壮大な歴史絵巻。莫大な予算と、多彩なキャスト、豪華な衣装、小道具、セットとリアルなCG、大迫力の特殊効果で、感動的な復讐の物語を描き切ったと。1カット1カットが絵画のように美しく、レンブラントを思わせるような側面からのライティングは、やはりリドリー・スコット監督ならではだろう。そして、当然リドリー・スコット監督作品らしく、どんなに大軍が出てこようと、最後はやっぱり1対1の対決、決闘で決めると。今回はすべてが上手く行っているのではないだろうか。感動したし、物語も、美術も、演技も、トータルで堪能した。素晴らしい! 映画を見たーっていう感じ。少しも無駄のない2時間28分。 バイオレンスは強烈。頭が飛ぶし、腕は落ちるし、血は飛び散りまくり、矢は刺さりまくり。当時の戦い方が興味深かった。まず油などを入れた火の付いたツボのようなものを投げ込んで、より近付いたら、矢を雨あられと打ち込んで、ラストに突入して白兵戦に。重低音は場内全体を振動させるくらい響き渡り、素晴らしい臨場感と大迫力。 雰囲気としては、同じリドリー・スコット監督の「ナポレオン」(Napoleon・2023・米/英)とか「最後の決闘裁判」(The Last Duel・2021・米/英)、「エクソダス:神と王」(Exodus: Gods and Kings・2014・英/西/米)、「ロビン・フッド」(Robin Hood・2010・米/英)、「キング・オブ・ヘブン」(Kingdom of Heaven・2005・英/独ほか)などと似ている。中世から近世くらいの戦闘を描いた歴史アクション大作。本作は物語やアクションなどすべてがバランス良く、ピタリとハマったという感じ。 もちろんデンゼル・ワシントンやコニー・ニールセンは素晴らしい。ボクには残念な映画だった「異人たち」(All of Us Strangers・2023・英/米)(IMDbでは本作より評価が高い!)のポール・メスカルも、ドンピシャリで素晴らしい演技。しかし、それよりスゴいと思ったのは、2人のおバカ皇帝。兄のゲタを演じたジョセフ・クイン(「クワイエット・プレイス:DAY 1」(A Quiet Place: Day One・2024・米/英/加)で主人公のルピタ・ニョンゴと一緒に逃げたサラリーマン?役をやっていた)と、弟のカラカラを演じたフレッド・ヘッキンジャーは、メイクというか当時の化粧?のおかげもあるのだろうが、もうイッてしまっている狂人にしか見えない。本当にスゴイ! まっ、サブタイトルの「英雄を呼ぶ声」はいらないかなあ。劇中、主人公は何度も名前を呼ばれるけど、決してそれが重要なわけじゃない。ボクはそれより「最高の復讐は赦すこと」とか、グラディエーターたちの合い言葉「力と名誉を」、志のあるものたちの合い言葉「ローマを取り戻そう」が心に残った。ただ、ローマの話で、英語で良いのかなあとはチラリと思った。まあ映画なんだし、エンターテインメントなんだから…… ちなみに、食卓にザクロがあったような気がしたのだが、当時のローマにあったんだなあと。 冒頭、タイトル前のアバンで、前作の人物などがリドリー・スコット監督のタッチで描かれたような絵画として流れる。なかなか凝った構成。これを担当したのは、エンド・クレジットではアクメ・フィルム・ワークスとあったようなのだが、IMDbでは、リドリー・スコットの会社のロゴ・アニメもデザインしたらしいGianluigi Toccafondoという人。読み方すらわからないが、日本のユナイテッドアローズのCM(1998)も手がけているらしい。エディターなどでタイトルに関わっている会社名はアート・ワークス・ロサンゼルスとあった。 公開4日目の平日の初回、日比谷のビルはまだエスカレーターが動いておらず、エレベーターで劇場へ。すると24、25分前に開場。観客層はほとんど中高年。女性は3割ほど。外国人カップルも1組。全席指定がわからないようで、適当に座って、後から来た人と確認する羽目になっていた。最終的には436席に50〜60人ほどの入り。10席×4列のP席には2人ほど、10席×1列のDX席はたぶん0人。平日の朝一はこんなものだろう、というか、逆に多い? 案内、予告、マナー、忘れ物注意の後、いろんな映画の名場面を集めたローレックスのクォリティの高いCMがあって暗くなり、映写機のマスクが左右に広がりフル・サイズとなってTCXデモ、足元注意から迫力の映画泥棒、映倫で、本編へ。 |