2024年7月20日(土)「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」

FLY ME TO THE MOON・2024・米/英・2時間12分

日本語字幕:丸ゴシック体下、チオキ真理/シネスコ・サイズ(ドルビーVISION、IMDbでは2.39、Arri Alexa Mini LF)/ドルビーATMOS
(米PG-13指定)(日本語吹替版、ATMOS上映もあり)

公式サイト
https://www.flymetothemoon.jp
(全国の劇場リストもあり)

84点

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 面白かった。ちょっとためらいもあったのだが、見て良かったぁ。予告では「カプリコン・1」(Capricorn One・1977・米/英)的な月面着陸でっち上げ説の真実的な話かと思ったら、実録もの的ではありながら、懐かしささえある往年パターンのロマンチック・コメディになっていた。

 美男と美女が出会って、恋に落ち、すったもんだの末に結ばれると。そして、軍人出身のお堅いNASA技術者と、変幻自在の元詐欺師、そしてCIA的な大統領直属らしい謎の男がそこに加わるというシチュエーション。もちろん背景には1960年代の時代感がきっちりと再現されている。

 思った以上に笑いがあり、楽しい。しかし実録(ほぼ実話と最初に出る)でもあるから、NHKのプロジェクトX的な面白さもある。ただ、パターンではあるので、展開はだいたい読めるのだが、わかっていながら、結構ハラハラドキドキ。巨大なエンジンや、1階建てで世界一の大きさという建物の中や、発射台……などなど、実際そこで撮ったようにリアルに再現され、絵作りもきれい。場面転換にはワイプも多用され、物語感を高めているし、スプリット・スクリーンも使うなどいかにも映画っぽい。

 さまざまな詐欺的テクニックが興味深くて面白い。仕事ができる人と紙一重、というか、ほぼ一緒。こういう風に計画的に、あるいは時には臨機応変に工夫、対処できたら良いだろうなあと。それは広告の世界でとても役に立つことだと。ボクも広告の世界にいたので良くわかる。そして、広告、PRの世界は詐欺師の世界とよく似ていると。

 60年代を感じさせる鮮やかな色の衣装、盛った感じの女性のヘア・スタイル、真っ赤な唇や長い付けまつ毛といったメイク、七三分けにポマード的な男性のヘア・スタイル、タバコ、男女差別、アナログ・レコード、当時のヒット曲などなど。プロデューサーの1人がスカーレット・ヨハンソンで、毎回違うファッションで登場する。そこも見所。

 不吉な黒猫という設定も面白い。西洋では魔女狩りの時代から、魔女の使いとして「黒猫が前を横切ると不吉なことが起きる」と言われていたそう。日本では、それが伝わるまでは、むしろ福猫だったらしい。その黒猫がうまく使われている。

 脚本は、女性の俳優でもあるローズ・ギルロイ。脚本は本作が初めてらしい。今後活躍するかも。そして監督はグレッグ・バーランティという人。これまではほとんどTVドラマの製作を手がけていたようで、映画はライアン・レイノルズが主演した「フリー・ガイ」(Free Guy・2020・米/加)を手がけている。その映画には本作のチャニング・テイタムも出ていて、その辺から本作につながったのか。今後は監督作も増えそう。要チェック。

 公開2日目の初回、日比谷の劇場は12〜13分前に開場。入るとすぐにシネマ・チャンネルが始まった。観客層は中高年のやや若寄り。アポロ11号の中継を見た世代が多いかと思ったら、そうでもなかったようだ。最初、女性がやや多めだったが、次第に男性が増えて、最終的には半々くらいに。151席は数席を残してほぼ埋まった。結構、人気はあるらしい。ボク的にはもっと多くの人に見てほしいところ。

 シネマ・チャンネルのあと半暗になって、CM。非常口ランプが消え、プレミアム・シアターのCMからミニゴジラの予告。ラストに「ヒロアカ」のマナー(「携帯を消せー!」と叫んでいるのに、完全無視で使ってるヤツもいた)、忘れ物注意で、スクリーンのマスクが左右に広がりフル・サイズに。そして暗くなり、足元注意、迫力の映画泥棒、映倫と続いて、アネット・ベニング似の女神から遡っていくコロンビア100年のロゴ、アップルのロゴから始まる本編へ。


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