2023年5月18日(木)「フリークスアウト」

FREAKS OUT・2021・伊/ベルギー・2時間21分

日本語字幕:丸ゴシック体下、煖エ 彩(高は、はしご高です)/シネスコ・サイズ(映写機の上下マスクで上映、IMDbでは2.35、Arri ALEXA)/音響表記なし(IMDbではDCP)
(伊T指定、日R15+指定)

公式サイト
https://klockworx-v.com/freaksout/
(全国の劇場リストもあり)

76点

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 驚きの物語。ファンタジーでありながら、実話でもありそうで、笑いもタップリありつつ、エログロ満載で、しっかりとした戦争映画になっている。それもナチス・ドイツのホロコーストを描いた恐ろしい映画。ラストの一大決戦、ドイツのSS親衛隊とフリークスたちの血を血で洗う戦いには圧倒される。お金もかかっているなあと。それらをひと言でまとめるとすれば、悪夢ということだろうか。長い悪夢を見ていたような気になる。ただ、基本ファンタジーなので、悲惨なだけでは終わらない。

 単なるゲテモノ映画になりそうなところを、実にうまいバランスで現実的なリアルな戦争映画に引き戻している。そこがイタリアの新鋭監督ガブリエーレ・マイネッティの演出力というか監督力なのだろう。ただ、ボク的には女性のヌードは良いけど、男性の全裸はなあ……。

 始まりはショービズ、サーカス物語で、「グレイテスト・ショーマン」(The Greatest Showman・2017・米)的な常人ではないフリークスたちの日常や悩みなどが描かれる。それがロード・ムービーのような冒険物語になり、そしておどろおどろしいナチスの人体実験物語となり、ラストにはまさに戦争映画となる。トレーサー(曳光弾)が飛び交い、なかなか恐い。ただ、ドイツ軍のMG42マシンガンの発射音が、スドドドド…… という感じで.50キャリバーか何かのように重くて、サイクル(発射速度)も低めなのは気になった。実際にはMG42のサイクルは1,200発/分を超え、発射音は雑巾を引き裂くような感じ。威力もかなりある感じだったので、だったら「プライベート・ライアン」(Saving Private Ryan・1998・米)のように2cm機関砲のFlak38とかにした方がわかりやすかったのに。

 監督・製作・脚本・音楽まで手がけるのは、これが劇場長編映画の監督2作目(短編は2004年から)という驚きの新星、ガブリエーレ・マイネッティという人。1作目が「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」(Lo chiamavano Jeeg Robot・2015・伊)で、高い評価を得たらしい。日本で劇場公開されたとき見たい思ったのだが、劇場が嫌だったかスケジュールが合わなかったのか、見ていなかった。2作続けてスゴイとなると、その才能は本物かも。当然次作にも期待がかかる。どんどん予算も増え、自由度も上がるだろうから、どうなるか。

 原案と脚本は、「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」からガブリエーレ・マイネッティと組んでいるニコラ・グアリャノーネ。この人も注目かもしれない。

 銃は、最初ショーで銃身を曲げるパーカッションらしい単銃身猟銃らしきものが出てくる。それ以降は第二次世界大戦中なので、ドイツ軍が、将校がP08、Kar98k、MP40、P38、MG42など。6本指のマッド・サイエンティストは、バントライン並みに銃身の長い、ステッキみたいなロング・バレルP38。パルチザンは定番のステンMk II SMG(リーダーは腕に直接取り付けている)、ZB26マシンガンなど。
 タイトルの「フリースクアウト」というのは、常識から逸脱した状態という意味のfreak outだろうか。sが付くのは複数だから?

 公開7日目の平日初回、品川の劇場は割りと早めのスタートで、10分前くらいに開場。すでにCM・予告は始まっていて、場内が明るいのでほとんど見えない。ファミリー劇場という感じなので、こういう作品は観客が少ないようで、最終的に117席に若めの男性が2人にボクの3人ほど。まあこんなものか。土日はもっと入ってほしいというか、多くの人に見てほしい気がした。家族連れには向かないけれど。

 スクリーンはビスタで、CM・予告から、マナー、非常口でようやく半暗になり、どうにか見えるようになって、IMAXがあって、予告が続き、暗くなって映写機の上下マスクの映画泥棒のあと暗くなって、映倫と続き、映写機の上下マスクの本編へ。


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