原作・脚本・監督:細田 守 作画監督:青山浩行 美術監督:池 信孝 声の出演:中村佳穂、成田 凌、 染谷将太、玉城ティナ、 役所広司、佐藤 健、ほか |
高知の田舎の女子高校生、鈴(すず、声:中村佳穂)は、幼い頃に母を亡くし、父と2人で暮らしている。ある日、親友のヒロちゃん(声:幾多りら)に招待され、インターネット上の仮想世界「U」(ユー)に入り、As(アズ)と呼ばれる分身を作り、ベルと名付ける。すると、現実世界では声を出して歌えなかったはずが、Uでは歌うことができ、たちまちその歌は評判となり、人気者になって行く。そして大きなコンサートが開かれることになった日、会場に竜と呼ばれるAsが乱入してきてコンサートは中止となってしまう。竜は日ごろから粗暴で評判が悪かったため、現実世界では誰なのかという正体探しが世界各地で始まる。一方すずは竜の心に大きな傷があることを知り、その秘密を知りたいと近づくが……。
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感動した。素敵な物語。あやうく涙が出そうに。てっきり仮想世界での「美女と野獣」(Beauty and the Beast・1991・米)かと思いきや(細田作品がそんなはずはないが)、そこから描かれて行くのは、家族愛だったり、淡い恋だったり、兄弟愛だったり、ネットの心無い無責任な発言、正義を振りかざす人たちといった事柄。見る人によって刺さる部分は違ってくるのかもしれない。うまいなあ。「時をかける少女」(2006・日)と「サマーウォーズ」(2009・日)の雰囲気もある。 とにかく絵が良い。キャラクターの部分は普通だが、背景は大きなスクリーンでも緻密で写真のようなリアルさ。まさにアート作品。3D-CGも緻密で、豪華。仮想世界にあふれるキャラクターは50億という設定だからものすごく多く、ちゃんと1つ1つていねいに描かれている感じ。パレードの雰囲気は押井守監督の「イノセンス」(2004・日)だったかの豪華なパレートを彷彿とさせる。たぶんほかにも多くのオマージュのようなものが盛り込まれているのではないだろうか。話はちょっと「砕け散るところを見せてあげる」(2020・日)ともつながる気が。 最大のものが「美女と野獣」で、主人公のすずは仮想空間ではベル(Bell、Belle)とまったく同じ。竜は野獣で、お城に隠れすんでいて、ホールでのダンス・シーンまである。ジャスティンはガストン。お城のAIたちはルミエールたち使用人。 そして歌が素晴らしい。良い曲。歌うBellは、予告ではあまりピンと来なかったが、本編の中で見ると美人できれい。世界的なアイドルになって行くのが納得できる。ただ、ちょっと訛りがある感じで、これは高知の訛りなのだろうか。ほかのキャラクターにはなかった気がするが……。 リアルに恐いのは、ネット民の無責任なつぶやき。実に恐ろしい。誹謗、中傷、よってたかっての攻撃。リアルな感じで、リアルに恐い。ネットのダーク・サイド。悪意のない何気ない発言でも人を傷付けることがある。自分も気を付けなければ。 公開2日目の2回目、日比谷の劇場は全席指定で、2日前にネットで確保。当日は15分前くらいに会場。観客層は若い人から中高年まで幅広かった。下は親に連れられた小学校低学年くらいの子。男女比は女性のほうがやや多く、最初は半々くらいだったが4対6くらいになった。最終的には456席のコロナ座りでほぼすべてが埋まった。前列の11席のBOX席に3人くらい、後席の10席×2列のプレミアム席に8人くらいが座った。さすが話題作。 シネマ・チャンネルのあと半暗になり、CM・予告から非常口案内、ドラえもんマナーをはさみつつ、マナー、忘れもの注意のあと映写機のマスクが左右に広がり、暗くなってTCXのデモ、まぶしい足元注意、フル・サイズの映画泥棒、映倫と続いて、東宝ロゴから本編へ。 |