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こわ! 幽霊や悪魔とは違った怖さ。衝撃的。音で脅かすというよりは、ショッキングさや、残酷描写などによる、じわじわ来る怖さ。見終わって、メイン・ビジュアルになっているヒコーキのように手を広げて走る子供の姿が、あらためて怖くなってきた。 こういう作品は近年少ないのでは。ちゃんとしたホラー。ボク的には2025年で最も良くできたホラーだと思う。たしか全米でも興行成績トップ10に入っていたはずだが、日本ではB級の小作品扱い。上映劇場が少なく、小スクリーンで、しかも上映回数も少ない。とても面白いのに。 最初、いけ好かない若い女性教師が主人公かと思い、これでラストまでは辛いなあと思っていたら、群像劇的構成で、途中で主人公が替わり、安心した。全体の構成は、名匠、黒澤明監督の「羅生門」(1950・日)パターン。不可解な事件に関わった人たちがそれそれの視点で事件を語り、徐々に事件の真の姿が明らかになってくるというもの。その過程が面白く、スプラッター的ホラーではありながら、それぞれの人物の物語を楽しみつつ、推理小説、ミステリーのように謎解きが楽しめた。しかもぶっ飛び具合が半端なく、恐ろしいし、衝撃的で、気持ち悪く、そして圧倒される。 絵作りもいかにも映画っぽく、そのへんのB級ホラーとは一線を画す感じ。ただ残酷シーンを盛り込んだだけというのとは違う。とは言え、日本でR18+指定となるだけあって、グロはかなりのもの。ただR15+指定との違いは良くわからない。ボク的にはR15+指定くらいな気がしたが。 キャストも素晴らしい。プロデューサーも務めるジョシュ・ブローリンは説得力があるだけでなく、かつては主役も張っていた人なので、出ているだけで映画の格が上がったような雰囲気になる。中でも良かったのは、不気味な派手・ズレ・メイクで登場する謎の伯母さんグラディスを演じたエイミー・マディガン。とにかくスゴイ! まったく誰だかわからなかった。「ストリート・オブ・ファイヤー」(Streets of Fire・1984・米)とか「フィールド・オブ・ドリームス」(Field of Dreams・1989・米)に出て、しっかり存在感を残した人。あの名優がこんな姿に! いや、だからこそこの怖さと存在感が出たのに違いない。素晴らしい。 脚本・監督・製作・音楽はザック・クレッガーという人。何刀流だよ。元は俳優だったらしい。短編とかTVドラマ・シリーズに出ていて、2009年の日本劇場未公開作品「お願い!プレイメイト」(Miss March・2009・米)から監督や脚本を手がけるようになったと。これまで日本ではほとんど知られていないようで、本作が初のメジャー作品ということになるよう。今後注目だろう。 銃は、イメージとして登場するのがM4カービン。警官は角張ったハンマー式のオートを携帯していて、P226かUSPあたりかと思ったら、imfdbによるとP229だったらしい。ポンプ・ショットガンはレミントンの870。 冒頭、子供のナレーションで「本当にあった話(実話?)」と言っているけど、それは演出の一部だよね? でないと、もっと怖くなる。それとクライマックスあたりで笑いが起こってしまったけれど、確かにおかしいシュールなシーンとはいえ、流れでは笑うのは相応しくないシーン。それまでの恐ろしさの反動のような感じで感情が爆発してしまったのかもしれない。 それと、タイトルのWEPONSのOの中と、本編でもたびたび登場していた三角マークはなんだったのだろう。エンドロールでも登場し、文字がそれに沿って上がっていく。邪悪なものの象徴? あまり詳しく説明しないところがこの映画の良さでもあるんだろうけど、気になった。 公開3日目の初回、新宿の劇場は13分くらい前の開場。すぐにエスカレーターで上がると、すでに予告を上映中。観客層は若い人から中高年まで幅広く、男女比は6対4でちょっと男性の方が多い感じ。劇場に着いた時点で残席わずかの表示。最終的には232席の2〜3席を残してほぼすべて埋まった。なかなかの人気ではないだろうか。 スクリーンはフルのシネスコで開いていて、予告の後、前方が暗くなり案内からCM、そしてズートピアのマナーと、その流れのイタチ耳を付けた映画泥棒があって本予告。最後に映画館からのお願い、マナーで、ニューライン・シネマのロゴから始まる本編へ。 入場者プレゼントで、布製らしいワーナーのロゴ・ステッカーをもらった。なんでも本作はワーナー ブラザース ジャパン配給による“最後”の洋画作品になるのだそう。記念になるし、ちょっと得した気分。 |