圧倒された。ものすごいネガティブ・パワー。エロとグロ満載で、そのうえ血まみれ。ラストは「キャリー」(Carrie・1976・米)的なカオス状態。映画としては、とてもよく出来ているのではないだろうか。ただ、怖いというか、気持ち悪い。正直言って、お昼なのに食欲が失せた。 ひと言で言えばモンスター映画だったのね。想像のかなり上を行き、ぶっ飛んでいた。コピーどおり「阿鼻叫喚」の地獄絵図。でも一方で、大人のおとぎ話とも言えそう。お話の中で、魔法使いのような妖精のような誰かが現れて、助けてくれる。しかし「夜中の12時を過ぎたら元に戻ってしまうから、それまでに戻るんだよ」というような制限というか条件を付ける。そしておとぎ話のお約束どおり、それを破ってしまうと。もっと言えば、「ハリウッドのウォーク・オブ・フェームに埋められたエリザベスというスターの星の上にケチャップのようなものが落ちて、それが拭き取られる話」でもあるか。大事件だったはずが、すべて世はことも無し、と。コップの中の嵐というか、スノードームの中、というか彼女の頭の中の出来事だった、のかも。それだと夢落ちで、大非難を浴びるだろうが、そんな解釈も可能かも。 とにかくすごいのはデミ・ムーア。全裸で、自身を反映している以上の、落ち目の大女優をとてもリアルに演じている。1962年生まれというから今年63歳。それであの色気、グラマラスでいて引き締まった体型、体の柔軟さなどは見事なのに、さすがに共演の1994年生まれ31歳のマーガレット・クアリー(もちろん彼女も全裸でガンバっている)と並べて比べてしまうと、肌の張りや色、形、胸やお尻の加齢による影響は大きいと、突きつけられる感じ。映画はそういう風に作られている。よくデミ・ムーアが受けたなと。まあ以前にも「素顔のままで」(Striptease・1996・米)でストリッパーを演じたり、「G.I.ジェーン」(G.I. Jane・1997・)でG.I.カットの坊主刈りにしたり、ブルース・ウィリスと結婚していたときに妊婦ヌードを発表したりと、チャレンジングな人だったとは思うけれど。 気分が悪くなるキャラクターの1人に、デニス・クエイド演じるバカP(プロデューサー)がいる。ノリがいかにも業界人風ながら、カリカチュアライズが過ぎて、リアリティがない。ハリウッドにはこういう人が本当にいるのかもしれないけど。 老化は、女性だけじゃなく、男も同様で、高齢者になってくるとグサグサと刺さってくる。自分の存在価値とは‥‥ そこへ食べ散らかす汚い食べ方。バカPとエリザベスがやっている。とにかく気持ち悪い。さらに追い打ちを掛けるのが、多用されている広角レンズによる歪みのある絵。狭苦しい閉塞感もあって、パンフォーカスはいいと思うけれど、多用されると目が回るような感覚があって、さらに気持ち悪くなる。 監督は、日本ではたぶんほとんど知られていないフランス人のコラリー・ファルジャという人。女性だけに、残酷なほどにじっくりと針や刃物が刺さるところを見せる。老若の体の違いも冷徹なまでにじっくり見せる。しかもしわが目立つようにライティングし撮っているようにも見える。ここまでやるのは女性だからこそかも。そして女性だからデミ・ムーアも託したのかも。 ちなみに、エンド・クレジットのサンクスのところに俳優のレイ・リオッタの名前があったようだが、何をやったんだろう。 公開6日目の平日初回、日比谷の劇場は24、25分前に開場。さすがにすぐには人が入らなかったものの、10分前くらいから増えだした。観客層は中高年がメインで、女性はやや若め。若男子も1人、2人はいたものの、若女子はいなかった。最終的には115席の5.5割くらいが埋まった。これは驚き。平日なのに! 男女比はほぼ半々。5席のP席には1人が座った。 シネマ・チャンネルのあと半暗になってCM、予告。ラストにマナー、忘れ物注意で暗くなり、映写機のマスクが左右に広がって、足元注意、映画泥棒、映倫でGAGAのロゴから始まる本編へ。製作会社はイギリスのワーキング・タイトル・フィルムズ。 入場者プレゼントで、サブスタンス接種証明書のミニ・ステッカーをもらった。サブスタンスは字幕で物質と出たが、薬物の方がこの場合はピッタリしているような気もした。 |