2025年7月5日(土)「ハルビン」

HARBIN・2024・韓・1時間54分(IMDbでは1時間48分、韓国版1時間53分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、根本理恵/シネスコ・サイズ(ARRI 65、IMAX。IMDbでは2.39、IMAX版の一部は1.90)/ドルビーATMOS(IMDbではドルビー・デジタル、IMAX 6-Trackも)
(韓15指定)


公式サイト
https://harbin-movie.jp/index.html
(全国の上映劇場リストもあり)

75点

前へ一覧へ次へ
 やっぱり韓国は物語を作るのが上手い。そして映画としてもとても良くできている。大自然の雄大な風景、当時の鉄道や車などの交通手段や町並みなどが美しく捉えられている。これぞ映画という感じ。キャラクターの感情もよく伝わってくる。

 伊藤博文も日本軍も、それほど悪としては描かれておらず、単に朝鮮独立を実現するために暗殺しなければならないターゲットであり、日本軍も単なる敵軍ととして描かれている。敵役となる森少佐(中佐になったり、字幕表記が揺れていた気がする)は、捕虜となった際、武士としての名誉を保つための自決を許されなかったことを恨みに思い、アン・ジュングンをしつこく追い回していくように描かれている、気がした。ただ、捕虜に関する国際法をキッチリ守る人が、暗殺テロに走るかなあ。物語の展開上、必要だったとは思うけれど。

 とにかく一番強く描かれているのは、英雄としてのアン・ジュングンが、国のため、独立を願い、死を覚悟して戦っていたということ。そしてスパイとなった男も悲惨で、スパイを拒否してその時死ぬか、スパイになって仲間に見つかって死ぬかの二択しかなく、どっちにしても死しかなかったと。つらすぎる。ただ、ラストに‥‥

 バイオレンス表現も、ナイフでめった刺しとか、首を切り落とすとか、かなり強烈。この辺は同じウ・ミンホ監督の「KCIA 南山の部長たち」(The Man Standing Next・2020・韓)と共通するものがある。直接的な表現ではないが、さりげなく、積もった雪に血が染みていたのは、リアリティがあって恐ろしかった。やっぱのこの監督(脚本も書いている)はすごいなあと。

 気が付かなかったが、馬賊のボスはあの傑作アクションの「デイジー」(Daisy・2006・韓)、最近だと自身で監督もした「ザ・ガーディアン/守護者」(A Man of Reason・2022・韓)の二枚目ベテラン名優、チョン・ウソンだったそう。特別出演とか。

 1つ気になったのは、リリー・フランキー演じる伊藤博文以外は韓国人俳優が日本人を演じていたようで、日本語を話しているのだが、クセがあって聞き取りづらく、日本語にも日本語字幕が付くような感じで、そこは残念だった。

 銃は、大韓義軍がモシン・ナガン・ライフル、リボルバーはナガン。ロシア軍もモシン・ナガン。日本軍が三八式かと思ったが、imfdbによると三十年式小銃だったらしい。三八式は1905年に制式採用なので、1905年だと無理。事件の起きた1909年はまだあまり普及していないか。森少佐のリボルバーは二十六年式の代わりか、ウェブリー・リボルバー。馬賊のボス、チョン・ウソンは4インチのS&Wリボルバー、ミリタリー&ポリスだったらしい。暗殺に使う拳銃は、史実に基づき、ブローニングモデル1900。

 まあ、それにしても、時代を反映してタバコ吸いまくり。昔の人はこんなにも吸っていたか。吸わない俳優は大変だ。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は10分前に開場。すぐに入場したが、すでに予告が始まっていた。一体、誰のために流しているのか。ギリギリに音量とかピント調整のためでもないと思うが。観客層は若い人から中高年までいたが、若い人はわずか。男女比は、イケメンのヒョンビンが主演だからか半々くらいで、戦争映画で、かなり血も飛ぶのに意外だった。最終的には274席に3割くらいの入り、朝も早いし、こんなものだろう。

 スクリーンはシネスコ・フルで開いていて、予告からCMで、ほぼ暗くなってまたCM。スギ薬局のAIモデルはそうかなと思ったが、確かにリアルだった。そしていつも画質がどうかなと思っていたQPのCMが、アキラ風のバイク・バージョンになったら、イイ感じに。ずっとこの画質でやれば良いのに。そこから枠付きの映画泥棒、映倫かあって、また予告。最後に映写機のマスクが左右に広がって、フルのシネスコになり、暗くなって、アニメ「不思議の国でアリスと」のマナー、そしてKADOKAWAのロゴから始まる本編へ。


前へ一覧へ次へ