面白かった。楽しめた。確かに今の時代、時代劇は難しいと思うが、バックステージものでも、ちゃんと時代劇を感じさせてくれたし、ちゃんと時代劇になっていて、面白く最後まで見れた。ところどころだけれど、本気で声を出して笑ってしまった。そして、ちょっとホロっときて、爽やかな感動ももらった。第2の「カメラを止めるな!」(2018・日)か? ラストの方で「カメラを止めるな!」なんてセリフもあったし。 これが自主映画? まったくそんなレベルじゃなく、完全にプロの作品だなあと思ったら、本作の安田淳一監督の作品はこれまでにも自主製作らしいが、すでに2作品がミニシアター系で劇場公開されているという。つまりはプロ。普通の自主映画とは画質からして違う。とても高画質で、色もちゃんと乗っていて、むしろ他の商業邦画より絵作りは上とすら感じるほど。公式サイトによると、安田淳一監督はもともと幼稚園の発表会とか、結婚式とかのビデオ撮影業からきているらしい。なるほど。それにしても、現代劇よりはるかに予算の掛かる時代劇を自主製作とは! ただ、音に関してはちょっと引っかかった。冒頭のアバン部分、幕末のチャンバラ・シーン、アフレコらしいセリフと口の動きが微妙にずれている感じで違和感。SEもなんだかズレてない?と思い出したら気になるし、音楽も妙にうるさい感じ。これが自主製作の壁かと、しばらくは馴染めなかった。しかしやがて映画にのめり込んで、気にならなくなった。後半でもふと、ズレている感じはあったが……。 企画も良い、脚本も良い、演出も良くて、絵作りもうまいのなら、あとは優秀なブロデューサーがいたら、自主製作ではなく、ちゃんとした商業映画が撮れるのかもしれない。ただ大金か動くといろいろあちこちの言うことを聞かなければならなくなって、この監督の味が出るのかどうか、そしてそれに耐えられるのかどうかとか、いろいろあるだろうなあと。 自主製作とは言え、キャストはプロの役者さんたちで、演技もうまく自然。皆味がある。それぞれ印象に残る。有名な人が出ていないぶん、華やかさのようなものはないが、何ら問題なし。ここから大躍進する人が出るかも。おかしかったのは、ヒーロー役の錦京太郎を演じた三浦翔平似の田村ツトムという人。結構笑わせてくれて、印象に残った。 殺陣=チャンバラも良かった。ラストの真剣という設定の斬り合いはかなりの迫力。殺気が感じられ、怖かった。素晴らしい。ただ、本当に撮影中に死人が出たら、その作品は公開できなくなるのでは? 銃はSAAが登場。火を噴き、弾着でちゃんと血糊が飛び散っている。 8月17日から一部劇場で限定公開されたところ、評判が良く大入りだったことから、9月13日より全国拡大ロードショーとなったらしい。拡大公開4日目の初回、日比谷の劇場は30分前くらいに開場。観客層はほとんど中高年。時代劇なのでオヤジが多いのか。男女比は最初7人いて、女性は2人。そんな比率で、最終的にはTCXスクリーンの386席に8.5割くらいの入り。9席×3列のP席も20席くらいが埋まった。素晴らしい。 シネマ・チャンネルの後、半暗になり、非常口ランプが消えてCM、予告。ラストにマナー、忘れ物注意で暗くなり、映写機の左右マスクのまま、足元注意、枠付きの映画泥棒、映倫でビスタ・サイズの本編へ。ビスタは映写機のマスクよりさらに左右の内側にマスクがあって、1.66くらいだったかもしれない。 最後に「おわり」と出るのは、おとぎばなし的な感じか。オールド・スタイルなのにちょっと新鮮な感じがした。 |