2025年8月17日(日)「ランド・オブ・バッド」

LAND OF BAD・2024・米/豪・1時間53分

日本語字幕:丸ゴシック体下、白取美雪/シネスコ・サイズ(Panavision。IMDbでは2.4、Arri Alexa Mini LF、Sony FX3)/音響表記無し(IMDbにも表記無し)
(米R指定、日PG12指定)


公式サイト
https://land-of-bad.jp
(全国の上映劇場リストもあり)

75点

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 なかなか怖い映画。ハラハラドキドキ。特殊部隊の極秘ミッションというよくある設定で、良くあるパターンのストーリー展開なのに、小さなエピソードの入れ方や描き方が上手く、ほどよいユーモアも入れて、観客を引き込んでいく。そして、バイオレンス表現がかなりリアルで過激。恐い。悪役はいかにもいそうな極悪のテロリストで、徹底して悪い。観客が自然と主人公を応援したくなる。キャラクターもそれぞれの役者がぴったりはまっていて、感情移入もしやすかった。もっとB級っぽいアクションかと思ったら、よくできた佳作だった。

 物語は、作戦開始を「レッツ・ダンス」というラッセル・クロウのセリフで始め、ラストはラッセル・クロウのダンスで締めくくる。この辺の仕掛けも、戦闘シーンのリアルさと対照的で、ファンタジーで、甘いと言われそうだが映画としては素敵だなあと。

 任務地へ向かうヘリコプターの中で、デルタのベテラン・オペレーターが、実戦2回目、単独では初めてという主人公に向かっていうセリフがこの映画のすべてを表しているのかもしれない。「ハイテクはいつかバッテリーが切れる。銃も弾が切れたら、最後は人が人を殺すことになる」「オマエにできるか」と。またチームのリーダー、陸軍のデルタフォースの曹長が最初、主人公に向かって、お前は空軍の特殊部隊でも「ティアワンじゃない」と言うが、後半で仲間の救出作戦に向かう時「これでお前もティアワンだ」という。ティアワン(Tier1)というのはアメリカ軍の特殊部隊のランク分けだそうで、1から3まであって、1が最上位で陸軍のデルタ・フォースや海軍のネイビー・シールズのチーム6などが相当するそう。それで主人公が「ペイ(給料)が上がるんですか」と聞くと、「いや、箔が付くだけだ」と答える。こんなところもイイなあと。

 銃は、陸軍空軍合同の救出チームは基本M4カービン系だが、4人それぞれ仕様が異なる。特に照準器というかドット・サイトがイオテックだったり、エルカンだったり、エイムポイントだったりとバラバラ。ハンドガンは陸軍のデルタがグロックで、空軍の主人公はベレッタのM9。スナイパー役は.338ラプア・マグナムのバレットMRAD。救出ヘリにはFN MAG(M240)。

 テロリストは基本AK系で、ほかにM16A1やM16A2もまじっていたようだ。imfdbによると、主人公たちが奪って使うものはSKS系のカスタムと、AK47とはリア・サイトが全く異なるノリンコ・ハンターがベースのカスタムだったらしい。ハンドガンは雑多で、1911オート、タウルスPT92、4インチくらいのS&Wっぽいリボルバー、グリップが写るくらいだがベレッタPx4も。トヨタのピックアップ・トラックに積んでいたのはM2重機。そして銃じゃないけど、定番のRPGもたくさん登場。
 メイン・キャストは当然、基本トレーニングを受けているようで、トリガーには指を掛けないし、ロウ・レディで構えるなど、様になっていた。そしてみごとなダブル・タップやマガジン・チェンジを見せてくれる。こういったディテールが説得力、リアリティにつながるわけだ。プロっぽい。ただスコープの調整ダイアルを動かしてピントが合うという編集(演出?)はいかがなものかと。ハリウッド映画では良くあるが、あれはピントではないはず。ズームも‥‥。

 レーザー・レンジ・ファインダーもたびたび使っていて、カッコよかったが、縦ではなく横で使うタイプ。ちょっと気になった。しかも表記されている単位はメートル。海外で活動することの多いアメリカ軍では早くからメートルが使われていたという話もあったものの、映画やTVでは観客にわかりやすくするためかヤードが多く、どうなんだろうと思っていたので、これがリアルなのではないかと。調べてみると3,000mまで計測可能なTerrapinXというものらしく、倍率は8倍。アメリカ国内販売のみで、日本から買うことはできないそう。ただ価格は日本円で30万円弱ほどもして、とても買えないけど。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は上映25分前のオープンで、すぐに開場。観客層は中高というより、やや高寄りで、最初じいじ15人くらいに、ばあば2人くらい。それから少し中年層と女性も増えた気がするが、おおむねそんな感じ。最終的には128席の8.5〜9割くらいが埋まった。意外と人気があるのでは。

 10分くらい前からシネマ・チャンネル。終わって半暗になり、CM、非常口案内で誘導灯が消え、ちびゴジラの予告。ラストに暗くなって、映写機のマスクが左右に広がり、フルのシネスコ・サイズに。足元注意、迫力の映画泥棒、映倫と続いて、南アジアの夜のジャングルを飛ぶヘリコプターから始まる本編へ。


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