2021年7月31日(土)「ジャングル・クルーズ」

JUNGLE CRUISE・2020・米・2時間07分

日本語字幕:丸ゴシック体下、風間綾平/シネスコ・サイズ(in Panavision、ALEXA、IMAX、ドルビーVISION、IMDbでは2.39)/ドルビーATMOS(IMDbではIMAX 6-Trackも)
(米PG-13指定)(日本語吹替版、ATMOS上映、4D上映、IMAX版もあり)

監督:ジャウマ・コレット=セラ
脚本:マイケル・グリーン、
   グレン・フィカーラ、
   ジョン・レクア
撮影:フラビオ・ラビアーノ
出演:ドウェイン・ジョンソン(製作)、
   エミリー・ブラント、
   ジャック・ホワイトホール、
   エドガー・ラミレス、
   ポール・ジアマッティ、ほか

公式サイト
https://www.disney.co.jp/movie/junglecruise.html
(全国の劇場リストもあり)

1916年、イギリス、ロンドン。アマゾンの奥地にあるという、すべての人類を病から救うパワーを持つ奇跡の花の伝説を信じるリリー・ホートン博士(エミリー・ブラント)は、弟のマクレガー(ジャック・ホワイトホール)と組んで、王立人類学協会から謎を解く手がかりになると思われる400年前のアギーレ探検隊が手に入れたとされる矢じりを盗み出す。そしてアマゾンへと渡ると、その矢じりがあったと思われるクリスタルの涙と呼ばれる場所まで川をさかのぼって連れて行ってくれる船長を探すことに。そこに観光客相手にインチキなクルーズ・ツアーをやっているフランク船長(ドウェイン・ジョンソン)が現れる。同じ頃、ドイツのヨアヒム王子(ジェシー・プレモンス)も花の伝説を追って、潜水艦でアマゾンに到着していた。

76点

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 面白かった。見て良かった。素晴らしいアドベンチャー映画。荒唐無稽にはちがいないが、そこをあまり感じさせない作り方。時に恐ろしく、時に不気味で、時に愉快に、時にラブ・ロマンスで、とにかく楽しませてくれる。しかも奇をてらったような手法ではなく、正々堂々たる、正統派の冒険映画。そこがいい。特殊効果も素晴らしく、音響も包まれるように立体的。これはぜひ劇場で観ないと。それにしても、次からディズニー・ランドのジャングル・クルーズに乗ったら、船長をそういう目で見ちゃうなあ。ダジャレ好きの元航海図技師なのかなあと。

 終わって出て行く時、若い女性二人の会話が聞こえてきて「面白かった」「猫、かわいかったね」だそう。うん、同意。3D-CGでリアルな生き物を作る時、度を過ぎないことが大切だということだろう。

 雰囲気は、昔良く作られた「80日間世界一周」(Around the World in 80 Days・1956・米)とか「タイムマシン/80万年後の世界へ」(The Time Machine・1960・米)系の冒険もの。協会とか学会とかに自分の説を認めさせるため、ロンドン(なぜか、たいてい起点はイギリスのロンドン)から、アマゾンやアフリカなどの未開の地へと旅立つというもの。貴族の生活と未開の地とのギャップや、首狩り族とか、呪いとか、猛獣、怪魚、モンスターなどが次々襲ってくる。パターンながら、良くできていて、楽しめた。

 あえていえば、「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」(Raiders of the Lost Ark・1981・米)の女版インディ・ジョーンズで、「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」(Pirates of the Caribbean: The Curse of the Black Pearl・2003・米)や「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」(The Mummy・1999・米/英/モロッコ)の良いところを取り込んだと。「ナイルの宝石」(The Jewel of the Nile・1985・米)もあるか。原住民の樹上の部落は「スター・ウォーズ/ジェダイの復讐」(Star Wars: Return of the Jedi・1983・米/英)のイウォーク族みたいだったし。全体にハンフリー・ボガートの「アフリカの女王」(The African Queen・1951・英/米)にも似ているかも。

 また景観が見事。1916年当時のロンドンの市街とか、アマゾンのジャングルに広がる街などが実にリアルで、スケールが大きく、おそらくは3D-CGなんだろうけれど、とにかく素晴らしい。そしてそこかしこに3D向けらしい飛び出る設定があったようだが、日本では3D上映はないようなので、4D上映で飛び出るのか。音響的にはATMOS上映で見たのだが、たいして特筆すべき効果は感じられなかった。たぶん、これはノーマル上映と聞き比べてみないとわからないレベル。そういうものにお金を出す価値はあるのか。ボクはATMOS上映の方が大きなスクリーンなのと、上映時間の都合で選んでいるだけ。

