うーん、悲惨で悲しい話。これまたつらい。最近こういう作品が多いなあ。気がずっしりと重くなる。主人公はそう感じていないとしても、苦労や苦しみは報われず、見終わってカタルシスもない。 犬つながりということで行けば、リュック・ベッソン脚本・製作「ダニー・ザ・ドッグ」(Unleashed・2005・英/仏/米)と似ている。犬として育てられ、音楽で人間らしさを取り戻す。それぞれ監督が違うので違ったテイストに仕上がっているのは当然だが、印象でいえば、「ダニー・ザ・ドッグ」が20年前のリュック・ベッソン46歳のまだまだ血気盛んな頃の作品で、本作は2023年64歳のより大人になった作品の違いのようなものがあるのかなと。どちらも過激ではありながら、前作はアクションが多目なのに対して、本作はアクション少なめ。語るシーンが多い。人によっては退屈と感じるかもしれない。語るよりは、体を動かしてくれと。 そして、リュック・ベッソン作品に共通する要素、パターンが感じられ、つまりはリュック・ベッソン作品の集大成的なものなのかなと。ただちょっとアクションは控えめになってしまったが。またいわゆる美女俳優も出ていない。それより個性的というか、リアリティのある俳優さんが出ていて、目立つ女性(?)といえばドラッグクイーンかなと。これは大きな変化かも。今度はそっちの方向? 良いのは、もちろん、主演のケイレブ・ランドリー・ジョーンズ。どこか不思議な存在感のある人で、「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」(X: First Class・2011・米/英)や「スリー・ビルボード」(Three Billboards Outside Ebbing, Missouri・2017・英/米)、最近だとアフガンでの過酷な戦闘を描いた「アウトポスト」(The Outpost・2019・米)に出ていた。脇役的な人かと思ったら、主演でもいけるんだと。しかも女装もそれほど悪くなかった。素晴らしい。ただ、エディット・ピアフとかマレーネ・ディートリッヒとかの女性の声での歌うシーンはいまいち不自然だったが、口パクで歌うという設定のシーンだったのだろうか。 時代設定がいつなのか不明だが、アナログのレコードが普通で、タバコもスパスパ吸っている。吸わない俳優や周りのスタッフも大変だ。 フランス映画だけれど、全編英語で舞台もアメリカ。音楽はリュック・ベッソン作品を多く手がけるエリック・セラ。 銃は、父が使うのが上下二連ショットガン、保険屋がチーフあたりのスナブノーズ、ギャングはベレッタ92とポンプ・ショットガン。そしてデカい武器がいると持ち出すのがベルト給弾のFN MAG(すぐ弾がなくなるが)。 公開10日目の初回、新宿の劇場は10分ちょっと前に開場。メインはやはり中高年で、最初15人ほどいて女性は4、5人。だいたいそのままの比率で、最終的には137席に40人くらいの入り。まあこんなものか……。ちょっと寂しい気もする。 スクリーンはビスタのフルで開いていて、5分くらい前から案内、予告が流れ、途中で非常口案内からランプが消えて、半暗になり、さらに予告。最後にマナー、上下マスクの映画泥棒、映倫と続いて暗くなり、上下マスクの本編へ。 |