完全に映画という別世界に没入して、楽しめた。本気のお金を掛けたギャグ。笑った。良い音楽がありながら、血まみれで、リアルなバイオレンス表現満載の残酷映画で、下ネタやディスりも満載。そしてよくしゃべる。機関銃のようにしゃべりまくり。それでいて、悩めるヒーローで、世の中の役に立ちたいと思っていて、さらには極めて人間くさいというかヒーローっぽくない。ようするにデッドプールというキャラクターがあってこその映画だろう。刃物が突き刺さり、血しぶきがはじけ飛び、頭が飛んだり、腕が飛んだり、全身が爆裂しても、笑える映画に仕上がっているのだから。気持ち悪いの一歩手前くらい。 アベンジャーズに入りたくても、入れてもらえないというのも面白いが、マーベル映画のマルチバースが失敗だったというのも面白かった。そのとおり!と思わず拍手をしたいくらいだった。あれ以降良い作品がないと。まったくそのとおり。だからなのか、ストーリー的にはあえてマルチバースを利用し、時間も乗り越えて、今回のミッションにピッタリの、死んだはずのウルヴァリン=ローガンを探し出す。この世界さえ救えればそれで良いらしい。そしてストーリー展開も他のマーベル作品と一緒で、荒唐無稽のご都合主義。マルチバースで他の世界もあるなら、うまくいっている世界もあるはずだから、いまの世界を救わなくでも良いじゃん、となってしまうが……。ただ、ギャグてんこ盛りでなかなか笑える。 ボク的に気になったのは、ライアン・レイノルズの自虐ネタで、「あなたは私の婿になる」(The Proposal・2009・米)は失敗だったというのがあるが、それをいうなら「グリーン・ランタン」(Green Lantern・2011・米)じゃないかなあ。すでにギャグとして使い古されているから避けたのか、よほどのトラウマなのか。 たくさんのギャグがあって、それを細かく拾ってみるのも楽しいと思う。特におかしかったのは、20世紀FOXのオープニングのロゴの建造物が、「猿の惑星」(Planet of the Apes・1968・米)のように砂に埋まっているというもの。ディズニーに買収されちゃったからなあ。FOXチャンネルもDlifeに変わったし。 豪華なのはキャストやデジタル技術だけではない。ゲストも素晴らしい。時空のジャンクヤード、虚無空間に捨てられた、忘れられたヒーローたちが素晴らしい。「キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー」(Captain America: The First Avenger・2011・米)はメジャーだから「ファンタスティック・フォー[超能力ユニット]」(Fantastic Four・2005・独/米)のヒューマン・トーチのクリス・エヴァンス、「デアデビル」(Daredevil・2003・米/スイス)とそのスピンオフの「エレクトラ」(Elektra・2005・スイス/加/米)のエレクトラのジェニファー・ガーナー、吸血鬼ハンター映画「ブレイド」(Blade・1998・米)シリーズのブレイドのウェズリー・スナイプス(「3」にはライアン・レイノルズも出ている!)、そしてカヴィルリンというよくわからないキャラで、DCコミックスのスーパーマンを演じたヘンリー・カヴィルまで出てくる。通りの向こうのクソ野郎どもより君を優遇してやるよと。X-MENの超能力者もたくさん出ていて、なかでも「LOGAN/ローガン」(Logan・2017・米)のローガンに助けられる少女、X-23のローラ=ダフネ・キーンはちょっと大人になっていて、大活躍する。スタン・リーは写真で登場。 そしてその戦いの舞台となる砦は、形はアントマンのヘルメット風だが、ほぼ「マッドマックス:フュリオサ」(Furiosa: A Mad Max Saga・2024・豪/米)のまま。セリフでも「フュリオサ」って言っちゃってるし。 銃は、デッドプールがデザート・イーグル。後半で金めっきのデザート・イーグルに換わる。そして一時、落ちていたベレッタ92も使う。女デッドプールはマイクロ・ウージー。カウボーイ・デッドプールがSAA。ほかにリボルバーのウェブリーも出ていた。マッドマックス風世界の敵ザコ・キャラがフィンランドのSAKO M90とかM95あたりのアサルト・ライフル。ブレイドが対戦車弾を発射するAT4を使う。 オープニング・タイトルは、デッドプールが投げたウルヴァリンの骨にクレジットが書かれているという凝ったもの。それをスローモーションでしっかり見せる。誰が手がけたのかはわからなかった。IMDbにも見あたらなかった。 公開4日目のATMOS上映初回、新宿の劇場は20分くらい前に整列の案内があり、15分前くらいに開場。観客層は若い人から中高年までいたが、メインは中年層あたり。男女比は、上映間近になって女性が少し増えたものの男性が多く、6.5対3.5くらい。最終的には499席に8割くらいの入り。9席×2列のP席は、たぶん1席を残してすべて埋まった。すごいなあ。ATMOS料金が200円加算されるのに。 シネマ・チャンネルのあと半暗になり、CM。非常口案内からランプが消えて、ちびゴジラの予告。「ヒロアカ」のマナー、忘れ物注意で映写機のマスクが左右に広がり、フル・サイズになって暗くなり、TCXデモ、ATMOSのデモ、足元注意、映画泥棒、映倫、ラストにエンド・クレジットの後にも映像がありますと出てマーベルのキャラ・イラストから始まる本編へ。 上映前からクライマックス近くまで、たぶん下の階の4Dシアターの振動と思われるものが断続的に伝わってきて、不快だった。 |