2025年7月24日(木)「ストレンジ・ダーリン」

STRANGE DARLING・2023・米・1時間37分

日本語字幕:手書き風書体下、星加久実/シネスコ・サイズ(KODAK Film。IMDbでは2.39、Arricam LT、Arricam ST、Arriflex 235、Arriflex 435、35mm)/音響表記無し(IMDbでは、ドルビー・デジタル)
(米R指定、日PG12指定)


公式サイト
https://movies.kadokawa.co.jp/strangedarling/
(音に注意。全国の上映劇場リストもあり)

73点

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 あえてひと言で言えば、変態ホラー映画。あるラジオ番組で「具体的な内容は言えないが、シリアル・キラーの話で、出会った男と女の話を全6章で描いていて、それが凄い」というような紹介をされていて、興味を持って調べてみると、上映時間は97分という短めのもの。それをわざわざ6つの章に分けて、時間軸をバラバラにするということは‥‥ 映画にスレているボクのような観客は大方想像が付くはず。そして冒頭からそう思って見たらその通りの展開に。やっぱり、と思っていたら、そこからが凄かった。異常具合が恐ろしい。いかにもアメリカだとこういうシリアル・キラーがたくさんいそう‥‥。怖い! それとタバコは吸いすぎ。設定は2020年のようなので、時代が違うと思うけど。

 怖さはなかなかのもので、さすがの構成、脚本、演出、演技ということになるのだろう。これだけの少ない出演者と、限られた場所、つまりはおそらく低予算で、ここまでの凄い映画を作ることができるんだなあと。ただ、あまり映画の展開には関係のない冗長なセリフが多く、それが味になっているのかもしれないが、97分がとても長く感じた。怖い割にちょっと退屈。

 男を演じたカイル・ガルナーも良い味を出しているが、とにかく良かったのは女を演じたウィラ・フィッツジェラルド。ほとんどの出演時間中、身につけているのは黒のブラと赤のパンティのみという印象だが、見せる表情、仕草などすべてがまったく別人のよう。とても同じ人が演じているとは思えないくらいのレベル。素晴らしい演技力。出演作はTVがメインのようで、劇場公開作はほんどないような感じ。こんな才能ある人をこれまで発掘できなかったなんて、どうかしてる。今後の活躍に期待が持てそう。

 銃は、男のライフルがマーリンのレバー・アクション。たぶんライフル口径。足首のアンクル・ホルスターに付けているのはトリガー・ガードの丸い9mmコンパクト。M&Pのコンパクトか、XD-S、はたまたP365とかヘルキャット‥‥ そのへん。男はライフルをちゃんとロウ・レディで構え、トリガー・フィンガーはピンと伸ばしている。この理由は映画の中で、後に明らかになる。監督が細かいことに気付く人なのか、撃たないシーンでもちゃんとハンマーが起きていた。警察官はグロックらしいオート。ラスト近く、別の女性が持っていた4インチくらいのリボルバーは、アンダーラグ付きで、ヨークの前面にピンのようなものがあったので、チャーター・アームズのブルドッグあたりか。

 公開14日目の初回、品川の劇場はなぜか5分前になっても開場せず、待ちきれなかった女性が問い合わせて初めて開場。忘れていたのか? それでもアナウンスはなく、一体どうなっているのやら。入場するとすでに予告が流れていた。観客層は、平日であっても、やっぱりほぼ中高年。最終的にほとんど男性で、女性は10人中2人ほど。平日だとこんなものだろう。

 スクリーンはビスタ・フルで開いていて、非常口案内で誘導灯が消え、CM。半暗になって再び予告、ラストにマナー、映写機の上下マスクの映画泥棒、映倫で暗くなって、KADOKAWAのロゴから始まる本編へ。

 本当の本編が始まる前、文字でわざわざ「35mmフィルムで撮影」と出る。しかし画質的にはほかのデジタル版と大差無しという感じ。さらには衝撃的な映像がちょっと出た後、2018年から2020年にかけて起きた事件を映画化、全6章で描くというような文字も出る。いわば一部のネタばらし。

 冒頭はモノクロから始まって徐々に色が付いていき、ラストは色が薄れていってモノクロになるなど、色についてのこだわりは強い監督のよう。青っぽい画面、赤っぽい画面、さらには二重焦点レンズを使うなど凝った絵作りをしている。


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