2025年2月22日(土)「セプテンバー5」

SEPTEMBER 5・2024・独/米・1時間35分(公式サイトでは90分)

日本語字幕:手描き風書体下、松岡葉子/シネスコ・サイズ(SHOTonRED。IMDbでは2.39、Arriflex 416、Red V-Raptor 8K VV)/ドルビー・サラウンド7.1(IMDbではドルビー・デジタル)
(米R指定、独12指定)

公式サイト
https://september5movie.jp
(全国の劇場リストもあり)

74点

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 緊迫感、そして臨場感溢れる映画。まるで観客が現場にいて、マスコミの1人として事件に巻き込まれたかのような感覚になる。ドキュメンタリー・タッチというのとはちょっと違うような気はする。やはり、良く出来たドラマだと思う。

 印象としては原田眞人監督の「クライマーズ・ハイ」(2008・日)のような感じ。報道を描いた群像劇的でもあり、大事件の発生によるカオス状態をリアルに、それでいてわかりやすく見せてくれる。ファクト・チェック、ダブル・チェック、トリブル・チェックと、しつこく言う。そして他社がどう報道しているか。そしてそのまま人が殺害されるような場面を放送していいのかという葛藤。特ダネというか、独占生放送のアドバンテージ…… 報道とはこういうものなんだろうなと。

 ドキュメンタリー感を出すためか、時代感を出すためか、画質はわざと落とされている。その意味ではきれいな映画ではない。かなり疲れる画質。そして、時代感の部分では、タバコとか、16mmフィルム・カメラ、1インチのビデオ・テープ?、文字を直接撮影して画面に文字を出すスーパー・インポーズのやり方、電話の受話器に配線を直接半田付けして音を拾ったりする手法などがそれを感じさせる。詳しい人はきっと懐かしさを感じるだろう。

 戦後ドイツの微妙な立ち位置、1回線しかない衛星放送の回線の他社との取り合い、報道局とスポーツ局という垣根、上司と部下の関係、ゲリラかテロリストか…… それらも興味深かった。

 キャストは皆素晴らしかった。リアルな存在感。中心となるディレクターらしいジョフリーを演じたジョン・マガロはもちろん素晴らしく、リアリティがあったが、上司たちが特に良かった。直接の上司チーフ?らしいマーヴィンを演じたベン・チャップリン、スポーツ局の局長らしいルーンを演じたピーター・サースガードは、2人ともベテランらしい重さのある存在感。印象に残ったのは、編集室のドイツ人女性スタッフを演じたレオニー・ベネシュ。芯の強いしっかりした女性像が良かった。1972年の事件当時は少なかったタイプではないだろうか。その感じがよく出ていた。

 製作の1人に、俳優のショーン・ペンが名を連ねていた。

 銃は、ドイツ警察がワルサーMPLらしいサブマシンガンと、ストレート・マガジンの初期型のMP5を使用。セリフでは犯人はAK47を待っていると言っていた。

 公開9日目の初回、日比谷の劇場は13、14分前くらいに開場。観客層は、高寄りの中高年。女性は1/5ほどで、たぶん1/4はいなかったような感じ。わずか93席の小さいスクリーンなのに、6席のP席があって、女性2人を含め全席が埋まった。一般席もほぼ満席。ただキャパが小さいけど。

 シネマ・チャンネルのハリウッド情報は「ウィキッド」のセット。まあとにかく豪華でデカい。3D-CGじゃなくてホントに作ったんだ。と、それが終わると半暗になり、非常口案内から予告。ラストにマナー、忘れ物注意があって、映写機のマスクが左右に広がり、シネスコのフルになって、足元注意、映画泥棒、映倫で、TOWAのロゴから始まる本編へ。

 本編が終わってエンド・クレジットになっても、誰も出て行かず、ロールになってからポツポツと退場。ちょっと珍しい。


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