面白かった。よくあるパターンの設定、ストーリーながら、とにかくやることが徹底していて、とことんやる。めちゃくちゃ強い。当然、敵の悪党も徹底して悪い。少しも同情の余地などない。勧善懲悪というか完全懲悪的な。容赦はしない。たぶん、政府の組織や警察などに対しては動けないようにする程度で、悪の組織上部の人間や傭兵的な雇われ私人には死を持って報いる。主人公は粛々と殺戮を実行していく。かなり残酷ではあるが、スッキリするというか、カタルシスがある。やや怖いが、アクション映画の基本とでもいうべき痛快さ。敵はネットを使ってPCを乗っ取り、金をだまし取る詐欺集団。実際、毎日そんな迷惑メールが送られてくるので、こんなふうにやっつけてくれたらさぞスッキリすることだろう。もちろん殺人とか爆破とか暴力はいけないけど、映画だから……。 設定としては、よくあるCIAの秘密プロジェクトで作られた人間ウェポンというようなもの。これはほとんどマット・デイモン=ジェイソン・ボーンの「ボーン・アイデンティティー」シリーズ(The Bourne Identity・2002・米/独/チェコ)と同じ。そしてCIAの引退した工作員のワン・マン・アーミーが善人を救うという点ではデンゼル・ワシントン=ロバート・マッコールの「イコライザー」(The Equalizer・2014・米)シリーズと同じ。ただ、監督が違うと味付けが変わり、ジェイソン・ステイサムが演じると、また違った味わいになるということだろう。それが良い方に出て、面白く仕上がっている。映画の不思議というヤツ。 格闘シーンはスピード感があり、キレも良く、本当に痛そうで迫力満点。実際ダンスのように撮影するのだろうが、流れるように自然でスムーズ。まるで良くできたダンスのよう。それでいて残酷でもあり、リアリティがあってかなり怖い。指は飛ぶし、ホチキスの拷問も痛そうだった。 ビーキーパーは暗号名的なものでもあり、人類と古くから関わってきたミツバチとの関係も象徴していて、そこも面白かった。だからオープニングのタイトル・バックで絵や写真を使い、蜂や養蜂のことを描いていたのかと、あとになってより頷けた。クレジットの文字も黒バックに黄色文字だったし、徹底している。タイトルを手がけたのはフィルモグラフ。 監督はデヴィッド・エアー。脚本家からキャリアをスタートさせ、監督もするようになって、面白かったキアヌ・リーヴスのアクション「フェイクシティ ある男のルール」(Street Kings・2008・米)や、ブラッド・ピットのWWIIのM4戦車の戦いを描いた「フューリー」(Fury・2014・米/中)、コミック原作のダーク・ヒーロー・アクション「スーサイド・スクワッド」(Suicide Squad・2016・米)などを撮っている名匠。 脚本はカート・ウィマー。監督もやっていて、ガンカタを生み出したSFアクションの「リベリオン」(Equilibrium・2002・米)や、ミラ・ジョヴォヴィッチの残念なSFアクション「ウルトラ・ヴァイオレット」(Ultraviolet・2006・米)を手がけている。脚本では面白かった「トーマス・クラウン・アフェア」(The Thomas Crown Affair・1999・米)を書いていて、「フェイクシティ ある男のルール」ではデヴィッド・エアーと組んでいる。ただ残念だった「エクスペンダブルズ ニューブラッド」(Expend4bles・2023・米)でジェイソン・ステイサムと組んでいて、そこは不安材料だったが、本作は良かった。 主演のジェイソン・ステイサムは、残念な「MEGザ・モンスター2」(Meg 2: The Trench・2023・米/中/タイほか)で製作総指揮とか、「エクスペンダブルズ ニューブラッド」でも製作を務めていて、どうかなと思ったが、本作は大丈夫で、安心した。これもだめだったらプロデューサーの素質はないのかと。 敵役のジョシュ・ハッチャーソンはなかなかの悪人ぶりで良かった。傑作「テラビシアにかける橋」(Bridge to Terabithia・2007・米/ニュージーランド)の純な主人公を演じた人と同一人物とは思えないほど。さすが俳優。意外だったのは「スリーパーズ」(Sleepers・1996・米)とか「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」(Good Will Hunting・1997・米)のミニー・ドライヴァーがFBI長官でちょっとだけ出ている。長官を演じる貫禄が出てきたということか。 銃は、老婦人が使うのがベレッタM1934。FBIの捜査官はグロックで、ビーキーパーがぶっ飛ばすビルのセキュリティもグロック。悪党どもが送り込んでくる“解体業者”はレミントンのポンプ・ショットガン870。率いる詐欺師の中ボスは1911オートのカスタム。現役のファンキーな女性ビーキーパーはグロックと、ツイン・ドラムマガジン付きのM4系ショーティと、M134ミニガン。元CIA長官のジェレミー・アイアンズが雇う傭兵たちはM4系ショーティ。FBIや警察のSWATチーム、そしてシークレット・サービスはM4系カービン。ラストに呼び集められた元特殊部隊の傭兵たちはSIG 551/552、G36Cなど。そのリーダーのモミアゲ男はB&TのAPC9サブマシンガンと、グロックのTTIカスタム。スタッフ・クレジットにはマスター・アーマラーとスーパーバイジング・アーマラーがあったけど、どっちが偉いんだろう。 細かなところでは、CIAの極秘施設らしいところでは、グリーンの文字が表示されているブラウン管のモニターのコンピューターを使っているようで、これはたぶんネットにもつながっておらず、ハッキングされたりしないコンピューターということなのだろうか。それと、詐欺会社のコール・センターにはターミネーターの1/1エンド・スケルトン・スタチューが飾ってあった。監督がファンなのかなあ。 公開13日目の初回、新宿の劇場は10分くらい前に開場。8分くらい前からCM、予告。観客層は、平日ということもあり、やはり中高年の高寄りで、女性はちょっと若め。男女比はアクション作品にしては女性が多く、6対4くらい。最終的には148席の4.5割くらいが埋まった。平日の初回なのに! 定年退職した人たちとか、フリーランス?、水曜日が定休日の人たちだろうか。それにしても人気があるのは間違いない。 予告の途中で非常口案内になりランプが消え、たぶん半暗になってCM。再び予告になって、ラストにマナー。映写機のマスクが左右に広がり、フルのシネスコに。そしてフルの映画泥棒、映倫で暗くなり、本編へ。 東映系の予告は、右上に常にタイトルと公開日が出ているので、とてもわかりやすい。カッコ良くはないかもしれないが、一番効果的だと思う。 |