2021年10月21日(木)「最後の決闘裁判」

THE LAST DUEL・2021・米/英・2時間33分(IMDbでは2時間32分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(by Panavision、ドルビーVISION。IMDbでは2.39、Arri ALEXA)/ドルビーATMOS
(米R指定、英18指定、日PG12指定)

監督:リドリー・スコット
原作:エリック・ジェイガ―「最後の決闘裁判」
   (栗木さつき訳、早川書房)
脚本:ニコール・ホロフセナー、
   ベン・アフレック、
   マット・デイモン
撮影:ダリウス・ウォルスキー
出演:マット・デイモン、
   アダム・ドライバー、
   ジョディ・カマー、
   ベン・アフレック、ほか

公式サイト
https://www.20thcenturystudios.jp/movies/kettosaiban
(情報少。全国の劇場リストもあり)

14世紀、フランス。地方の小貴族で従騎士のジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン)は、親友のジャック・ル・グリ(アダム・ドライバー)とともに王の軍で戦い、名を上げて行く。そして豊かな土地を持つ豪商の美しい娘マルグリット(ジョディ・カマー)と結婚するが、その土地は税金の滞納から王に取り上げられ、王のいとこの貴族ピエール侯(ベン・アフレック)に取り入ったジャックに与えられてしまう。そしてジャンが戦いに出かけている間に妻のマルグリットが暴行される。マルグリットは犯人がジャックだと訴えるが……。

76点

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 最初に「史実に基づく物語」と出る。ただ、フランスの物語だが全編英語。まっ、日本人的にはほとんど違和感はない。どちらも外国語だし、フランスでなくてもこんな話はあったのかなと思えるし、イギリスが舞台でもそのまま受け入れられるし。

 生きることがそれだけで大変だった中世の、貴族の物語。城をもって、近隣を支配する貴族であっても、王に仕える身で、それなりの贅沢はしていても貧しく、生きるために戦い続けなければならなかったと。それは男でも、女でも変わらなかった。貴族かどうかは別として、とにかくこんな厳しい時代をボクは生き抜けなかっただろうなと。

 弱肉強食のピラミッドの頂点に立つ王と取り巻きだけが裕福(のように見え)、後は皆のし上がり、取り入ることを画策しているような世の中。しかしその王もやがては革命で庶民に倒されることになるわけだが……。そんな過酷な世界がじっくりと描かれる。親友さえあっさり裏切ってくる世界。かなりショッキングで重い。絵もサウンドも物語も重厚。

 そして、この監督は1対1の対決で終わる物語が好きなようで、男女を問わず、たいていラストはタイマン勝負となる。もちろん本作もタイトル通り決闘で終わる。敗者が身ぐるみをはがされ、逆さでさらし者になるシーンはさらに衝撃的だ。

 ただ犯人はハッキリしており、ミステリー感はない。そして三部仕立てで、「夫の視点」、「容疑者の視点」、最後に「妻の視点」で描かれる。これは一見、大傑作「羅生門」(1950・日)のようだが、だいぶ違う。本作では視点が変わっても描かれる内容はほとんど同じ。「羅生門」のようなことにはならない。こういう構成にする必要はあったのだろうか。実話だから大どんでん返しがなかったとすれば、なおのことこの形式はないかなあと。

 マルグリットを演じたジョディ・カマーは、主にTVで活躍していて、「フリー・ガイ」( Free Guy・2021・米/加)で重要な役を演じて注目される。本作はその後のシリアスな役で、まったく印象が違う。さすが女優。やはり今後注目ということになりそうだ。

 銃は残念ながら出てこない。14世紀が舞台なので、まだ銃が登場していない。鎧を身に着け、剣と盾を持って戦う。最後の決闘は馬上槍試合、からの剣の戦い。やはりかなり悲惨な雰囲気が漂う。傑作痛快アクション「ROCK YOU![ロック・ユー!]」(A Knight's Tale・2001・米)でもじっくり描かれていたっけ。

 公開7日目の2回目、日比谷の劇場は全席指定で、2日前にネットで確保。当日は15分前くらいに開場。平日ということもあって、観客層はジジ、ババがメイン。そのこ大学生くらいの若い人がチラホラ。あとはこの日が定休日なのか、営業のサボりか、中年層も少し。まあ作品が中世ものということもあるのだろう。最終的には257席に60人くらいの入り。8席あったプレミアム席は5席ほど埋まった。平日なのにねえ。男女比は15人中2人が女性という感じ。

 CM・予告の途中で飲食OKとなり、半暗に。非常口ランプも消えて、CM・予告が続き、マナー、忘れ物注意から映写機のマスクが左右に広がり、フル・サイズなってまぶしい足元注意、映画泥棒、映倫があって本編へ。


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