 ただ、水中の口移しで空気をあげられるものなんだろうか。呼気って二酸化炭素なのでは? 口にためた空気をあげた? ウソ臭いなあ。

 エミリー・ブラントは「ボーダーライン」(Sicario・2015・米/メキシコ/香)のようにハード・アクションもこなせる名女優だが、本作のような作品が向いているような気がする。先日公開された「クワイエット・プレイス 破られた沈黙」(A Quiet Place Part II・2020・米)よりずっと輝いていた気がする。そして気になったのは、弟を演じていたジャック・ホワイトホール。イギリスのTVの人で、映画では残念だった「くるみ割り人形と秘密の王国」(The Nutcracker and the Four Realms・2018・米/加)に出ていたらしい。本作では良い味を出している。今後の活躍を注目したい。もう1人、ドイツのヨアヒム王子を演じたジェシー・プレモンスも良かった。独特のオタク的雰囲気。この味はなかなか出せないのでは。TVが多い人だが、映画も結構出ていて、スピルバーグの「ブリッジ・オブ・スパイ」(Bridge of Spies・2015・米/独/印)とか、久々の西部劇で感動した「荒野の誓い」(Hostiles・2017・米)とか、最近だと「エルカミーノ:ブレイキング・バッド THE MOVIE」(El Camino: A Breaking Bad Movie・2019・米)にも出ている。かなり恐い役だったと思うが、本作のような作品のほうが光るかも。

 脚本のマイケル・グリーンは「ブレードランナー2049」(Blade Runner 2049・2017・米/英/加ほか)や「オリエント急行殺人事件」(Murder on the Orient Express・2017・マルタ/米/英)を手掛けた人。ただ過去に残念な「グリーン・ランタン」(Green Lantern・2011・米)も手掛けているが……。グレン・フィカーラはジョン・レクアと組んで「キャッツ&ドッグス」(Cats & Dogs・2001・米/豪)の脚本やウィル・スミスの「フォーカス」(Focus・2015・米/アルゼンチン)の脚本・監督をやっている。

 監督はジャウマ・コレット=セラ。スペインの人で、スプラッター系のリメイク・ホラー「蝋人形の館」(House of Wax・2005・豪/米)で長編映画監督デビューし、後味の悪さで有名な「エスター」(Orphan・2009・米/加/独/仏)も撮っているが、面白かったリーアム・ニーソンのアクション「アンノウン」(Unknown・2011・英/独/仏/米)や「フライト・ゲーム」(Non-Stop・2014・英/仏/米/加)、「ラン・オールナイト」( Run All Night・2015・米)、「トレイン・コッション」(The Commuter・2018・米/英/仏/中/加/西)を撮っているし、ほぼブレイク・ライブリーの1人芝居のサバイバル・ホラー「ロスト・バケーション」(The Shallows・2016・米)も撮っている。スペインの監督というとついホラーを想像してしまうが、アクション系で実力を発揮する人のようだ。

 銃は、スキッパー=船長が持っているのが、ディズニーランドの設定と同じ4インチくらいのリボルバー。潜水艦の二連マシンガンはスパンダウのLMG 08/15のように見えた。ドイツ軍はモーゼルC96ピストル、モーゼル98系ライフル、ウィンチェスター1897らしいショットガンなど。

 公開3日目、池袋のATMOS上映初回、全席指定で2日前にネットで確保。当日は着いた時点で「売り切れ間近」の表示。15分前くらいに開場となり場内へ。ここは新しい劇場でイスが上等なのか、座ると深く沈み込むため、スクリーンが低いこともあって全席の頭がちょっと気になる。背もたれも倒れ気味。しかも壊れていたのかちょっと動くとギシギシきしむ。いかんなあ。まあスクリーンの見え具合に関しては、現在はコロナ座りなのでどの席でも安心して座れるが。観客層は若い人から中高年まで幅広かったものの、メインは若い人。男女比は4.5対5.5くらいで女性のほうがやや多い感じ。この辺はディズニーランド・ファンとも関係しているのかもしれない。最終的に235席のコロナ座りはほぼ満席で、10席×1列のプレミアム席は3人ほどが座った。

 スクリーンは1対2.0くらいで開いており、ビスタの予告もちょっとの左右マスクで上映。CM・予告の途中で半暗になり、枠付きの映画泥棒、映倫があり、再び予告が続き、整列退場の告知から暗くなって、BESTIAシアターのデモ、ドルビーATMOSのデモのあと、映写機の上下マスクで本編へ。


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