エロ、グロ、バイオレンス満載の血まみれホラーにして、想像のちょっと上を行くとんでもない映画。それをシリアスなドラマ調に撮っている。ある面、ギャング映画であり、黒人の苦難の歴史を描いた映画であり、音楽映画でもあり、少年の成長の物語であり、バンパイア映画でもある。出てくるのはほとんど黒人で、わずかな白人は悪党、そこに中国人が少し。ATMOSということもあり、ちょっと音で脅す傾向はあったかなあ。 前半はドラマ調に展開。そして普通のドラマとして、良くできている。なので、とんでもなホラーではないと思ってしまうほど。逆にホラーを期待していた人には、肩すかしとなり、前半は退屈かもしれない。それでも、ギャング映画としても、黒人の苦難の歴史を(さらりと)描いた映画としても、音楽映画としても、少年の成長の物語としても良くできていると思う。見方によっては、禁酒法時代(1920〜1933年)に酒を提供するクラブのようなものをオープンするため、優秀なメンバーを集める「七人の侍」(1954・日)的な物語でもあるかも。その仲間を集める過程も面白い。 時代背景はアメリカ禁酒法時代の終わり近くの1932年11月15日から16日に掛けての「フロム・ダスク・ティル・ドーン」(From Dusk Till Dawn・1996・米/メキシコ)的物語。とにかく時代感がよく出ていて(ボク自身は実際のところを良く知らないが)、町並み、人々、ファッション、車、タバコ(よく吸ってる)、銃‥‥こんな感じだったんだろうなと。メインの2人、双子のスモークとスタックの兄弟(マイケル・B・ジョーダンの1人二役)が第一次世界大戦の帰還兵という設定もなかなかで、あとあと効いてくる。まあ時代感なのか、下ネタもかなりどぎつく、ちょっとやり過ぎじゃないかと思えるほど。 主人公たちが納屋とかに立てこもって、敵の襲撃を一晩しのぐというのはよくあるパターンで、敵がバンパイアというのもあったような気が‥‥。ま、見せ方が新しかったり、設定が違うと、面白く見ることができるということだろう。 当然、1人二役を演じたマイケル・B・ジョーダンは素晴らしい。微妙な違いがちゃんと出ていた気がする。見た目の違いは赤いハットと青いハンチング、そして金歯。しかし、あまり重要な役ではないものの、強く印象に残ったのは、数少ない白人キャストの1人、兄弟のどちらだったかに付きまとう女を演じていたヘイリー・スタインフェルド。どこかで見たことあると思ったら、リメイク西部劇「トゥルー・グリット」(True Grit・2010・米)で、主人公ともいうべきキャスト、ドラグーンを撃っていた少女を演じていた人。こんなに大人になって、男に付きまとうような役を演じるとは。「バンブルビー」(Bumblebee・2018・米/中)の後は、あまりパッとしなかった感じ。「バンブル‥‥」も名作とは言えなかったが‥‥。 監督はライアン・クーグラー。見ていないが「クリード チャンプを継ぐ男」(Creed・2015・米)や、素晴らしかった「ブラックパンサー」(Black Panther・2018・米)シリーズの監督・脚本を手がけた人。そしてそれらに共通して出ていたのが、本作の主演、マイケル・B・ジョーダンと。 銃は、1911オート、瞬間でわからなかったがウインチェスターのM97っぽいショットガン、スプリングフィールドM1903ボルト・アクション・ライフル、水平二連ショットガン、ルガーP08、ウインチェスターではない小口径っぽいレバー・アクション・ライフル、BAR、ドラム・マガジン付きトンプソンなど。 どうにも緊急公開という感じで、東宝のシネマ・チャンネルなどで、アメリカで公開されて人気の作品などと紹介され始めたら、間もなく日本で劇場公開。公式サイトも整っていないような印象。上映時には翻訳者の表記もなかったような‥‥。そのせいなのか、IMAX版がある一方で、通常版は小さなスクリーンのところが多いという不思議。ちょっと困るなあと。 公開2日目の初回、池袋の劇場は12〜13分前に開場。観客層は、若い人から中高年まで割りと幅広かったものの、女性は、30人くらいの中に1人という感じ。最終的には235席の8割くらいが埋まった。10席あったP席は3席ほどが埋まった。 スクリーンはビスタ・フルで開いていて、劇場案内から上下マスクの映画泥棒、映倫、CMに続いて予告。ラストにマナーで暗くなってBESTIAのデモから、映写機の上下マスクでWBのロゴから始まる本編へ。ATMOS上映のようで、確かに音は良かった。4Kレーザーという画質は、まあ、そう言われればという感じ。プラス300円の料金は、微妙かな。 ちなみに邦題の読み方は「つみびとたち」だそう。「ざいにんたち」ではないんだとか。うーん、ルビをふったほうが良かったかも。 |