2024年2月17日(土)「カラーパープル」

THE COLOR PURPLE・2023・米・2時間21分

日本語字幕:手描き風書体下、石田泰子/ビスタ・サイズ(撮影機材表記無し。IMDbでは1.85、Arri Alexa LF、Arri Alexa Mini LF)/ドルビー(IMDbではドルビー・デジタル、ドルビーATMOS、D-Cinema 96kHz Dolby Surround 7.1、12-Track Digital Sound、dts:X、Sonics-DDP、Auro 11.1も)
(米PG-13指定)

公式サイト
https://wwws.warnerbros.co.jp/colorpurple/
(全国の劇場リストもあり)

76点

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 オリジナル版の「カラーパープル」(The Color Purple・1985・米)を見ていないので、すっかり勘違いしていた。てっきり黒人迫害の物語だと思っていたのだが、そうではなく、黒人社会における女性差別と、さまざまな女性の姿、女性の自立、そして主人公の半生を描いたものだった。驚くほどに白人は少なく、わずかに守衛とかワゴンの売り子とか、せいぜい差別主義者の市長とその夫人くらい。良い人も悪い人も、ほぼすべて黒人。

 とにかく悲惨な話で、少しは笑いもあるようなのだが、これっぽっちも笑えない。笑えるわけがない。スピルバーグ版ではあったのだろうか。ミュージカルでない分、もっと悲惨だったのかとも思うが…… これはスピルバーグ版も見ておかないとなあ。

 もっとも強く感じたのは、主人公の弱い性格。不満を感じつつも、決して表立って逆らわない。異を唱えない。密かに泣いて、我慢して、自分を納得させてしまう姿勢。今はこういう人は少ないだろう。悪くいえば負け犬根性的な姿。それが長い物語の最後に変わると。耐えて、耐えて、ついに爆発する。

 なんでもオリジナルの映画版をブロードウェイでミュージカル化したものを、また映画化したという、ややこしい成り立ち。話は悲惨なものだが、曲も歌も素晴らしく、耳に心地よく、映像も美しく力があってドラマチック。1909年から1947年くらいの時代感もよく出ていた気がする。そこには間違いなく見る価値がある。

 ただ概してミュージカルは悲惨で悲劇的なものが多い。それを楽曲で暗くなりすぎないように引き上げているというか。そして歌が多め。舞台の映画化だから? しかも歌に入るのが唐突というかやや不自然。ミュージカルが得意でない人はちょっと馴染めないかも。しかも正直、楽しくない。ちょっと眠かったし。

 キャストではほとんど知らない人ばかりだが、チラリと出てくる登場人物で有名人がいた。たぶん産婆さんはオリジナル版で主演だった「ゴースト/ニューヨークの幻」(Ghost・1990・米)のウーピー・ゴールドバーグ。そしてとんでもない暴力男、ミスターの父親が「愛と青春の旅立ち」(An Officer and a Gentleman・1982・米)の鬼軍曹ルイス・ゴセット・Jr.。成功するためには手段を選ばない歌手のシュグを演じたのはTVドラマ「パーソン・オブ・インタレスト 犯罪予知ユニット」(Person of Interest・2011〜2015・米)の刑事を演じたタラジ・P・ヘンソン。

 銃は、狩猟用か、ハウス・プロテクション用か、水平二連ショットガンが登場。

 アメリカ南部を象徴するような、大木から白いひげのように垂れ下がる植物(木とは別物らしい)、「ジャンゴ 繋がれざる者」(Django Unchained・2012・米)でも印象的に使われていたスパニッシュ・モスが、本作でも印象的に使われている。ボクはもうこれを見るとアメリカの強烈な人種差別を思い浮かべるようになってしまった。

 公開9日目の初回、銀座の劇場は20分前くらいに着いたらすでに開場済み。観客層は、2F席で最初5人いて4人が中年女性、1人が自分。その後、中高年男性もちょっと来て、最終的には16人くらいになって、男性は3人いう感じ。人気はイマイチの模様。都内の多くの劇場が2週目に入って小さなスクリーンになったのは、こういうことか。ミュージカルのダンス・シーンは大きなスクリーンで見たいし、歌は良い音響設備のところで聴きたい。でもそれが難しいと。うむむ……。

 スクリーンは2.0くらいのフル・サイズで開いており、15〜16分前くらいから予告が始まり、途中で日本アカデミー賞のお知らせやアニメ、オチビサンのマナー、告知があつて、再び予告。そしてCMになって途中で半暗になり、映画泥棒と映倫。ふたたび予告に戻って、映画っぽい意見広告のようなCMで暗くなって、オチビサンのマナー、そして左右マスクのビスタ・サイスでWBウォーター・タワーのロゴからじまる本編へ。


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