2021年8月29日(日)「鳩の撃退法」

2021・製作:「鳩の撃退法」・製作委員会/製作幹事:松竹、電通・1時間58分

シネスコ・サイズ(ALEXA)/音響表記なし
(一部日本語字幕付き上映もあり、『HELLO! MOVIE』方式に対応した視覚障害者用音声ガイド・聴覚障害者用日本語字幕付き)

監督:タカハタ秀太
原作:佐藤正午「鳩の撃退法」(小学館刊)
脚本:藤井清美、タカハタ秀太
撮影:板倉陽子
出演:藤原竜也、土屋太鳳、
   風間俊介、西野七瀬、
   豊川悦司、ほか

公式サイト
https://movies.shochiku.co.jp/hatogeki-eiga/
(全国の劇場リストもあり)

今は、富山でデリヘルの送迎をやっている運転手の津田伸一(つだしんいち、藤原竜也)は、かつては直木賞を受賞したこともある小説家。ある日、深夜営業の喫茶店で本好きな男、幸地秀吉(こうちひでよし、風間俊介)と知り合うが、その日を最後に一家揃って失踪してしまう。そしてデリヘル嬢の加賀まりこ(かがまりこ、桜井ユキ)から知り合いを送ってと言われ、行くと愛人らしい男、郵便局員の晴山次郎(はるやまじろう、柿澤勇人)がいて、送って行くと別な女が待っていて浮気していることがわかる。しばらくして、津田がよく通っていた古本屋「房州書店」の主人(ミッキー・カーチス)が亡くなり、津田は遺品としてナンバー・ロックの掛かったキャリー・バッグをもらい受ける。そして、そのバッグを開けてみると、中には3,000万円の現金が入っていた。

74点

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 予告とはだいぶ違ったが、面白かった。特に大きな事件も起きず、直接、警察が登場することもなく、実に小さな出来事が重ねられていって、ラストにそれらがつながって全体の事件が明らかになるというような構成。そういうことだったのか、という驚きはあるが、冒頭に強烈なツカミがあるわけでもなく、最初はのめり込み度が低く、集中するのも大変だった。小説としてはとても面白そうだが、映画としてその辺がどうか。

 原作は読んでいないのでわからないが、脚本が素晴らしく、ギャグがたくさん折り込まれた会話、セリフが良い。リアルだし、言いそうだし、実際笑える。ボクが気に入ったのは喫茶店(カフェ?)のウエイトレスが「沼本」と書いて「ぬもと」と読むというやつ。主人公はわざと「ぬのもと」と言い続け、ウエイトレスはその度に「ぬもとです」とツっこむ。そしてほかの人の時には訂正しないので「訂正しろよ」と文句を言う。オモシロイ! ウエイトレスを演じた元乃木坂46の西野七瀬、イイ。また、ギャグとは正反対のヤクザを演じた駿河太郎も良かった。セリフはほとんどなくても、いるだけで恐かった。

 そして底流に流れる恐い感じ。何か邪悪なものがいるような、良くないことが起きそうな感じが、ずっと薄く流れている。大したことが起きないのに、恐い。その雰囲気、演出、演技も見事。俳優陣もみな光っていた。

 予告では、主人公の小説家が書いたことが現実になっていくという菅田将暉の「キャラクター」(2021・日)的な展開を予想させるものだった。実際は、書いたことが真実なのか、創作なのかということだった。狙ったミスリーディングか。

 脚本は藤井清美。傑作「るろうに剣心」(2012・日)シリーズや、猟奇加減が強烈だった「ミュージアム」(2016・日)などを書いている。納得。どちらも大友啓史監督作品だ。

 監督は脚本も手掛けた富山県出身のタカハタ秀太。それで舞台が富山? TVが多いようで、映画では見ていないが草なぎ剛の「ホテルビーナス」(2004・日)を監督している。公式サイトによれば、TVドラマ界の賞を総なめにしている人らしい。次作も期待したい。

 公開3日目の2回目、新宿の劇場は全席指定で3日前にネットで確保。当日は10分前くらいに開場。観客層は若い人から中高年まで幅広く、男女比は半々くらい。最終的には580席のコロナ座りに8.5割くらいの入り。さすが話題作。

 スクリーンはシネスコで開いており、明るくてスクリーンがよく見えない状態でCM・予告がスタート。途中で半暗というかほぼ暗になり、見やすくなってマスク注意が、映写機のマスクが左右に広がって暗くなり、マナーから本編へ。


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