2025年11月1日(土)「爆弾」

2025・フジテレビジョン/ワーナー・ブラザース映画/講談社・2時間17分

シネスコ・サイズ(撮影機材表記なし)/ドルビーATMOS
(日PG12指定)(一部日本語字幕付き上映、ATMOS上映もあり)(『HELLO! MOVIE』方式に対応した視覚障害者用音声ガイド・聴覚障害者用日本語字幕付き)

公式サイト
https://wwws.warnerbros.co.jp/bakudan-movie/
(全国の上映劇場リストもあり)

76点

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 始まってすぐ映画に引き込まれ、最後まで目が離せずハラハラドキドキ。面白かった。

 久々に映画を堪能した感じ。取調室での対話がメインなのに、この緊張感! しかも、事件の背後に切ないヒューマン・ドラマ的なドロドロしたものがありながら、そこだけに帰結させず、ドライな感じに仕上げられているところが絶妙。ボクは原作を読んでいないのでわからないが、これは原作の味であるのかもしれない。原作も読んだ方が良いかなあ。さらに完全解決じゃなく、続編が作れそうな余韻残しの終わり方なのに、このスッキリ感。監督はただ者ではない。スゴイ!

 もちろんすべてのキャストの演技が素晴らしいのは言うまでもない。みな、ピタッとハマっている。特に素晴らしいのは、核となる佐藤二朗はもちろんとして、やっぱり名優、山田裕貴だろう。めちゃめちゃ頭が良いのを自分でハッキリ自覚していながらそこに嫌らしさを感じさせず、それで犯人にグイグイ圧力を掛けていく感じや、上司や所轄との微妙な関係なども、実に上手く自然ににじみ出させていたように思う。

 いちいちキャストの素晴らしさを上げていると切りがないほどだが、倖田巡査を演じた伊藤沙莉は、やっぱりとても自然で等身大な感じが見事。取り調べに立ち会っている新米刑事らしい伊勢を演じた寛一郎も良かった。ボクが見た数少ない邦画の中で「一度も撃ってません」(2019・日)や「ナミヤ雑貨店の奇蹟」(2017・日)に出ているらしいのに、まったく印象になく、初めて見た感じ。今度はキッチリ印象に残った。そして倖田巡査のバディとなる矢吹巡査長を演じた坂東龍汰は、倖田巡査との漫才のような掛け合いが秀逸‥‥ とまあ、全員こんな感じ。すばらしい。

 監督はCMディレクター出身の永井聡。手がけた劇場作品のリストには話題になったものがズラリと並ぶ。ボクが見たものだと菅田将暉主演のミステリーというかホラー的な「キャラクター」(2021・日)が確かに怖かった。見ていないが「帝一の國」(2017・日)はかなり強烈なギャグ、コメディで、「恋は雨上がりのように」(2018・日)はラブ・ストーリーだそうで、ようは何でも撮れる人なのだろう。もし、ちゃんと笑えるコメディや、ちゃんと怖いホラーを撮れる人は本当に才能というか実力のある監督だ、という仮説が正しいとしたら、それにピッタリはまる。

 残念ながら銃はなし。制服警官は銃を携帯しているが、新型のホルスターでほとんどグリップも見えない。かろうじてランヤードが付けられている底部が見えるくらい。一方で爆発はかなり派手。どうやって撮ったのだろうか。おそらくは現場では、小さな爆発か空気圧でダミーのがれきとかを飛ばして、後からデジタルで大量の破片や爆煙を足して大規模な爆発に見せているのだろう。エンドロールでは多くのデジタル要員がクレジットされていた。

 冒頭のクレジットは英語と併記で、砕け散ったり集まったりする文字を使ったオシャレなもの。ここにも演出するほど気合が入っているということか。うまいし、カッコいい。エンド・クレジットではインティマシー・コーディネーターというスタッフがいて、気になって調べたら昨今ハリウッドで話題になっている、性的なシーンで俳優と監督の間に入って調整する役割の人だそう。ついに日本映画でもというか、やっとというべきか。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は20分前に劇場がオープン、10分前くらいに開場となった。ドリンクとかスナックを買おうと思っていた人たちは買えたのだろうか。あるいは、遅れて入ってきた人たちがそうなのか。とにかくこの劇場は時間がギリギリ。すぐに入場したのに、すでに予告が始まっていた。観客層は中高年で、男女比はだいたい半々くらい。上映間近に入ってくる人が多く、最終的にはおそらく288席の7.5割くらいが埋まったのではないかと思う。早朝にも関わらず、これはさすが話題作ということだろう。

 スクリーンはシネスコ・フルで開いていて、入場前から流れていた予告の後、前方が暗くなり案内とCM。そして枠付きの映画泥棒、映倫があって本予告。最後に劇場からのお願いが出て、映写機のマスクが左右に広がり、シネスコ・フルになって暗くなり、ウォーター・タワーのワーナー・ロゴとフジテレビジョンのロゴから始まる本編へ。


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