2021年11月28日(日)「ディア・エヴァン・ハンセン」

DEAR EVAN HANSEN・2021・米・2時間18分(IMDbでは2時間17分)

日本語字幕:手書き風書体下、石田泰子/シネスコ・サイズ(Panavision。IMDbでは2.39、REd Monstro)/ドルビーATMOS(IMDbではドルビー・デジタル)
(米PG-13指定)

監督:スティーヴン・チョボスキー
脚本:スティーヴン・レヴェンソン
撮影:ブランドン・トゥロスト
出演:ベン・プラット、
   ケイトリン・デヴァー、
   ジュリアン・ムーア、
   エイミー・アダムス、ほか

公式サイト
https://deh-movie.jp
(全国の劇場リストもあり)

心に病を抱え、自分を巧く表現できず、他人とコミュニケーションを取るのが苦手な高校3年生のエヴァン・ハンセン(ベン・プラット)は、事故を起こすのが恐くて、車のキーを回す前からブレーキを踏んでしまうタイプ。セラピーを担当するシャーマン先生からは、自分宛に手紙を書くことを課題にされている。そんなセラピーを受けさせるため、シングル・マザーのハイディ(ジュリアン・ムーア)は、看護師の仕事でできるだけ多くのシフトを入れるようにしていたため、家を留守にしがちだった。そんなある日、いつものように1人孤立している学校で、心に大きな闇を抱えたトラブル・メーカーの同級生コナー(コルトン・ライアン)から、からかい半分で骨折した腕のギブスに、友人のようにサインされる。さらに、誤って印刷してしまった自分宛の手紙をコナーに奪われてしまう。ところが翌日、学校でコナーが自殺したことを知らされる。そしてコナーの両親はコナーのポケットにエヴァン宛の手紙が入っていたことから、遺書と勘違いし、エヴァンがコナーの唯一の親友だったと思い込んでしまう。エヴァンも自分が書いた手紙だとは言えず、つい親友だったとウソをついてしまう。

74点

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 うーむ、これはつらい話。やっぱりミュージカルというと、悲惨な話を明るい音楽とダンスで豪華に描くのが1つのパターンで、本作もそれ。実に重く深刻な話。だから解決はない。安直にめでたしめでたしとはできない。それではウソになってしまう。ラスト、字幕で「孤独を感じたら、相談に乗ってくれるところがあるから、連絡してください」というようなことが出る。あなたはひとりじゃないと。つまり、そういう悩みを抱えた人たちの物語。

 解決はなく、自分が起こしたことには自分で向き合っていくしかないと。これを普通の人が故意にやったのであれば、犯罪で、絶対に許されない。しかし心の問題を抱えた人が、善意からやってしまって、ちょっと調子に乗ってしまったら…… 当然楽しい結果は招かない。まあ考えてみれば、誰でも小さなウソはつくものだろう。ただ時々、平気でウソをつく人がいることも確か。人をだます気はなくても、本当のことを言わない人もいる。

 最初はあまり感情移入しにくい。むしろ気味が悪いくらい。なぜウソをついてしまうんだと。しかし、病気のことや主人公の置かれた状況から、理解できるようになっていって、実は明るく活発で何でもできるような子でも悩みを抱えていたり、周囲の期待に応えようと無理をしていることもあるんだとわかってくるあたりから、主人公のやったことが受け入れられるようになってきて、同情できるようになる。ところが、当初の予想どおり、ウソにウソを重ねれば重ねるほどついにはごまかし切れなくなり、破綻して真実を打ち明けざるを得なくなる。そのとき失うものの大きさは、最初に真実を話していた方がよほど小さいという、実に当たり前の結果。でもその時や、その当事者はそれがわからない。うむむ。

 1つ気になったのは、お母さん役のエイミー・アダムスの体型がだいぶ変わったようだけれど、これは役作り? それとも自然の変化? すごく小さくて可憐なイメージが…… たとえば「魔法にかけられて」(Enchanted・2007・米)とか。割と最近の「メッセージ」(Arrival・2016・米/加)も細かった気が。

 公開3日目の初回、銀座の劇場は全席指定で、2日前にネットで確保。当日は劇場自体が30分くらい前に開き、この作品は20分くらい前に開場。やはり若い人から中高年まで幅広く、男女比はほぼ半々。さすが話題作。最終的には456席のTCXスクリーンに8割くらいの入り。11席のラグジュアリー席はどれだけ埋まったかわからなかったが数人がいたのは確か。一方、11席×2列のプレミア席は2席を残して埋まった。

 マスクの注意のあと飲食OKとなり半暗に。非常口の案内から非常口ランプが消え、ドラえもんマナー、予告が続いて、マナー、忘れ物注意、ティファニーのCMを挟んで、映写機のマスクが左右に広がりフル・サイズで暗くなり、TCXデモ、まぶしい足元注意、迫力の映画泥棒、映倫で、本編へ。


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