ロバート・ゼメキス監督作品なので、とにかくテクノロジーが凄い。一時期は、もう実写は撮らないと言っていたが、「フライト」(Flight・2012・米ほか)あたりから実写がメインに戻ってきた感じ。テクノロジーの部分を別にすると、どれも今ひとつパッとしない気も‥‥。近作「ピノキオ」(Pinocchio・2022・米/英)などは最悪映画を選ぶラジー賞に6部門でノミネートされるなど、惨憺たる結果に。本作はそんなことはなく、なかなか心温まる作品で良かったと思うのだが、やはりテクノロジーは別として、群像劇的にしたために、フォーカスすべき家族が定まらず印象も薄い結果に。感動も薄くなってしまった感じ。ちょっともったいない。 テクノロジー的には凄いし、素晴らしい。原始時代からある点にカメラを固定し、ディープ・フォーカスで、同じアングルで撮り続けている感じにまとめられている。演出としては、うまく画面の一部を四角く切り取り、アップの代わりに注目させ、そこだけ時間を進めたり戻したりしながら、場面を変えていくという手法。しかもずっと同じ場面になってしまうので、登場人物はカメラ側か玄関側から出たり入ったりして、ほとんど舞台劇のような雰囲気。 さらに言うと、時代が変わったり周囲の様子が変わったりする表現は、ほとんど名作SF、ジョージ・パル監督の「タイム・マシン/80万年後の世界へ」(The Time Machine・1960・米)とそっくり。ラストのラスト、ついにカメラが動き、出演者に寄り、そして回り込み、今まで背後になって見えなかった部分を見せてバックすると、そのまま1カットで窓を抜けて外へいって、さらに引いて街全体を見せる感じは、いろんな映画でも使われているが、ヒッチコックの「サイコ」(Psycho・1960・米)のタイトル・クレジット後の冒頭カットの逆バージョンかなと。 若返らせたりする技術は、もちろん凄く進化しているものの、「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」(The Curious Case of Benjamin Button・2008・米)とか 近作で言うと「インディー・ジョーンズと運命のダイヤル」(Indiana Jones and the Dial of Destiny・2023・米)と一緒。トム・ハンクス(実年齢69歳)や妻役の「フォレスト・ガンプ/一期一会」(Forrest Gump・1994・米)のロビン・ライト(実年齢59歳)を高校生から70代くらいまでリアルに変身させているのは凄い。実写にしか見えない。でも老け側は特殊メイク? もっとも驚かされたのは、声までがちゃんと若返っていたこと。確かに10代っぽく聞こえた。それも本人の声で。今の技術はスゴイなあ。これが悪用されたら大変なことになる。 強く感じたのは、結局、人生、良いこともあれば、悪いこともあると。一生懸命生きたかどうか、全力を尽くしたかどうかが大切なのではないかと、この映画は問いかけてくる気がした。年齢を重ねるに従って終わりが近付いてきて、このことが余計心に刺さってくる。この映画の観客に高齢者が多いとすれば、その辺のことが心に刺さったのかもしれない。 銃は、トム・ハンクス演じる主人公?が子供の頃に西部劇ごっこで2挺拳銃を振り回しているのと、アメリカの独立戦争らしいシーンで兵士がフリント・ロック式小銃を担いでいる。 公開2日目の初回、といってもほぼお昼、日比谷の劇場は20分くらい前に開場。観客層は中高年の高寄り。内容的にもそうだろう。意外にも女性は少なく2割ほど。てっきり女性の方が多いか、半々くらいかと思っていたのに。最終的には249席に4割くらいの入り。話題作かと思ったら、そうでもなかったらしい。上映館も小さなスクリーンが多いしなあ。8席×2列のP席には10人くらいが座った。若い人は1カップルだけだったような。 10分くらい前からシネマ・チャンネル。終わって半暗になり、CM、非常口案内で誘導灯が消え、本予告。ラストにマナーから忘れ物注意で暗くなり、映写機の左右マスクで、足元注意、映画泥棒、映倫と続いてオーロラの木下グループのロゴから始まる本編へ。本編は少し左右のマスクが加わっていたので、それがアメリカン・ビスタの1.85ではなく、ヨーロッパ・ビスタの1.66よりは広い1.78か。この比率、実は16:9のことで、ワイドTVの比率らしい。つまり最初からそこ狙い? |