うーん、いかにも作りましたというような映画、あるいはカリカチュア映画のような印象。漫画的と言ってしまうと、漫画に対して失礼かもしれない。細かなエピソードなどにリアリティがなく、それを積み上げても何も生み出さない。ラストは感動的ではあるが、積み上げの結果ではなく、その場の感動。だから薄くて、心に残らない。予算はエキストラもデジタル効果も多く使われていて、大予算なのだろうと推測できるが、仕上がりがそれに値するのかというと難しいところ。 たとえば、冒頭、不作と疫病で人々が次々と亡くなる状況の中、まるでピラミッドの建設みたいな大きな岩を運ぶシーンで、役人が人夫を働けと鞭打ったり、逆らうと斬り殺したりするのは、逆だろうと。人が少なくなっているのにさらに減らしたら、誰がそんな肉体労働をするのか。むしろ死なないようにしないと。そして、道ばたで飢えている母娘に食べ物を分け与えるのもいかがなものかと。主人公の優しさを表現したかったのだろうと思うが、ほかにも飢えている人々がいっぱいいる中、ほかの人たちから恨みを買うだけで、何の解決にもならない。見過ごせなかったとしても、解決すべきはそこではないだろう。 そして、誰でもがやたら叫ぶようにセリフをしゃべるのもいかがなものかと。聞き取りにくいし、ちっとも入ってこない。柄本明演じる仙人みたいな老人は、ジャッキー映画に出てくるカンフー名人のようだし、「ベストキッド」(The Karate Kid・1984・米)のようでもあって、コテコテのキャラ設定で度が過ぎて笑えない。 基本は西部劇ということなのか、あちこちにマカロニ・ウエスタン調の曲が使われていて、真面目なのかふざけているのか、どっちつかず。これは全体に言えることだけれど。そして、斬られた時たぶんCGで血が飛び散っているのだが、そのわりに地面に何も落ちていないのは、やっぱり気になった。 印象に残ったのは女性陣。高級遊女の芳王子(ほおうじ)を演じた松本若菜はもちろん良かったが、朝鮮から来たという口のきけない弓使い超熙(ちょうき?)を演じた武田梨奈がよかった。セリフがない分、表情と動きだけでの演技というのがハマった感じ。つい、生き残ってくれと思ってしまう。素晴らしい。 公開3日目の初回、日比谷の劇場は14、15分前に開場。観客層は中高年メインの高多め。女性の方がやや若く、男女比は半々くらい。最終的には386席に2.5割くらいの入り。9席×3列のP席には10人ほどが座った。次の回は黄色表示になっていたので、残席わずか。うーん、今後どうなんだろう。 10分くらい前からシネマ・チャンネル。終わって半暗になり、CM、非常口案内から予告。ラストにマナー、忘れ物注意で暗くなり、映写機のマスクが左右に広がってフルのシネスコに。TCXデモ、足元注意、映画泥棒、映倫で、本編へ。最初に海で波が砕ける東映のロゴが出て、ちょっとビックリ。タイトルの題字は武田双雲だった。 |