2023年8月17日(木)「リボルバー・リリー」

2023・「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ・2時間18分(IMDbでは2時間19分)

シネスコ・サイズ(表記なし、IMDbにもなし)/音響表記なし(IMDbにもなし)
(『HELLO! MOVIE』方式に対応した視覚障害者用音声ガイド・聴覚障害者用日本語字幕付き)

公式サイト
https://revolver-lily.com
(全国の劇場リストもあり)

75点


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 面白かった。痛快アクション、スパイ活劇を堪能した。そして、かなりお金が掛かっているんだろうなという気もした。というのも、セットを組んでいるようだし、撮り方がかなり映画的というか、こだわりが感じられ、きれい。綾瀬はるかも出てくるたびに違う豪華な衣装で、最初に見せておいた真っ白なドレスが、ラストには真っ赤に染まるというのも、とても映画的。さすが行定勲監督ということだろうか。

 重要なポイントとなるガン・アクションに関しては、予告を見た限りでは不安だったが、完成した作品では銃声も大きく迫力のあるものになっていて、カットのタイミングも適切で、反動の表現がないのはまったく気にならなくなっていた。しっかりと緊張感のあるガン・アクション。1つ気になったのは、ライフルとハンドガンの戦いで、距離が近すぎるかなあと。でもこれくらいでないとハンドガンの命中精度、威力からいっても、勝負にならないか。逆に言うと、敵は接近しすぎ。山小屋での長物対決でも、やっぱり距離感がなあ……緊迫感を出すためなのか…… 近すぎ。

 さすがに2時間を超えると見ごたえがある。ストーリーはより複雑に展開していき、この先どうなるんだろうと。ほぼすべての伏線を回収するものの、ヤクザの親分との約束は何だっただろう、どうなったんだろう。誘拐のエピソードはそのまま丸ごと無しでも良かったかも。基本は「グロリア」(Gloria・1980・米)かなあ。

 綾瀬はるかは前にも「ICHI」(2008・日)で強烈なアクションをやっていて、アクションの印象はよく似ている。この人はダンスがうまい人なのかも。番号順にアクションを振り付けていく場合、ほとんど踊りの振り付けと一緒と言われる。撮り方と編集がうまければ、それで見事なアクション・シーンになる。それを格闘技じゃないという本物の系のアクション・スターがいるが、映画ではちゃんとしたアクションに見えればいのであって、本物の格闘技である必要はない。そこそこの基礎訓練で、早く、安全に撮影が出来るのなら、それに越したことはないと思うが。リアルで言ったらチャンバラや銃撃戦なんか撮れなくなってしまう。たしか「修羅雪姫」(2001・日)で釈由美子を見事なアクション・スターに見せたのは、アクション監督のドニー・イェンと、監督の佐藤信介の技だったのではないか。

 洋裁店の店主は野村萬斎。現代劇ではこれくらいがちょうど良い感じ。雰囲気もよくハマっている気がした。たぶんもっともハマっていたのが法律事務所の弁護士、岩見を演じた長谷川博巳。ピッタリという感じ。そして良かったのが、元馬賊というリリーの右腕?らしい奈加を演じたシシド・カフカ。雰囲気完璧。カッコ良いし。そして下働きらしい少女、琴子を演じた古川琴音もいい感じ。悪い方では、陸軍の凶悪な将校、津山大尉を演じたSixTONESのジェシーが見事だった。

 本作のスタント・コーディネーターは田渕景也。「銀魂2 掟は破るためにそこにある」(2018・日)や「バイオレンスアクション」(2022・日)、「シン・仮面ライダー」(2023・日)を手がけた人だ。

 監督は、脚本も手がけた行定勲。どうしても文学系とかドラマ系のイメージが強く、ボクはあまり作品を見ていない。だから本作は意外だった。とは言え、助監督時代、岩井俊二監督作品についていて「スワロウテイル」(1996・日)や、林海象監督の私立探偵濱マイク・シリーズにも、劇場版、TV版共に関わっていて、それらは本作につながるのかもしれない。まあ、うまい監督は何でも撮れるということはあるだろうけれど。

 銃は、1924年の話なので、軍はたぶん三八式歩兵銃。1905年制式採用だからこれかと。リリーのリボルバーはS&WのM1917。黒のフル・エングローブ、パール・グリップで、.45口径、ハーフ・ムーン・クリップによる3発ずつ装填も見せてくれる。陸軍の凶悪な追っ手は二十六年式拳銃(1893年制式)。エンフィールド・リボルバーもあったような気がしたが、時代的にはウェブリー&スコットの方か。息子の細見慎太にわたされた拳銃はおそらくベレッタM1915。かなり大型に見えたから、9mmの8連発だろう。元馬賊の奈加はウインチェスターのレバー・アクション(1894だったらしい)。怪しい亡霊のような殺し屋の男、南始は十四年式拳銃。二十六年式拳銃の後継で、1925年制式だが1924年には完成されていたのでギリギリOKか。ただダルマ型トリガー・ガードは後期型で、1938年とされるので、これはアウトかな。山小屋での銃撃戦では、筒井はポンプ・ショットガンで、ウインチェスターの1897あたりか。細身のボルト・アクションはボルト・ハンドルが飛び出ておらず、正体はわからなかった(スプリングフィールドの1903だったらしい)。ラスト、岩見が山本五十六から借りるのはFN M1910と思われるオート。銃器特殊効果はBIG SHOT、納富貴久男。

 ちょっと残酷表現になってしまうが、.45口径弾が近距離から頭に命中したら、小さな銃創が出来るだけではなく、頭が半分くらい吹き飛ぶ演出はあっても良かったのではないかと思う。逆に、銃撃戦の最中に、よちよち歩きの幼子がトコトコと出てくるというのは、やり過ぎ。ありえない。昔の西部劇じゃないんだから。そして時代を反映してタバコ吸いまくり。吸わない人には気になるかも。

 公開7日目の初回、品川の劇場は10分前に開場。どういう人なのか、ほぼ中年層で、最終的に男女比は半々くらい。若い人は1人か2人。188席に25人くらいの入り。平日初回としては多いくらいかもしれない。スター・パワーか、監督のパワーか。

 9分前くらいからCM・予告が流れ、途中でほぼ暗くなり、映写機のマスクが左右に広がって、フルで映画泥棒、映倫と続いてドルビー・サラウンド7.1のデモから、東映のロゴ、そして本編へ。


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