護衛たちはCZスコーピオン、ナターシャはもちろんグロックの2挺拳銃でも登場。

 音も良く回っていて、映像も立体的に獲られているので、IMAX版や4D上映はより楽しめるのではないだろうか。

 大変残念なのは、ネット公開と劇場公開がほぼ同時ということ。新型コロナのことがあるとしても、ちょっとなあ。劇場まで足を運ぶ人のアドバンテージが欲しかった気はする。まさか、映画が好きでも何でもない経営エグゼクティブの決定じゃないよなあ。そういう会社って、どんな分野でもだいたいダメになるパターンだけど……。

 公開2日目の初回、池袋の劇場は全席指定で、2日前にネットで確保。当日は20分前くらいに開場。観客層は若い人から中高年まで幅広かったが、メインは若い人たち。男女比は、最初7対3くらいで男性が多かったが、その後、女性も増えて最終的には6対4くらいになったか。下は中学の1年生くらいからいた。381席のフルに、たぶん9割くらいの入り。さすが話題作。

 スクリーンは幕なしのフルサイズで、予告の途中でマナーがあって半暗になり、枠付き映画泥棒のあとまた予告が続き、今後公開されるマーベル・ユニバースの作品群の告知。2023年まで続々とある。暗くなって、映写機のマスクが左右に広がってフル・サイズになり、本編へ。

 池袋の新しい劇場は、きれいでとても良い雰囲気だ(かつての池袋の劇場のイメージはない!)が、見たスクリーンはややスクリーンの位置が低いようで、せっかくスタジアム形式なのに前列の頭が気になった。ぎりぎりの線。そしてイスが海外仕様なのか、チビのボクには座面がちょっと高く、深く座ると足が浮く感じで落ち着かなかった。しかも硬めで尻が痛くなった。またトイレがオシャレすぎて、どににあるのかわかりにくかった。英語じゃなくピクトグラムで表示しろよなあ。高齢者や田舎者には優しくないかも。ただ、ここは厳格に整列退場で、横の列ごとに係員の指示で、順番に退場していた。この辺は素晴らしい。


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